大阪桐蔭の原動力
100回目を迎えた夏の甲子園でもっとも注目を集めているのは、春夏連覇を目指す大阪桐蔭(北大阪)だろう。二刀流として活躍する根尾昂、2年時からU-18日本代表に選ばれている藤原恭大、背番号「1」の柿木蓮と、高校野球ファンだけでなく、プロ野球のスカウトからも熱い視線を注がれている選手が勢揃いだ。その他にもU-18日本代表候補が中川卓也、小泉航平、山田健太と3人もおり、春夏連覇を成し遂げるのに充分な陣容を誇っている。
ここまで危なげない戦いぶりを見せている大阪桐蔭。その原動力となっているのは、やはり根尾、藤原、柿木の3選手だ。打率.571(7打数4安打)と打撃好調の根尾は、2回戦の沖学園戦でバックスクリーンにライナー性の本塁打を放っただけでなく、投手としても140キロを超えるストレートを軸とした投球で8回4失点にまとめ、投打に活躍した。
藤原も打率.444(9打数4安打)、1本塁打、4打点と結果を残しているが、数字以上に打撃内容にすごさがある。特に、2回戦で放った本塁打は逆方向への1発であり、プロ顔負けの打球を飛ばしていた。また、守備においても、捕手がボールをこぼしたためアウトにはできなかったものの、バックホームで強肩ぶりを披露し、甲子園を沸かせた。
エースの柿木は初戦の作新学院戦で9回1失点の好投を見せると、2回戦では9回の試合を締めくくる場面で登場。今大会最速となる151キロを記録し、観客の目を釘付けにした。
今秋ドラフトで藤原に初回入札はあるか
この3人の活躍ぶりにスポーツ紙などでは、早くも今秋のドラフトに向けてプロのスカウトコメントが連日報道され、紙面を賑わせている。
根尾と藤原はすでに1位指名確実とみられ、同じ高校から2人の選手が同時に1位指名されることになれば、1987年に当時PL学園の3年生だった立浪和義(中日)、橋本清(巨人)が指名されて以来、31年ぶりとなる(高校と大学・社会人が分離開催された2005-2007年を除く)。もし、柿木も合わせて3人の1位指名となると、ドラフト史上初だ(大学・社会人を含めると6例目)。
そんな中、特に注目したいのが藤原を初回の入札で1位指名する球団があるかどうかだ。走攻守どれをとってもハイレベルであり、甲子園のヒーローというスター性もある。外野手が高齢化している球団は喉から手が出るほど欲しい存在であることは間違いない。
しかし過去のドラフトを振り返ってみると、高卒外野手が1位指名される例は多くない。抽選に外れた後の外れ1位としては、2015年・オコエ瑠偉(関東一→楽天)、2010年・後藤駿太(前橋商→オリックス)などの例はあるが、初回の入札においては、分離ドラフトだった2007年の中田翔(大阪桐蔭→日本ハム)以来となる。分離ドラフトを除くと、これまで指名されたのは5人のみで、2000年以降は1度もなく1999年の田中一徳(PL学園→横浜)が最後となっている。
筒香嘉智(横浜→横浜DeNA)、大田泰示(東海大相模→巨人)とプロ入り後に外野手へ転向した選手は数多くいるが、ドラフト時は内野手としての指名だった。このように、外野手はその他のポジションからのコンバートも行いやすく、素材型である高卒外野手を1位で指名するのはリスクが高いと考えられている。
また、ドラフト1位しかも初回入札となると、即戦力での活躍が期待できる大卒・社会人選手がどうしても中心となる。高校生を指名する場合は、昨年の清宮幸太郎(早稲田実業→日本ハム)のようなチームの主軸として将来を嘱望されるスラッガーや将来のエース候補の投手に限定され、かなりハードルが高くなる。そのため、高卒の外野手では、優先順位的に中位から下位での指名が多くなってしまうのだ。
このように過去には例が少ない高卒外野手の初回入札だが、規格外とも言われる藤原に対しては、各球団どのような選択を行うのだろうか。甲子園での活躍とともに、今後の動向にも注目していきたい。
※数字は2018年8月13日終了時点