現行の日本プロ野球のドラフト制度
以前まで日本のプロ野球ドラフト制度には、自由獲得枠や希望枠といった制度があった。なので、特にドラフト1位で指名されるような有力選手のほとんどは、高校生を除きドラフト実施前に入団する球団が既に決まっている、という状況が長く続いた。
ところが、その裏で不正な金銭のやり取りが発覚。その後、高校生と大学生・社会人の分離ドラフトなどを経て、現在ではドラフト1位は、純粋な指名制となり、仮に氏名が重複した場合には抽選を行い、その後は下位チームから上位チーム、上位チームから下位チームの順番で、指名を行うウェーバー制が採用されている。
MLBは原則として完全ウェーバー制
MLBドラフト制度は、日本のドラフト制度に比べ、さらに各球団の戦力均衡を目指したものとなっている。
特にその特徴がよく表れているのが、ウェーバー制の実施だ。
ウェーバー制とは、基本的には前年度成績を反映し、プレイオフに進出できなかったチームの抽選の後、その指名順に選手を指名するという制度だ。
つまり下位球団は、金銭がかかるFAやトレードといった手段をとらず、アマチュアなので育成する必要はあるものの、ドラフトで比較的有望な選手を獲得することができるのだ。
もちろん、後記する各種制度も存在している。
各種補償枠の存在
MLBでは上記のウェーバー制を前提に、各種の補償枠を設けている。
例えば、前年度高額年俸選手をFAで失った球団に対しての補償制度や、資金力がない球団に対して、1巡目・2巡目と3巡目・4巡目の間に戦力均衡枠が設けられるなどだ。
この他にも、前年のドラフトで契約合意できなかった球団に対する優先枠等があり、球団ごとに指名順序が大きく異なってくるのがMLBドラフトの特徴だ。
これらの制度理念は、各球団の戦力均衡にある。
入団拒否が多いのも特徴
日本のプロ野球の場合、ドラフト指名されれば、ほとんどの場合はその球団に入団する。
古くは江川事件、最近では菅野投手の場合のように、特定の球団への入団を求め、入団拒否するケースは少なくなってきた。プロ球団からの評価の高低を指名順位で図り、不服の場合には入団を拒否するということもあるが、多くの場合はスカウトが事前にそのような希望を入手しているため、なかなかこの事態に発展しないのが通常だ。
一方のMLBでは、契約金や進学を理由に入団拒否を行うことも珍しくない。
特に契約金について、日本が契約金と一年目の年俸の上限を定めているのに対し、MLBでは、各指名順位に推奨される金額が決まっており、その金額内で契約する必要があるのだ。
何が良いかは一概には決められない。
戦力均衡によってチームの実力格差をなくすことは、消化試合などを減らすことにもつながるし、最後まで白熱したリーグ戦が展開されるという意味では非常に重要だ。
そういった意味では、MLBドラフトの方式というのは非常に理にかなった方法といえる。
日本プロ野球でも、完全ウェーバー制の導入が毎年のように検討されているが、1巡目からそうすることで、当該年度上位チームに有望な選手が入りにくくなるという弊害もあり、なかなか実現には至っていない。
もっとも『くじ引き』にはドラフトならではのドラマが存在するのも事実で、このような様々な意味も含んだ上で、どの方法をとるのがベストなのか一概には判断できないだろう。
まとめ
MLBと日本プロ野球のドラフト制度について、簡単に比較してみた。
日本のドラフトから生まれるドラマは、今や秋の風物詩ともいる。
今年は、いったいどんなドラマが生まれるだろうか。今から楽しみだ。