2016年はカブスが108年ぶりの優勝
まずは2016年のワールドシリーズを振り返ってみよう。2016年は、シカゴ・カブスがクリープランド・インディアンスを4勝3敗で下し、108年ぶりにチャンピオンリングを手にすることとなった。相手のインディアンスも68年以降優勝から遠ざかっていたチームであったが、シーズン103勝53敗という圧倒的な成績を残したカブスが優勝となった。
2013年・2014年と2年連続の最下位だったカブスであるが、ここ数年の積極的な補強に、若手野手の育成などが実を結んだ結果だろう。2015年は惜しくもワールドシリーズまで後一歩というところで敗退となったが、その雪辱を晴らす見事な優勝であった。
アリーグではアストロズが圧倒的な成績
各リーグ・各地区の状況を見ていこう。まずはアリーグから。アリーグを見ると、やはり目を見張る成績を残しているのが、ヒューストン・アストロズである。アリーグ西地区では、2位のマリナーズに15ゲーム差をつけており、ディビジョンシリーズ進出はほぼ確実だろう。
とにかく打線が破壊力抜群で、首位打者のホセ・アルテューベ選手を筆頭に、打率3割越えが4人。チーム打率は.290近くを誇っている。ジョージ・スプリンガー選手もホームラン王争い2位であり、一度繋がると大量得点が期待できる。投手陣に飛び抜けた選手はいないが、駒はそろっている。圧倒的な打撃陣がしっかりと仕事をすれば、十分に勝ち上がっていけるだろう。
アリーグ東地区は三つ巴の展開
一方でアリーグ東地区では混戦だ。昨年も東地区を制覇したボストン・レッドソックスが首位を走っているが、その後ろをタンパベイ・レイズ、ニューヨーク・ヤンキースが追っており、まだまだわからない。
だがやはり戦力を見ると、レッドソックスが勝ち上がってくるのではないかという印象だ。とにかく投手力が安定しており、ドルー・ポメランツ選手、クリス・セール選手の先発2本柱がしっかりとしているのが大きい。特にセール選手は勝利数11、防御率もトップを誇っており、リーグNo.1の成績を残している。
後ろもクレイグ・キンブレル選手を中心に盤石。投手陣が安定していれば、短期決戦でもある程度計算できる。野手陣は全体的に打率が低いが、2桁本塁打と、どこからでも点が取れる打線だ。大きな連敗さえ避ければ、東地区2連覇もあり得るだろう。
ワールドシリーズで上がってくるのはどのチームか
ではレイズやヤンキースはどうなのだろうか。レイズもヤンキースも、ここまで大きく負け越しているわけではなく、どちらか2チームがワイルドカードで勝ち上がってくる事は間違いないだろう。レイズはセーブ王アレックス・コロメ選手を中心として、先発陣・中継ぎ陣ともにしっかりと駒を揃えており、僅差をしっかりとものにしている印象だ。
一方のヤンキースは、やはりホームラン王のアーロン・ジャッジ選手の成績に目が行く。前半戦だけで30本塁打を放ったその打棒は、やはり驚異的だろう。さらにレギュラーで出場している選手はほとんどが2桁本塁打を放っており、この地区の中では間違いなく打撃でトップだ。ただ先発投手陣も救援投手陣もやや力が落ちてしまうことは否めない。ディビジョンシリーズ進出は、ややレイズが優勢といったところか。
アリーグ中地区はやや元気がない?
アリーグ中地区は、やや元気がない印象だ。1位は昨年にワールドシリーズに進出したクリープランド・インディアンスだが、今シーズンは勝利数が少なく、東地区2位のレイズよりも勝率が低いという状況だ。投手陣はそろっており、先発のカルロス・カラスコ選手が前半戦だけで10勝を上げている。
だがレッドソックスに勝るほどのインパクトはなく、プレーオフで勝ち上がってくのはやや厳しいのではないだろうか。光があるとすれば、アストロズとの対戦成績が5勝1敗とかなりの優位を誇っていることだ。
ナリーグではナショナルズとドジャースがほぼ当確
ナリーグを見てみると、すでにワシントン・ナショナルズとロサンゼルス・ドジャースが、ディビジョンシリーズ当確といった感じだ。ナショナルズはナリーグ東地区で、ドジャースはナリーグ西地区で、それぞれ2位のチームと10ゲーム差以上をつけて独走している。
ナショナルズは圧倒的に「打」のチームであり、ブライス・ハーパー選手、ダニエル・マーフィー選手らで打率1位、2位を独占している。彼らを合わせて、打撃ベスト10入りの選手が合計4人もいる。4人とも本塁打も打てる選手であり、アストロズに負けず劣らずの打線が武器だ。
一方でドジャースは対称的に「投」のチームだ。黒田博樹さんの親友としてもおなじみにクレイトン・カーショー選手と、規定不足ながら防御率1点台のアレックス・ウッド選手が先発の2本柱、そこに前田健太選手らが続いている。後ろには防御率0点台の守護神、ケンリー・ジャンセン選手がドッシリと座っており、リードして後半を迎えれば、まず負けることはない。
前年度の優勝チームは勝ち上がることができるか
中地区は混戦だ。ミルウォーキー・ブリュワーズとシカゴ・カブスが、わずかなゲーム差の中にひしめいている。ブリュワーズはチーム本塁打数1位を誇るチームであり、打ち勝つ野球でここまで勝利してきた。
一方前年のチャンピオンであるカブスは、ここまで連勝と連敗が同じ数だけあり、貯金を作り切れていないという印象だ。戦力は前年から落ちているということはないため、しっかりと実力を出し切ることができれば、カブスが中地区を勝ち上がる可能性は十分にある。
ワールドシリーズはアストロズが優勢か
このチームの中から一体どこがワールドシリーズに出場してくるのだろうか。現時点では、各リーグで圧倒的な成績を残すアストロズとドジャースの可能性が高いように思える。ただし、今年はホームランがかなり増えているということもあり、打撃力をもつチームが有利だ。アリーグではドジャースではなくナショナルズが勝ち上がってくる可能性も十分に考えられる。
ただワールドシリーズ制覇となると、アストロズが有力だろう。打撃有利の年であるため、DH制のある試合の戦い方が重要になる。そうなると、アストロズが有利なのではないだろうか。ワールドシリーズ出場となると。2005年以来12年ぶりとなり、さらにシリーズ制覇となれば球団史上初。
そういった意味で経験のなさに不安が残るものの、今季の勢いはやはり本物だ。2011~2013年まで3年連続100敗してしまうほどの弱小球団ながら、補強や育成などでチームを整備してきたという点も、昨年のカブスとよく似ている。今のアストロズは、そういった期待が持てるチームなのだ。