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MLB新人王の大谷、後半戦飛躍の背景にフライ率上昇。松井秀喜にもあった変化

2018 11/15 07:00青木スラッガー
大谷翔平,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

後半戦好調だった大谷、シーズン中に打球傾向が変化

エンゼルスの大谷翔平が新人王に選出されるという、うれしいニュースがあった。改めて大谷のメジャーデビューを振り返ってみよう。

6月に1か月弱の故障者リスト入りした期間があり、7月に打者で復帰した後は不振にも陥ったが、後半戦は15本塁打を放つなど躍進。1年目で苦しい時期から復活できたのは今後の大谷にとって、大きな財産となるのではないだろうか。

後半戦の大谷は何が変わったのか。スタッツを見るとゴロ打球が減り、フライ性の打球が増えていったことが一つの要因に推測できる。

大谷は前半戦、メジャートップクラスの打球速度を誇る半面、打球角度が課題であるとよく評されていた。ゴロが多く、そのほとんどが引っ張りになるという特徴があり、守備側としては思い切ったシフトを敷きやすい。角度をつけられるようになれば、シフトを攻略でき、本塁打も増やせるのだが……。ただ、シーズン中に打球傾向の大きな変化があった。

オールスターブレイクを境にゴロが減り、フライが増えた

ゴロ打球とフライ打球の比率を表すものとして「GB/FB」という指標がある。本塁打を除いてフェアゾーンに飛んだ打球のうち、ゴロの総数をフライの総数で割ったもので、数字が大きいほどゴロの比率が高い打者になる。この指標を米データサイト『ファングラフス』から引用すると、大谷のシーズン中の推移は以下のようになる。

大谷のシーズン中の「GB/FB」

ⒸSPAIA

シーズンGB/FB は1.32(ゴロ率43.6%、フライ率32.9%)。前半戦 GB/FB は1.78(ゴロ率50.5%、フライ率28.4%)とゴロが多かったが、後半戦は1.06(ゴロ率38.5%、フライ率36.2%)と、ゴロとフライの比率がほとんど同じくらいになった。

傾向に変化が出たのはちょうど後半戦のスタートからだ。7月GB/FBは0.83とフライが多いが、15日で区切ると前半1.40、後半0.62となる。好調だった8月のGB/FBは0.94。9月のGB/FBは1.50に戻ったものの、この1か月は高確率でヒットになるライナーの打球比率がシーズンで最も高く、ゴロ率は42.9%と前半戦より低い数字に落ち着いた。

オールスターブレイクの4日間を挟んで、これだけ打球傾向にわかりやすい変化があったのは、大谷が意図的にフライを打つように、スタイルを変えたのではないだろうか。7月の不振は試行錯誤の期間だったと読み取ることができる。 フライ率が増えはじめた7月後半は打率.175だったものの、7安打のうち二塁打3本、本塁打2本。アベレージは低いが長打が目立っており、8月以降は確実性も伴わせていった。

「GB/FB」の変化と成績の向上は松井秀喜にもあった

フライ率の上昇が成績の向上に結び付いた例として、大谷と同じ日本人の左打者で、松井秀喜のメジャー1年目から2年目は参考になるかもしれない。 松井のメジャー1年目は106打点をマークして、クラッチヒッターとして活躍したが、本塁打は16本と巨人時代の長打力は影を潜めた。

このシーズンのGB/FBは 2.30(ゴロ率54.7%、フライ率23.8%)となかなか打球が上がらなかった。ニューヨークの手厳しいメディアに「ゴロキング」と揶揄されてしまうほど、ゴロの多さは大きな課題であった。

しかし、松井は2年目にGB/FBが1.06とその課題をクリア。31本塁打を放ち、同時に長打力が向上した。以降のシーズンGB/FBは1.00前後で安定し、本塁打を積み重ねていった。

GB/FBは必ずしも数値が低いから良いというものではない。スラッガータイプは1.0前後となる傾向があるものの、今シーズン三冠王の可能性もあったブルワーズのイエリッチは2.20となっており、フライがあまり多くない強打者もいる。

大谷の成績向上はフライが増え、ゴロが減ったことによるものなのか。それを判断するには来シーズンからもう少し様子を見たいところだ。しかし、松井が1年かかった「打球に角度をつける」というアジャストをシーズン中にこなしてしまったのであれば、やはり大谷の才能は末恐ろしい。

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