サイ・ヤング賞とは?
まず、サイ・ヤング賞とはどのような賞なのかを説明しよう。この賞はそのシーズンでもっとも活躍した投手に贈られる賞であり、アメリカンリーグ・ナショナルリーグから各1名ずつが選出される。
明確な数値の基準はないものの勝利数、防御率、奪三振数、投球回数などから評価されており、中継ぎ投手の場合はセーブ成功率や連続セーブ記録などが加味されてくる。選出の方法は記者投票となっているために、結果に対し議論が巻き起こることもある。
また、先発投手に限らず中継ぎ投手が受賞することもあり、直近では2003年にエリック・ガニエ(ドジャース)が2勝3敗55セーブ、防御率1.20の成績で同賞を受賞している。
同賞の冠となっているサイ・ヤングは1890年代から1900年代初頭にかけて活躍し通算511勝(MLB記録)をマークした大投手だ。その偉業を讃えて同賞が制定された。これまでに日本人投手が受賞したことはなく、ダルビッシュには初の受賞に期待がかかっている。
2017年シーズンの受賞者はアメリカンリーグがコーリー・クルーバー(インディアンス)、ナショナルリーグがマックス・シャーザーとなっている。クルーバーは2回目、シャーザーは3回目とともに複数回目の受賞でもあった。
4度目を狙うふたりのライバル
ダルビッシュがサイ・ヤング賞を狙う上でもっとも強力なライバルなるのは、昨年後半にチームメートだったクレイトン・カーショー(ドジャース)だろう。ここまで3度にわたって同賞を獲得しているカーショー。
ここ2年は故障での離脱もあり、タイトルから遠ざかっている事実はある。しかし、最多勝3度、最優秀防御率5度、最多奪三振3度と多くのタイトルを獲得しており、現役最高の左腕であることは間違いない。
オフシーズンにはダルビッシュとトレーニングを行うなど、公私ともに仲の良い一面を見せていた。しかし、シーズンが始まれば同じナショナルリーグでチャンピオンを争う敵同士でもある。メジャーリーグを代表する絶対的なエース投手がダルビッシュの前に立ちはだかる。
そのカーショーに負けずとも劣らないのが、昨シーズン2年連続3度目となる同賞受賞を果たしたシャーザーだ。アリゾナ・ダイヤモンドバックスで2008年にデビューしたシャーザーは2010年からデトロイト・タイガースでプレー。初めて2桁勝利を達成すると2013年に21勝3敗、防御率2.90、240奪三振(214.1回)の成績をマークし、サイ・ヤング賞投手の仲間入りを果たす。
2015年からナショナルズへと移籍しても成績が落ちることはなく、2016年、2017年と2年連続で同賞を受賞。カーショーと比べて勝るとも劣らない成績を残しており、今シーズンは3年連続での受賞を目指している。
バンガーナーらその他にも有力投手が多数存在
カーショー、シャーザー以外にも候補者は多くいる。ダルビッシュとチームメートとなったジョン・レスター(カブス)もそのひとりだ。ここまで通算159勝をあげている現役屈指の左投手でもあり、2016年には19勝5敗の成績を残しサイ・ヤング賞投票で2位に入るなど実績はある。主要タイトルの獲得はないものの、晩年候補で終わるわけにはいかない。ダルビッシュ入団の相乗効果に期待したい。
昨シーズン、ナショナルリーグのサイ・ヤング賞投票で3位に入ったのがスティーブン・ストラスバーグ(ナショナルズ)だ。2009年ドラフト全体1位で入団した当時から注目を浴びており、2014年には最多奪三振のタイトルも獲得している。ポテンシャルは高いものの、故障が多くシーズン投球回数が200回を超えことは1度だけ。昨シーズンも175.1回に終わっており、故障に勝つことが重点項目となりそうだ。
故障もあり、昨シーズンはわずか4勝(9敗)に終わってしまったマディソン・バンガーナー(ジャイアンツ)。投手でありながら代打で登場することもあり、打撃に注目が集まることも多いバンガーナーではあるが、もちろん、投手としての能力も超一流だ。本格化した2011年から2016年まで6年連続で13勝以上をマーク。2014年にはワールドシリーズで大車輪の活躍を見せ、MVPを獲得している。昨シーズンの鬱憤を晴らし投手最高の栄誉を勝ち取りたい。
その他にもザック・グレインキー、ロビー・レイ(ともにダイヤモンドバックス)、ジェイコブ・デグローム(メッツ)といった各球団のエース級が同賞を狙っている。メジャーリーグでエースとなり、そのエースの中でも超一流とならなければ獲得できないサイ・ヤング賞。ダルビッシュはその栄誉を勝ち取ることができるだろうか。新天地カブスでの投球に期待したい。
※数字は2017年終了時点