「スポーツ × AI × データ解析でスポーツの観方を変える」

MLBで飛び交う単語、オプトアウト、クオリファイング・オファーとは?

2018 10/28 15:00勝田聡
クレイトン・カーショーⒸゲッティイメージズ
このエントリーをはてなブックマークに追加

Ⓒゲッティイメージズ

昨シーズン田中で話題となった、契約破棄できる「オプトアウト条項」

近年、オプトアウト(Opt Out)という単語が飛び交うようになった。日本でも昨シーズンオフにニューヨーク・ヤンキースの田中将大がオプトアウトできる権利を持っていたこともあり、この単語がメディアを賑わせた。

これは「現在の契約を破棄することができる」権利である。もちろん必ず行使せねばならないものではない。田中のように行使せずに当初の契約で残りの数シーズンを戦う場合もある。

契約する際、選手はできるだけ高額な長期契約を結ぶことを目標としている。しかし、年々MLBの契約金が高騰している現在。契約時点では高額で長期だった契約も数年後には相場が変わり、低額での長期契約となってしまう恐れがある。そのため、長期契約の途中で破棄できる権利を盛り込みたいのだ。

球団側は、選手に対するメリットのひとつとしてオプトアウトの条項を盛り込み、他球団に差をつけようとしているのだ。また、数年後のチーム状況が変わらない保証もなく、オプトアウトを行使されても再契約する義務は無いため、FAとなってくれた方が都合のよいときもある。

オプトアウトは、高額で長期契約を結ぶことができる選手に付帯されることが多い。今オフの目玉でもあるロサンゼルス・ドジャースのクレイトン・カーショーもオプトアウトで市場に出るか否かが注目されている。

【オプトアウトまとめ】

  • 複数年契約の途中で契約を破棄できる選手側の権利
  • 行使しないこともある
  • 球団側は行使されても再契約する義務はない

選手、球団の駆け引きも!「クオリファイング・オファー」

オプトアウトと同じように「クオリファイング・オファー」(Qualifying Offer)という単語を耳にする機会は多い。記事の中では「QO」と略されることもある。

これはシーズン終了後にFAとなる選手に対し、現所属球団が1年契約のオファーを他の球団に先駆けて提示できる制度だ。提示を受けた選手は10日間の間に受けるか、否かを返答しなければならない。オファーを受ければ契約が成立し、拒否すればFAとなり市場に出ることとなる。

QOを拒否された球団は、当該選手を獲得したチームから補償としてドラフト指名権を得ることとなる。ただし、翌年のドラフト終了後に契約を交わせば、指名権の譲渡は発生しない。

QOの額はMLBで算出されることとなっており、その年の年俸上位125選手の平均額となる。今シーズンは1790万ドル(約20億1375万円)だ。また選手は現役期間中に1度しかQOを受けることができない。

QOは球団、選手ともに駆け引きが発生する。球団の場合はこうだ。FAとなる選手を引き留めるつもりがなくても、「選手が高額な契約を狙い、拒否することを前提としオファー」を出すこともある。もちろんこれは、ドラフト指名権を得るためのものだ。しかし、同時に選手側がその(球団としては)臨まないオファーを受け入れるリスクを背負うことになる。

一方、選手側は自分の価値が規定の額より高いと判断すれば、提示を断り市場に出る。しかし、なかなか獲得球団が現れず、結果としてQOの提示額よりも低い額で契約することになる可能性もある。

2017年シーズンオフにはマイク・ムスタカスがカンザスシティ・ロイヤルズからQO(昨年は1740万ドル)を提示されたが拒否。市場で高額な契約を狙ったが、交渉はまとまらずロイヤルズと1年550万ドルで再契約を結んだ。実に1190万ドルの減額をしたことになる。双方にとってリスクがあるなかで、選手及び代理人そして球団が市場の動向を見て駆け引きを行うのだ。

プロ野球(NPB)ではFA選手の年俸額によって人的補償、金銭補償が発生するが、MLBではドラフト指名権が補償となっているのである。限られた選手のみに補償が発生するのは日米ともに同じである。

【クオリファイング・オファーまとめ】

  • QOと略されることもある
  • 1年契約のみ
  • 選手はキャリアで1度だけ受諾可能
  • 今シーズンは1790万ドル
  • 受諾した場合、球団にとっては望まない契約となることもある
  • 拒否した場合、選手は市場に出る→獲得球団から元所属球団へドラフト指名権が譲渡される
  • 拒否した場合、選手は年俸が下がるリスクがある

MLBのオフシーズンに、日本では馴染みのない単語が飛び交うことが多い。単語の意味を憶えると深く理解でき、より楽しめることは間違いない。試合はなくとも、選手の動きが多いオフシーズンをぜひ楽しんで欲しい。

※数字は現地2018年10月17日終了時点