「スポーツ × AI × データ解析でスポーツの観方を変える」

東北勢初の悲願ならず 来年は大船渡の154キロ右腕・佐々木に注目

2018 8/24 11:00青木スラッガー
ピッチャー,ⒸShutterstock.com
このエントリーをはてなブックマークに追加

甲子園に現れた東北の豪腕。吉田輝星のストレートは浮き上がる

劇的に勝利を積み重ねた金足農の「金農旋風」は、秋田県勢103年ぶりの準優勝という形で幕を閉じた。その中心となったのは、秋田大会から準決勝までを1人で投げ抜いたエース吉田輝星だ。高校野球にまた新たなスーパースターが誕生した。

吉田の最大の魅力はストレートだ。甲子園最速は、3回戦・横浜戦の9回161球目でマークした150キロ。今大会は2年生右腕の奥川恭伸(星稜)、井上広輝(日大三)も最速150キロを計測するなど、年々高校生投手の球速は上がっている。そんな中、他の投手と単純な球速だけでは比較できない威力が吉田のストレートにはあった。

1回戦の鹿児島実戦、14奪三振で甲子園デビューを飾ったが、奪った三振のうち12個は決め球がストレートで、そのほとんどが高めのボール球だった。そうかと思えば、2回戦の大垣日大戦では、低めいっぱいのストレートを中心に9個の見逃し三振を奪い、13奪三振を記録した。

ストライクと判断し、打ちにいけばバットがボールの下を通過する。あるいは、ボールと判断したものが低めいっぱいに決まる。強烈なバックスピンがかかっているため、打者からは「浮き上がってくる」ように見えるのだろう。面白いように三振の山を築きあげていた。

「最速投手」が次々生まれる東北地方 来年も岩手の公立校に逸材が

近年、ストレートが売りの豪腕投手が次々と誕生している東北地方。

日本ハム時代に最速164キロをたたき出した現エンゼルスの大谷翔平は岩手の花巻東高出身で、高校時代も岩手大会で高校野球史上最速の160キロをマークした。同校で大谷の先輩となるのが、西武の最速158キロ左腕・菊池雄星だ。その他、仙台育英時代に甲子園で最速155キロをマークしたヤクルトの由規もいる。

このように『プロ野球と高校野球の史上最速投手』、『プロ野球史上最速左腕』、『甲子園史上最速投手』を立て続けに生み出している東北地方だが、今年も将来が楽しみな豪腕が現れた。

岩手・大船渡の2年生右腕、佐々木朗希(ろうき)だ。大船渡は1980年代に、春夏通じて2度の甲子園出場経験がある県立高校で、今夏は岩手大会3回戦で敗退している。しかし、初戦となった2回戦(対盛岡三)、背番号「20」の右腕が強烈すぎるインパクトを残した。

佐々木は、この試合を9回4安打11奪三振2失点で完投。驚くべきはその球速で、2回には自己最速となる154キロを2球続けて計測している。甲子園では、大阪桐蔭のエース柿木蓮が大会最速の151キロをマークした。しかし、今夏の高校生最速は岩手の地方大会2回戦で既に2年生投手によって計測されていたのだ。

期待してしまう大谷以来の「高校生160キロ」

夏の岩手大会以前に佐々木の名前は、コアな高校野球ファンに知れ渡っていた。1年夏で147キロをたたき出し、2年春は県大会で153キロ。身長189センチの大型投手で、投球フォームのリズム、ギリギリまで肩が開かない上半身の使い方は、カブスのダルビッシュ有に似ている。肩が上下したり、投げた後に体が一塁側に倒れこんだりすることもなく、無理な反動で投球フォームのパワーを稼ぐタイプではない。

2年生時の球速としては、ダルビッシュや大谷よりも速い。前述の通り、甲子園で150キロを計測した奥川や井上の他、西純矢(創志学園)、及川雅貴(横浜)も最速150キロ台をマークしている。しかし、大谷以来「高校生160キロ」を狙うとなると、佐々木が一番近いところにいるのは間違いない。

来年も、東北の豪腕が高校野球界を席捲することになるのか。まだ夏の甲子園が終わったばかりだが、冬のトレーニングを終え更に成長した佐々木の投球が楽しみだ。