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驚異の奪三振率を誇るジョシュ・ヘイダーの特徴的な起用法

2019 5/11 11:00勝田聡
驚異の奪三振率を誇るジョシュ・ヘイダーⒸゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

守護神は1回限定での起用がほとんど

ゴールデンウィークの大型連戦も終わり、ここからは通常通りの日程に戻っていく。毎年恒例のことであるが、大型連戦は先発、中継ぎどちらもやりくりに頭を悩ませることになる。先発投手であれば中5日、中継ぎ投手であれば連投はもちろん、試合展開によっては3連投となることも珍しくない。

そのなかでも比較的安定した起用となるのが守護神である。現在のプロ野球において、守護神は同点、もしくは3点差以内でリードしている場合の登板となることがほとんど。そして、その多くは1回限定での起用となる。シーズン終盤やポストシーズンではその「ルール」を超え、イニングまたぎをすることはあるが、あくまでも異例。序盤戦では少ない。

しかし、MLBの世界では守護神でありながら、イニングまたぎは当たり前で、時には3イニング近く投げる投手もいる。その代表的な選手がミルウォーキー・ブリュワーズのジョシュ・ヘイダーである。

メジャートップの奪三振率20.1

ヘイダー年度別成績表ⒸSPAIA

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ヘイダーは2017年にメジャーデビューした左腕。35試合の登板で防御率2.08と安定した成績を残し定着した。なかでも特筆すべきなのは、奪三振の多さである。47.2回を投げ68三振を奪い、K/9(1試合あたりどれだけ三振を奪うかを表した指標)は12.8だった。

2年目となった昨シーズンは81.1回を投げ143奪三振でK/9は15.8と更に上昇。2年目ながらオールスターゲームにも出場を果たしている。そして今シーズンはここまで14試合の登板で18.1回を投げ41奪三振。K/9は20.1である。これは10回以上を投げている投手の中ではメジャートップ。驚異の数字である。

つまり1イニングで2つ以上の三振を奪う計算だ。まさに奪三振マシーン。日本のプロ野球では松井裕樹(楽天)が19回で32三振を奪い、K/9は15.2を記録しているが、それをしのいでいる。

ヘイダー球種内訳ⒸSPAIA

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そのヘイダーが投じる球の多くはフォーシーム(ストレート)である。今シーズン、ここまで全276球の88.0%にあたる243球がフォーシーム。またその他にはスライダーを31球(11.2%)、チェンジアップを2球(0.7%)投じている。

これを見てもわかる通り、ほぼフォーシーム、たまにスライダーを投じる投球スタイルなのである。

そのフォーシームの球速は95マイルとなっており、およそ152.9キロ。100マイルを超えるフォーシームを投げる投手がいるメジャーリーグのなかで、驚くほど速いわけではない。ちなみに平均球速でヘイダーは66位。65人も上にいるのである。

そのなかで、全球種に対する空振り率は25.1%。この数値は10回以上投げている投手のなかではMLBトップ。極めて高い空振り率を誇っているのである。

複数イニングを投げること5度

驚異の奪三振率を誇るヘイダーは今シーズン、クローザーとして14試合の登板で10セーブを挙げている。

しかし、その起用法は他のクローザーと少し違う。18.1回に投げていることからもわかる通り、1回を超えても投げることが多くある。開幕戦で2回を投げたのを皮切りに、その数はなんと5回。複数回を当たり前のように投げているのである。

だが、2日連続で登板したのは、3月30日から4月2日までの3日連続が1回あるのみ。それ以外は登板間隔を1日以上空けての起用となっているのだ。連投に気を配りながら、1試合での投球回数を増やしているように見える。

ここまでブリュワーズは23勝16敗と貯金を7つ作り、ナショナルリーグリーグ中地区で2位につけていることから、このヘイダーの起用も一定の成果は出ている。(9回の1回に固定していたら、どうなっていたかということはわからないが)

果たしてシーズンを通して絶対的な切り札に対し、このような起用法を取っていくのだろうか。これからもヘイダーには注目だ。

※数字は2019年5月8日終了時点