確かな強さを持つ東海大相模
2019年の夏季神奈川県大会の決勝戦。24-1というスコアで日大藤沢を下したのが名門、東海大相模である。まさかの大差に神奈川県中が驚いたが、それだけの実力を持つ高校だ。神奈川県内では圧倒的強さを誇っており、2019年は夏秋連覇。また甲子園でも確かな結果を残しており、全国にその名を知らしめている。近年では、2015年に夏の甲子園優勝。2018年は春の選抜でベスト4に入るなど全国の中でもその強さは上位に入る。
東海大相模といえば、なんといってもその圧倒的な打力が特長だ。過去7年で行われた夏の神奈川県予選全44試合の内、8点差以上をつけて勝利した試合は21回。約半数を大差で勝利しているのだ。一方で3点差以内で勝利したのはわずかに4回。まさに力でねじ伏せる野球といえるだろう。
そういった戦い方ができるのは、監督の門馬敬治氏の指導があってこそ。東海大相模の練習では積極性と意識の徹底を大切にしている。練習ではしっかりと振ることを意識。試合でも初球から積極的に振っていくことで、流れを引き寄せる攻撃的野球を徹底している。
また、甲子園独特の雰囲気を練習に取り入れる工夫も凝らしている。何が起こるかわからない独特の空気の中で常に練習することで、一つでも先の塁を狙うだけでなく、得点して走者がいなくなっても、またチャンスを作る意識を常に持ち続けられるように訓練している。
なぜここまで意識を徹底するのか。それは神奈川を代表するもう一つの強豪校、横浜の存在がある。過去7年の神奈川予選で横浜とは2勝2敗(決勝、準決勝でそれぞれ1勝1敗)。強力なライバルの存在が東海大相模に強い勝利への意識を持たせているのだ。
2018年まで3年連続出場も苦戦が続く強豪・横浜
2016年から2018年にかけて神奈川代表として夏の甲子園に出場したのが横浜である。県内での強さは折り紙つきだが、全国大会では苦戦している。実際に3年連続で甲子園出場した際の記録を見てみよう。
2016年:2回戦で履正社(大阪)に敗戦
2017年:初戦で秀学館(熊本)に敗戦
2018年:3回戦で金足農業(秋田)に敗戦
全国の強豪校やフィーバーを巻き起こした高校と当たっているとはいえ、苦しい戦いが続いている。
また、2019年夏の県大会ではノーシードの県立相模原に敗戦。さらに、秋には監督の暴力事件が発覚した。夏に向けての早急な立て直しが求められている。
松坂大輔や筒香嘉智など多くのプロ野球選手を輩出した名門。果たしてこの窮地から抜け出すことができるのか。
県内では屈指の強豪校桐光学園
桐光学園は東海大相模、横浜の2校に隠れているものの、県内屈指の強豪校だ。過去10年の夏季大会ではベスト4入りを8回果たしている。
また、2019年の秋季県大会では準優勝。夏に3連敗、過去10年で5敗するなど苦手としている横浜相手に勝利を飾るなど底力を見せつけた。決勝では3-1で東海大相模に敗戦したものの、2強と互角に渡りあえる実力を示した。
独自の育成システムで全国を目指す慶應義塾
4つ目の神奈川の強豪校は慶應義塾だ。2016年の夏の大会では準決勝で東海大相模に勝利し、2018年には桐光学園を破り100回記念大会の北神奈川代表を勝ちとるなどの実績がある。
過去10年でベスト8が4回。敗れた試合の相手はほとんどが強豪校だ。過去10年のうち6回は、東海大相模、横浜、桐光学園と当たり敗れている。こういったチーム相手に勝利するためにもう一段強くなりたい。
そんな慶應義塾では、独自の育成システムを持っている。それは大学生による高校生の指導だ。監督の森林貴彦氏も、慶應義塾大学で高校生に野球を教えていた。今は小学校の教諭をしながら多忙の中で高校生を指導している。
そんな監督をサポートするため、12人の学生コーチがいる。バッテリー、打撃、守備、走塁など役割を決めて指導を行う。監督の学生コーチに対する信頼は厚く、しっかりと任せているので学生コーチもやりがいを感じながら指導しているのである。
全国屈指の激戦区神奈川を制するのは?
2019年、夏の神奈川県大会に出場したのは181校。愛知県に次いで多い参加数であった。
2018年の100回大会では、南北に分かれて開催されたがあくまで特別ルール。多くの高校が2強を倒すためにしのぎを削る状態は今後も続く。
今回紹介した他にも2019年、横浜を破ってベスト4に入った相模原、大敗はしたものの決勝まで進出した日大藤沢、2018年、南神奈川準優勝で2019年ベスト8の鎌倉学園など、多くの実力校が神奈川県にはひしめいている。
令和の時代に入っても高校野球激戦区神奈川県からは目が離せない。