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2018センバツは「タイブレーク」が初導入!ルールと見どころを解説

2018 3/25 11:00青木スラッガー
高校野球
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2018センバツは「タイブレーク方式」が甲子園初導入。観戦のポイントは?

2018年のセンバツ甲子園から「タイブレーク方式」導入がスタートする。選手の健康に配慮して延長戦の決着をつけやすくするために、一定のイニングからあらかじめ走者を置いた状況をつくる制度だ。

これまで甲子園では、延長戦で決着がつかない場合、15回限りで試合を終了し、「引き分け再試合」を後日に開催してきた。今年からは春夏の甲子園大会のほか、地方大会などほぼすべての公式戦で一律にタイブレークが導入される(春の地区大会などではすでに導入済みだが、今後は下記ルールに統一される)。

タイブレーク突入は延長13回からで、走者状況は「無死一二塁」。打順は延長12回終了時から継続し、先頭打者の前の打順の選手が走者に入る。延長は無制限。決着がつくまで同形式のタイブレークを繰り返す。ただし決勝戦に限ってはタイブレークを採用せず、延長15回で引き分け再試合となる(再試合はタイブレーク方式)。

「走者を置いた状況からイニングがはじまる」という光景は、高校野球ファンにとって新鮮に映るに違いない。タイブレークの戦いで勝負を分けるポイントは、どこにあるのだろうか。

ポイント①:どの打順からタイブレーク回がスタートするか

タイブレークは得点の可能性を高め、1イニングで勝負を決しやすくする制度だ。そのためどういう状況で延長13回に突入するかによって、両チームに有利・不利が生じてくる。

最もわかりやすいのが打順の巡りだ。攻める側は、チームの好打者が並ぶ1~3番あたりの上位打線から攻撃することが理想となるだろう。下位打線に向かう6・7番あたりが先頭となると、やはり得点の期待値は下がってしまう。

もちろん、上位打線より下位打線の方が当たっているケースもある。延長12回までの各打者の打撃内容を踏まえたうえで、「延長13回を良い打順で始められるのは、どちらのチームか」という点に注目してみてほしい。

ポイント②:有利なのはどちら?「先攻」「後攻」それぞれのメリット

高校野球では、試合開始前に両チーム主将の「じゃんけん」で攻撃の順番を決める。ここで先攻後攻どちらを取るのかも、勝敗を左右するポイントとなる。タイブレークでは「後攻有利」というのが通説だ。点差(表の守りで何失点したか)に応じた攻め方ができるからである。

例えば、後攻チームが「点差なし・1点差」でタイブレーク回の攻撃を迎える場合、まずはバントなどで走者を三塁に送り、より確実に1点を取る状況を作ることがセオリーになる。表の守りで大量得点を許した場合は、先頭打者からヒッティングとなるケースが多いだろう。

いずれにせよ、後攻チームは「何点取らなければならないか」が明確なので、監督が作戦を立てやすく選手の目的意識もはっきりする。

対して先攻チームには、その目標が見えづらい。少し大げさに表現すると、後攻チームは「後出しじゃんけん」のような形で攻撃を行うことができるのだ。

ただ、先攻にメリットがないわけではない。守りに関しては、逆に先攻チームが「後出しじゃんけん」をできる。点差(表の攻撃で何得点したか)に応じた守備体制を敷けるということだ。表の攻撃で2得点以上できれば、走者2人を返してしまってもまだ負けではない。野手は引いて守ることができ、投手は打者との勝負に集中しやすくなる。

「点差なし・1点差」の場合は、思い切ったバントシフトや前進守備を敷くことができる。一概に「後攻有利」とも言い切れず、先攻後攻どちらが有利かはチームの特性によって変わってくるだろう。守備に自信があるチームなら、守りでプレッシャーをかけられる先攻の方が有利に戦えるかもしれない。

ポイント③:「一芸」に秀でたベンチメンバーの存在が重要に

上述した打順の巡りや先攻後攻などの前提条件をもとに、監督はさまざまな作戦を考える。「ベンチメンバー投入」も策のひとつだ。

一球一球が勝敗に直結するタイブレークでは、スペシャリストの存在が相手にとって脅威となる。代打として打力のある選手はもちろん、「バント職人」「代走屋」「守備職人」といった、一芸に秀でたベンチメンバーが途中出場で脚光を浴びる場面が増えてくるかもしれない。

控え投手に関しても、いろいろなタイプが揃っていると強い。サヨナラのピンチでの無死・一死三塁など、打球を前に飛ばされたくない場面では、球威があったり強力な決め球を持っていたりする奪三振能力が高い投手が有効だ。
相手が動いてきそうなときには、フィールディングや牽制に長けた投手をワンポイント投入する作戦も考えられる。

こういったベンチの「切り札」を監督が使いこなせるかどうかという点も、タイブレークの見どころになるだろう。観戦する側もいろいろと考えさせられることが増えそうだ。果たして、これから甲子園にどんなタイブレークのドラマが待っているだろうか。