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マエケンの女房役グランダルも愛用 MLBで密かに人気のマスク『Force3 Pro Gear』

キャッチャーマスクⒸゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

MLBのキャッチャーの間で人気を集めている『Force3 Pro Gear』

150キロを超えるファウルチップがキャッチャーマスクに直撃……。その際に生じるとてつもない衝撃や痛みは体感した者にしか分からないが、映像越しに見ていているだけでも恐怖を覚える。キャッチャーは常に危険と隣り合わせのポジションだ。そんなことを思いながらMLB中継を見ていたとき、キャッチャーマスクにある変化があることに気がついた。

通常、キャッチャーはマスク、プロテクター、レガースといった防具は同じメーカーの製品を使用するが、MLBでは保護されている部分が多いホッケー型のマスクを好む選手が多い。そうした理由からマスクのみAll-Starのホッケー型マスクを使用している姿はよく見られた。

しかし、今シーズンの中継を見ている中で、マスクのみアルファベットの『F』と数字の『3』を組み合わせたロゴが刻まれた『Force3 Pro Gear』という製品を使用している光景が多く見られた。Force3のマスクがなぜメジャーリーガーの心を掴み、人気を集めているのか。

スプリングが頭部への衝撃を吸収

Force3のマスクの最大の特徴は、ファウルチップが直撃した際の衝撃吸収力が優れている点だ。

一般的なマスクとは違い、マスクの上部に2ヶ所(左右のこめかみ付近)と下部1ヶ所(顎付近)、合わせて3ヶ所に合計6個のスプリングが取り付けられている。このスプリングこそが、頭部への衝撃を和らげているのだ。

アメリカのスポーツ用品の安全性を比較する検査機関NOCSAEが行った、70マイル(約113キロ)のソフトボールがマスクに直撃した際の衝撃を分析した実験によると、Force3は従来のマスクと比べてSeverity Index(頭部の耐性指標)を89%、最大重力加速度(G)を56%低減。衝突時に頭部が受けるダメージを大きく減らすことが実証されている。

ファウルチップによって脳震盪を起こしてしまうと、選手生命にも関わってくる。

現役時代、4度のゴールデングラブ賞を獲得し、今シーズン途中までカージナルスの監督を務めたマイク・マシーニーは2006年5月にファウルチップがマスクに直撃し、脳震盪を起こしてしまった。その後、めまいや記憶障害などの後遺症に悩まされ、翌2007年2月に32歳で現役を引退した。

時に選手生命をも奪ってしまうほどの深刻なダメージから頭部を守ってくれるマスクは、キャッチャーにとって大切な道具であり、少しでも衝撃を和らげてくれる安全な道具を使いたいという思いが、メジャーリーグで急速にForce3のマスクが広がりを見せている要因だろう。

2018年はグランダルなど17選手が使用

今シーズンのMLB中継映像や撮影された写真を目視で確認した結果、17人がForce3のマスクを使用していることが確認できた。

そのうちマスクに加えてプロテクター、レガース、ミット全ての防具でForce3を使用している選手は、同社の広告塔としてPRを行っているフラワーズ(ブレーブス)とグランダル(ドジャース)の2選手のみだった。

一方、マスクに限って使用していた選手は15人で、防具はアンダーアーマーを使用している選手が5人で最も多いという結果だった。

中でもウィータース(ナショナルズ)は契約メーカーへの配慮から、マスクのロゴは目立たないように塗りつぶして使用していた。それほどまでに使いたいと思わせる製品なのだ。

またチーム別では、ブレーブス、フィリーズ、ロイヤルズ、パドレス、アストロズの5チームで複数の選手が使用している。このデータから、実際に使用した選手が気に入り、その口コミから選手間で広まっているようだ。

現在行われているポストシーズンにはブレーブス、ドジャース、ロッキーズ、アストロズの4チームが進出(ブレーブス、ロッキーズはディビジョンシリーズで敗退)。中でもドジャースには前田健太が所属していることから、グランダルとバッテリーを組んでいるのを見る機会も多いだろう。MLB中継を見る際には、キャッチャーのマスクにも注目してみて欲しい。

MLB中継を見ていて「あのマスクって、どこのメーカー?」と気になっているマニアックなファン、今回初めて知ったというファン、そして実際にプレーしている選手にも進化し続けている用具を知ってもらうことで開発競争が活性化し、より安全性が高い製品開発に繋がっていくことを期待したい。