マイナーリーグも中止
これは世の常なのかもしれないが、社会的な問題でより厳しい状況に陥るのは決まって立場の弱い人間である。華々しく思える野球界においても同じことが言えるだろう。
メジャーリーグが新型コロナウイルスの拡大により春季キャンプの中断とシーズンの開幕延期を発表した12日、マイナーリーグもそれと同じ措置をとった。ただ、状況はメジャーリーガーとマイナーリーガーで若干異なるかもしれない。
メジャーリーグはキャンプの中断とオープン戦の延期を決定した翌日、選手会と協議し、選手たちが三つの選択肢から今後の行動を選べるようにした。一つ目は、「キャンプ地に残り球団施設でトレーニングを続ける」こと。二つ目は、「チームのホームタウンへ戻る」。最後に三つ目は、「自宅へ帰る」である。
MLB公式サイトのアンソニー・カストロビンス記者によると、多くのメジャーリーガーはキャンプ地にとどまり、練習を続けることを望んでいるという(ただ、ヤンキース傘下のマイナーリーガーが新型コロナウイルス検査で陽性となったため、MLBはキャンプ施設から撤退することを強く推奨している)。
一方、モア・ザン・ベースボールというマイナーリーガーの支援に取り組んでいる団体によると、マイナーリーガーは基本的にキャンプ施設から離れるよう進言されているという。米テレビ局のWBNGでは彼らの窮状を伝えているが、メッツ傘下AAのランブルポニーズに所属する選手は、行くあてもないのに「メールでキャンプ施設が次の日に閉じると伝えられた」という。
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デリバリーのバイトを始めた選手も
もっとも問題なのは金銭面である。メジャーリーガーを含むプロ野球選手は、基本的にシーズンに試合をしないと給料をもらうことできない。莫大な契約を結んでいたり、キャンプ地近郊に別宅を持っていたりするメジャーリーガーにとっては大した問題ではないが、マイナーリーガーにとってはまさに死活問題だ。
ロッキーズ傘下のハートゴーズに所属するミッチ・ホラセックがツイッターで訴えているように、「自分のようなマイナーリーガーは、昨年8月以来、給料が支払われていない」のが現実である。
アスレチックス傘下のポーツに所属するピーター・ベイヤーは、生計を立てるために「ドアダッシュ(ウーバー・イーツのようなデリバリーサービス)のドライバーを始めた」という。彼のようにアルバイトを始めるマイナーリーガーは少なくない。
マイナーリーガーを救うための取り組みも
ダラス・モーニングニュースのエバン・グラント記者によると「レンジャースは他の球団とともに、延期中の給与をマイナーリーガーたちに暫定的に支払うこと、をMLBに呼びかけている」という。また、メッツ傘下のチームは、キャンプが中断したとしても通常通り手当てが支払われる予定であることを、MLB公式サイトのアンソニー・ディコモ氏が伝えている。
さらに、苦しむマイナーリーガーを救うための独自の取り組みも行われている。
「Adopt a MiLB player」というプログラムでは、シーズン延期によって給料を受け取れないマイナーリーガーのサポートを行っている。このプログラムは、モア・ザン・ベースボールと連携し、クラウドファンディングのような形式で有志の寄付を集め、選手にギフトカードや食料品などを提供している。
※日付は現地時間
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