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菊池雄星、パワーが足りなかった1年目。2020年はストレートの質に注目

2020 2/21 11:00棗和貴
マリナーズの菊池雄星投手Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

タフなルーキーイヤー

「やっぱり世界一魅力的な場所だと思います。もちろん、簡単には勝たせてもらえないですし、だからこそ来た意味がある」

各メディアの報道によると、マリナーズの菊池雄星はメジャー1年目をそう総括した。デビューイヤーは菊池にとってタフなものだった。メジャー初登板を果たした東京での開幕シリーズでは、憧れだったイチローが引退を発表。シーズンが始まって間もなく、病気で父親を失った。また、7月には第一子が誕生。まさに激動の一年だった。

昨シーズンの成績は32試合登板で6勝11敗、防御率5.46。期待どおりのピッチングとは言えないが、菊池自身は「世界トップのピッチャーを見にきたのではなく、それになるためにここに来たということを忘れず、練習したいと思います」と語っていた。

2019年の収穫と課題

2019年シーズンで菊池が得られた収穫は、一年を通じてローテーションを守れたことだ。規定投球回までわずか1アウトだけ足りなかったが、161.2イニングはマリナーズのエースであるマルコ・ゴンザレスに次ぐチーム2位だった。

ハイライトは8月18日のブルージェイズ戦だ。この日、菊池は96球で相手を完封する“マダックス”を達成。日本人によるマダックスは史上4人目、17年4月27日のレッドソックス戦でヤンキースの田中将大が達成して以来、2年4ヶ月ぶりの快挙だった。

ただ、効率的にアウトを稼ぐのは決して喜ばしいことだけではない。メジャー1年目は菊池にとって収穫よりも課題の多いシーズンであり、もっとも目に付くのは、被本塁打率や被長打率の高さといった“パワー”の部分だった。菊池の被本塁打率(2.00)と被長打率(.539)は、ともに160イニング以上投げた先発投手61人のうちワーストの数字だった。

フォーシームのスピン量が鍵?

苦戦した要因の一つに挙げられるのはフォーシームだ。とくにスピン量に課題を抱えているように思える。菊池のフォーシームは平均球速が92.5マイル(148.9キロ)とMLB平均をやや下回る程度だが、平均スピン量に関して言えば下から20%以内に収まる低水準だった。

マリナーズと同じア・リーグ西地区に所属するレンジャースに、マイク・マイナーという先発投手がいる。昨シーズン14勝を挙げ、防御率は3.59、サイ・ヤング賞投票で8位につけたエースだ。マイナーは菊池と同じサウスポーで、フォーシームの平均球速も92.5マイルと同じだった。菊池と大きく異なるのはスピン量だ。マイナーが昨シーズン記録したフォーシームの平均スピン量は1分間に2650回転で、2000球以上投げた先発投手のなかで最も多かった(菊池は2096回転)。

回転量の差は成績にも表れている。菊池のフォーシームが被打率.326/被長打率.622/空振り率16.0%だった一方で、マイナーは被打率.252/被長打率.435/空振り率23.3%と好成績だった。もちろん、フォーシームの球質以外にも要因があるだろうが、同じサウスポーで球速も球種も似ているマイナーは菊池の良い手本になるのではないだろうか。

「1年間を投げ続けるのは最低限の目標で、ローテーションの軸とみんなに認めてもらえるように数字を残したい」。キャンプ初日となった13日、菊池は今シーズンへの決意を語った。シーズンオフに長年マリナーズのエースとして君臨した“キング”、フェリックス・ヘルナンデスがブレーブスへマイナー契約で移籍。若返りを図るチームにおいて、今年29歳となる菊池にかかる期待は大きい。

西武時代の菊池と言えば、勝負所で見せるストレートが魅力だった。最多勝と最優秀防御率の二冠に輝いた17年には、当時の左腕史上最速となる158キロをマークしている。勝負の2年目、菊池がメジャーリーガーをストレートでねじ伏せる姿に期待したい。

※日付は現地時間