花巻東が2年連続甲子園
第101回全国高校野球選手権岩手大会決勝が7月25日、岩手県営野球場で行われ、第1シードの花巻東が12-2でノーシードの大船渡を破り、2年連続10度目の甲子園出場を決めた。プロ注目の最速163キロ右腕・佐々木朗希は先発を回避。「令和の怪物」と称された今夏最大の目玉は甲子園のマウンドに登ることなく姿を消した。
試合は初回に花巻東が2点を先制。その裏に大船渡が1点を返したものの、花巻東がその後も加点し、最後までリードを守り切った。
強豪私立からの誘いを蹴って地元の公立校を選んだ佐々木は、準決勝までの計4試合、29回を投げて51三振を奪ったが、夢の聖地には届かなかった。
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「元祖怪物」は江川卓
佐々木を「令和の怪物」と呼ぶなら、昭和、平成の「怪物」と比較してみよう。怪物の元祖は作新学院・江川卓。スピードガンのない時代だけに数字で比べることは難しいが、残した成績は凄まじい。
1972年、2年夏の栃木大会では2回戦からノーヒットノーラン、完全試合、ノーヒットノーランの快投を演じ、27回で被安打0、奪三振47という驚異的な内容で準決勝進出。決勝進出をかけた小山戦も10回までノーヒットに抑えていたが、11回にサヨナラスクイズを決められて敗れた。
秋季栃木大会、関東大会を無失点で制して決めた翌年のセンバツ。1回戦で北陽(大阪)から19三振を奪って完封勝ちすると、小倉南(福岡)、今治西(愛媛)も寄せ付けず3連続完封。準決勝の広島商(広島)戦で味方エラーから決勝点を与えて敗れたものの、計60奪三振は現在も大会記録として残っている。
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迎えた最後の夏。栃木大会は2回戦、3回戦、決勝でノーヒットノーラン。計5試合で被安打わずか2、75奪三振という信じられない投球内容で甲子園を決めた。
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1回戦の柳川商(福岡)戦は1点を失い、連続無失点は145回で途絶えたが、延長15回、23奪三振の力投で勝利。2回戦が球史に残る銚子商(千葉)との雨中の死闘だった。
両チーム無得点で迎えた延長12回、満塁のピンチに立たされた江川は、雨で制球を乱して押し出しサヨナラ負け。「元祖怪物」は強烈な印象を残して甲子園を去った。
史上2人目の決勝ノーヒットノーランを達成した「平成の怪物」
「平成の怪物」と呼ばれたのが横浜(神奈川)で春夏連覇を果たした松坂大輔だ。センバツを制して迎えた夏の神奈川大会では先を見越して温存されたのか、あまり登板していない。それでも計24回で3失点と安定感抜群の内容で甲子園を決めた。
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1998年夏の甲子園では、今も語り継がれる名勝負を演じた。準々決勝のPL学園(大阪)戦、延長17回までもつれ込んだが気力で250球を投げ抜き、9-7で勝利。疲労困憊だった翌日の準決勝、明徳義塾(高知)戦は先発せず、8回表まで0-6でリードを許した。しかし、8回裏に味方打線が4点を返すと、9回表に登板。ピシャリと抑えて流れを呼び込み、その裏に3点を奪って逆転サヨナラ勝ちするというミラクル劇だった。
決勝の京都成章(京都)戦は嶋清一(海草中)以来59年ぶり2人目となる決勝戦でのノーヒットノーランを達成。圧倒的な内容で最高の締めくくりとなった。
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球速だけなら松坂より上
昭和、平成の怪物と比較して、令和の怪物はどうだろうか。松坂が高校時代に甲子園でマークした最速は150キロなので、163キロをマークしている佐々木の方が球速だけで見れば上だ。ただ、佐々木は全国レベルで試されていないことから現時点での判断は難しい。それだけに誰もが甲子園出場を待ち望んだが、叶わぬ夢となった。
その分も花巻東には期待がかかる。岩手県勢は近年急激にレベルアップしており、菊池雄星を擁した花巻東が2009年のセンバツで準優勝、夏の選手権でもベスト4に入った。2013年にも花巻東がベスト4、2017年には盛岡大付が春夏連続ベスト8入りするなど躍進が目立つ。
昨夏の第100回大会は吉田輝星率いる金足農(秋田)が準優勝に輝き、大フィーバーとなった。令和となって初の甲子園。佐々木の思いも背負った花巻東が東北勢悲願の初優勝を狙う。