激戦必至のナ・リーグ東地区
最初に述べておきたいのは、ナ・リーグ東地区のチャンピオンになるチームを予想するのはとても困難ということだ。
昨季ワイルドカードから世界一となったナショナルズでさえ、実力は十分あるにもかかわらず、今季はポストシーズンにさえ出られない可能性がある。目下チーム再建中のマーリンズは置いておくとして、昨季地区優勝を果たしたブレーブスはもちろん、メッツやフィリーズにもチャンスがある。その証拠に、MLB公式サイトが2月25日に発表した「ワールドシリーズ本命ランキング」では、トップ10の中に3つもナ・リーグ東地区のチームがランクインしていた。
激戦必至のこの地区について、各チームの戦力分析とともに今季の順位予想を行っていく。
【予想1位:メッツ】CY賞と本塁打王が在籍するのに、なぜ…
昨季、ナ・リーグ東地区で3位だったメッツだが、考えてみればポストシーズンに出られなかったのが不思議なくらい戦力が整っていた。同じチームに投手最高の栄誉であるサイ・ヤング賞投手(ジェイコブ・デグロム)とホームラン王(ピート・アロンソ)が在籍しているのは、メッツ以外にない。
ただ、昨季勝てなかったのには理由がある。リリーフ陣が崩壊していたのだ。メッツのリリーフ陣のチーム防御率は30球団中26位の4.99。先発陣が30球団中7位と健闘していただけにもったいなかった。
リリーフ陣の再建が急務であるメッツは今オフ、ヤンキースからFAとなったデリン・ベタンセスを獲得。2014年〜15年に2年連続で70試合以上登板、防御率1点台をマークした実績のあるリリーバーだ。
また、守護神候補であるエドウィン・ディアスの復活も鍵となりそうだ。マリナーズ時代の2018年に最優秀救援投手賞を受賞するも、メッツに加入した昨季は防御率5.59と期待外れの成績に終わっている。
【予想2位:ナショナルズ】今季も世界一になるための鍵
昨季、球団創設初の世界一となったナショナルズが今季もポストシーズンに出場し、再びワールドチャンピオンになれるかどうかは、ただ一点にかかっている。チームの主軸だったレンドーンが抜けた穴を埋められるかどうかだ。
ナショナルズは今オフ、FAとなる主力選手を多く抱えていたが、スティーブン・ストラスバーグやライアン・ジマーマン、ハウィー・ケンドリックなど、ほとんどのメンバーの引き留めに成功した。ただ、野手最高のWAR(勝利貢献度)を誇るレンドーンは、チームを去ることになった。その穴埋めとしては、新戦力であるスターリン・カストロやチームのトップ有望株であるカーター・キーブーンらに期待が寄せられている。
また、NPBの巨人へ移籍したヘラルド・パーラの不在がどう響くかも気になるところだ。「ベイビー・シャーク」とともに奇跡的な快進撃をもたらした原動力の穴は、補強や有望株のブレークではなかなか埋められないだろう。
【予想3位:ブレーブス】課題はナショナルズと一緒?
昨季97勝65敗という成績でア・リーグ東地区を制したブレーブス。このチームの課題は、予想2位のナショナルズとほとんど一緒だ。チームを牽引した三塁手、ジョシュ・ドナルドソンの穴をどう埋めるかが鍵となる。
候補としては、ヨハン・カマーゴとオースティン・ライリーが挙げられる。カマーゴは2018年、サードのレギュラーを取りかけたものの、ドナルドソンの加入により昨季はユーティリティーとして働いていた。ライリーは昨年5月にメジャーデビューを果たし、その月に打率.356/出塁率.397/長打率.746と好スタートを切った。しかし、その後苦戦し、シーズン後半はあまり活躍できなかった。
また、先発陣にやや頼りなさを感じるのもブレーブスを3位とした理由である。新人王投票で2位につけたマイク・ソロカや昨季17勝を挙げたマックス・フリードなど、楽しみな若手が多く、のびしろは十分だが、野球界でよく言われるように2年続けて成績を残すのは大変である。
【予想4位:フィリーズ】金は使うが結果が出ない
「2年続けて成績を残すのは難しい」。まさにこの言葉が当てはまったのが、昨季のフィリーズだった。
2018年に17勝6敗、防御率2.37という成績でサイ・ヤング賞3位に入ったアーロン・ノラだが、昨季は12勝7敗、防御率3.87に。2018年に34本塁打、OPS.850をマークした主砲リース・ホスキンスは29本塁打、OPS.819とどちらも成績を下げた。フィリーズがポストシーズン争いをするには二人の活躍が欠かせない。
また、近年積極的に補強を行っているものの、結果が出ていないのもフィリーズの残念なところだ。2018年オフはサイ・ヤング賞投手のジェイク・アリエタや、現役最高捕手との呼び声も高いJ.T.リアルミュートを獲得。昨年オフには、FA史上最高額の13年3億3000万ドル(約355億円)でブライス・ハーパーと契約した。
今オフもザック・ウィーラーやディディ・グレゴリウスを獲得。AP通信によると、球団社長のアンディ・マクフェイル氏は「贅沢税を払うのもいとわない」と強気な発言をしているが、結果が伴わなくてはどうしようもない。
【予想5位:マーリンズ】加藤豪将、ついにメジャーデビュー?
ポストシーズン争いに加わりそうにないマーリンズでも、特に日本人ファンは期待するものがある。加藤豪将がついにメジャーデビューを果たすかもしれないのだ。加藤は2013年、ドラウト2位でヤンキースに入団。昨季はAAAで打率.279/出塁率.382/長打率.443/OPS.825とアピールするもののメジャー昇格とはならなかった。
今季、加藤はマーリンズのスプリングトレーニングに招待選手として参加。オープン戦では着実に結果を残している。MLB公式サイトの記事では「春に驚くかせることになるかもしれない選手」として、加藤がセカンドの開幕オーダーの候補として挙げられていた。