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メジャーの大型トレードをプロ野球で例えてみる 西武が西勇輝や澤村拓一を獲得?

2018 8/9 07:00勝田聡
マニー・マチャド,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

オリオールズは主力の遊撃手と中継ぎ投手を放出

今夏の移籍市場で大きく注目されていたマニー・マチャドのポジションは遊撃手で、3年連続で30本塁打以上を放っている。以前は三塁を守っており、2013年・15年と2度のゴールドグラブ賞受賞歴があるスタープレーヤーだ。オールスターゲーム直後に、今シーズン優勝を狙うドジャースへトレードされた。

オリオールズがマチャドを放出したのは、来シーズン以降を見越したからに他ならない。今シーズンのオリオールズは開幕から不振でアメリカンリーグ東地区の最下位を独走中。そして今シーズン終了後にFAとなるマチャド。この2つの事情からマチャドを放出し、未来の戦力となりうるプロスペクトと呼ばれる若手の有望株を5人獲得したのだ。

それだけではない。オリオールズはリリーフのザック・ブリトンも同地区のヤンキースへとトレードした。ブリトンは故障もあり昨シーズンは目立った成績を残していないものの、2016年に47セーブをマークした実績のある中継ぎ投手である。その見返りにマイナー選手を3人獲得した。

その他にもダレン・オデイ、ケビン・ゴーズマン、ジョナサン・スコープらを放出し、多くの若手マイナー選手を手に入れた。もちろん、全員がメジャーで戦力になる保証はない。だが、「勝負は今シーズンではなく、来シーズン以降の未来」という思いは伝わってくる。

FA権をもつ主力と若手のトレード

ここで、オリオールズとドジャースやヤンキースとのトレードを日本のプロ野球で例えてみたい。チーム数も少なく、全球団にクライマックスシリーズ出場のチャンスはまだある状態なので、あくまでイメージとして捉えて欲しい。また3位ではなく、優勝を目指すという視点で考えると思い浮かべやすいかもしれない。

開幕からパ・リーグの首位を走る西武を例に考えてみると、「山賊打線」と呼ばれる打線は好調だが、先発・中継ぎとも投手陣に不安がある。特に、中継ぎ投手の陣容は守護神だった増田達至が二軍で調整中となっており、その他の中継ぎ投手も武隈祥太(防御率5.84)、ワグナー(同4.02)、平井克典(同3.97)と盤石とは言えない状態。開幕後に外国人投手を2名獲得していることからも、チームの補強ポイントだったことがうかがえる。

この投手陣の不安を払拭するために若手選手を放出し、今シーズンFA権を取得した選手を中心に先発や中継ぎの有力選手を獲得する。獲得候補は西勇輝(オリックス)や澤村拓一(巨人)あたりだろうか。西武の若手野手を見ると、金子一輝、山田遥楓、鈴木将平、愛斗と有望株が多い。こういった将来性のある選手を交換相手に戦力補強を行い、優勝を目指す。これが今シーズンのドジャースやヤンキースが取った戦略だ。

一方、主力を放出するオリオールズと同じ立場になるのがオリックスと巨人だ。首位から大きく離されているため、今シーズンの優勝は難しい。となれば、FAでシーズン終了後にチームを去る可能性がある投手を交換相手に、未来の戦力として期待できる選手を獲得するというのは悪くない選択だ。

しかし、現実的に日本プロ野球ではこういったトレードが成立する可能性は「0」に近い。現行の制度では、両リーグ6球団中半分にあたる3球団がクライマックスシリーズ出場権を獲得できる。そのため最後まで望みのあるチームが多く、7月31日のトレード期限時点では諦める判断ができないというのが1つの理由。

ここ最近はエクスパンションの話題も出ているプロ野球界。もし近い将来に14球団、ないし16球団へと球団数が増えることになれば、メジャーリーグほどではないにしろ、今以上に移籍市場が活発になるかもしれない。

※数字は2018年8月7日終了時点