守備の名手エスコバーが加入
最下位から脱出を目指すヤクルトは、このオフにバレンティンが退団した。その代わりとしてやってきたのがアルシデス・エスコバーである。
エスコバーはバレンティンのように長打を期待できるスラッガータイプではなく巧打者タイプ。また、それ以上に打撃ではなく守備での貢献を期待されている。2015年にはアメリカンリーグでゴールドグラブ賞を獲得した名手だ。
春季キャンプ中の練習試合やオープン戦で、エスコバーは遊撃をメインに三塁も守った。遊撃での起用が基本線だが、三塁でもそつなく守ることができるのは心強い。すでに好プレーも見せており、SNSでは「これぞメジャーリーガー」といった守備の動画も拡散されているほどだ。
昨シーズンは西浦直亨の故障もあり、遊撃のポジションを固定できなかったが、そこに目処が立ったのはチームとして大きなこと。さらに、このエスコバーの加入によって、三遊間のポジション争いがかなり活発化しているのも好影響となりそうだ。
三塁のレギュラーを左右する村上宗隆の存在
昨シーズン、スタメンで遊撃を守ったのは奥村展征(51試合)、廣岡大志(40試合)、西浦直亨(38試合)、太田賢吾(13試合)、吉田大成(1試合)と5人いた。だが、今シーズンはエスコバーの加入により、スタメンで出場するためにはエスコバーとの競争に勝つか、もしくは他のポジションに回らなければならない。
もし、他のポジションに回ることを考えた場合、二塁には不動のレギュラーである山田哲人が君臨していることもあり、三塁か一塁での出場を目指すことが現実的だ。ここまでの実戦では廣岡と西浦は遊撃のバックアップ、もしくは三塁。そして吉田は二塁、太田は二軍での起用が続いている(奥村は右ヒザの手術を受けたことで戦列を離れている)。
昨シーズン遊撃を争った西浦と廣岡の2人は、ポジションを変え三塁で火花を散らすかというと、そう単純にはいかない。若き主砲・村上宗隆の存在があるからだ。昨シーズンの村上は一塁での起用がメインだったが、今年は三塁に再挑戦する。高津臣吾監督も昨秋から三塁での起用を明言していた。
しかし、春季キャンプ序盤にコンディション不良で一時離脱。オープン戦に戻ってきたのは3月11日だった。指名打者としての出場から一塁、三塁と守備にはついているが、まだまだ不安は隠せない。直近の練習試合である3月25日の広島戦でも三塁ではなく一塁でのフル出場だった。打撃とともにこれからコンディションを上げていく段階というのが現状だ。
西浦直亨と廣岡大志はアピールを続ける
村上はチームにおいて、山田や青木宣親と並んで絶対的なレギュラーであることは間違いない。その村上の守備位置が決まらないと、当然、西浦や廣岡の起用法も決まらないことになる。
予定通り村上が三塁で起用されることになれば、一塁はベテランの坂口智隆やパンチ力のある西田明央が起用されるだろう。西浦と廣岡はレギュラーからあぶれることになる。一方で、昨シーズン同様に一塁での起用となれば、西浦と廣岡が三塁のポジションを争うことになる。西浦と廣岡は、村上の状況によって左右されてしまう立場というわけだ。
そんな中、廣岡は3月21日の阪神戦、3月25日の広島戦で本塁打を放ち長打力を猛烈にアピール。一方の西浦も3月24日・25日の広島戦で2試合連続安打を記録している。両選手の好調ぶりは、高津監督にとって嬉しい悩み。開幕までは最低でも1ヶ月近くあり、まだまだレギュラー争いが続きそうだ。
エスコバーの加入、そして村上の再コンバートによって、昨シーズン遊撃のレギュラーを争ったふたりが、控えに追いやられるかもしれない。こういった競争が選手層に厚みをもたせ、戦力アップにつながっていく。
2020年プロ野球・東京ヤクルトスワローズ記事まとめ