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2017年甲子園まとめその2 投手は複数の時代?下級生の活躍も注目

2017 9/13 14:03Mimu
高校野球,ピッチャー
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投手は2枚以上が当たり前?今後は継投策が主流に

ホームランの多さほどではないが、投手起用の変化も印象的な大会であった。今年の大会は、継投で勝ち上がるチームが増えてきたのだ。以前は「もっとも良い投手=エース=背番号1」というイメージがあったが、今ではそうではない。同じくらいに力を持った2人以上の投手を育て、負担を分散しながら勝ち上がっていくというのが主流になってきた。

このスタイル自体は以前からあったものだ。熊本代表の秀岳館などはその典型だろう。田浦文丸選手、川端健斗選手という、プロ注目レベルのサウスポーを2人も擁している。昨年はこの2人に加えて有村大誠選手、中井雄亮選手など、さまざまな投手を使い分けて春夏連続のベスト4。2人体制となった今年の春も、ベスト4にまで勝ち上がってきた(今大会は広陵高校に敗れて2回戦敗退)。

2人の好投手を擁して優勝をはたした花咲徳栄

今大会で優勝した花咲徳栄高校も、背番号1を着けた清水達也選手、背番号10を着けた綱脇慧選手の2人の継投で勝ち上がってきた。清水選手は最速150km/hのストレートが武器の本格派右腕、綱脇選手はキレのあるスライダーが武器の右腕だ。このタイプの違う2人の投手が継投し、見事に甲子園の頂点に立ったのだ。

だが、継投策で勝ち上がってきたのは広陵高校も同じだ。エースの平元銀次郎選手は、中村選手と同じくU-18ワールドカップの一時候補選手にも名を連ねたサウスポー。彼がチームの中心投手なのは間違いないが、安定したコントロールを持つ山本雅也選手、2年生右腕の森悠祐選手も最速147㎞/hと力がある。
この大会では平元選手が本調子ではなかったそうなのだが、それでも決勝戦まで勝ち上がってくることができたのは、この2投手のおかげだろう。

継投のタイミングで試合の流れが全く変わってしまうことも

継投策で勝ち上がるというのは、言葉でいうほど簡単なものではない。投手交代を機に、一気に流れが変わってしまうことだってある。1回戦の中京大中京ー広陵の1戦を振り返ってみよう。
先制したのは中京大中京だった。3回裏、広陵の平元投手から1番・伊藤康祐選手のホームランとエラーで2点を先制。一方で、背番号10を着けた中京大中京の先発サウスポー・磯村峻平投手が広陵打線を5回まで0点に抑え、中京大中京のペースで試合は中盤へと向かった。

しかし5回、磯村投手が広陵の代打・佐藤勇治選手を三振に取ったところで、背番号1を着けた香村篤史選手へと交代した。ここまで完璧な内容だった磯村投手であったが、続く3番の中村選手には前の打席でセンター前ヒットを許している。さらに磯村投手の球威がやや落ちてきていたことや、広陵の4番・5番が右打者だったたこともあり、万全を期すために右の香村投手へと交代したのだろう。

継投から流れを失った中京大中京

だがこれが完全に裏目に出てしまう。香村投手は中村選手にライトへのソロホームランを浴びると、4番・加川大樹選手、5番・高田誠也選手にも連打を浴びてさらに1失点。同点に追いつかれてしまう。香村投手はここで降板。結局1死も取ることができずに、伊藤稜投手にマウンドを譲る。
しかし、伊藤投手も広陵の流れを止めることができず、6番・大橋昇輝にタイムリーを浴び、とうとう逆転されてしまった。その後も6回にも3点、7回には中村選手に2本目のホームランなどで4点を追加され10-2。試合はほぼ決してしまった。

中京大中京もなんとか粘りを見せ、8回に浦野海斗選手のタイムリーで1点、9回には3本のタイムリーで3点を返し10-6。なお2死満塁という絶好のチャンスを作ったのだが、残念ながら反撃はここまで。このように、投手交代が試合の流れを一気に変えてしまうことがある。今後は継投のタイミングの見極めがさらに重要になってくるだろう。

強豪チームで1年生の活躍が目立つ

最後に印象的だったのは、1年生の活躍が目立っていたということだ。大阪桐蔭は2年生中心のチームで春を制覇していたが、この大会では1年生の活躍も印象的であった。
特にそれが顕著だったのが横浜高校だろう。横浜高校にはベンチ入りメンバー18人の内、1年生が5人もいる。2年生は7人、3年生はたった6人だけ。もっといえば予選でベンチ入りした20人のメンバーは、1年生6人・2年生9人・3年生5人であった。下級生中心で、強豪ひしめく神奈川県を制してきたのだ。

1回戦の秀岳館戦では、なんと1番レフトで1年生の小泉龍之介選手が先発出場を果たす。予選では3試合に出場し、2回戦ではホームランを放つなど7打数で3安打、打点も6と結果を出していた。だがそれでも、甲子園でリードオフマンを任せるとは、大胆な起用だ。
とはいえ、神奈川予選でも試合ごとでかなり打順を入れ替えており、4番の増田珠選手以外はまったく固定されていなかった。例え1年生でも、状態が良ければ起用する。それが横浜高校の選手起用なのだろう。甲子園でも、その戦い方は変わらないようだ。

1年生投手の好投からチームに流れが

だがこの試合でもっとも印象的な活躍をした選手は、試合途中から登板したあの1年生投手だろう。試合は横浜先発の塩原陸選手が初回から秀岳館打線に捕まり3失点。3回にもエラーがらみで1点をとられ、さらに横浜打線も相手先発の川端投手を打ち崩せず、秀岳館ペースのまま試合が進んでいく。しかし5回表、横浜の1年生サウスポー・及川雅貴投手がマウンドへ上がると、試合の雰囲気が徐々に変わっていく。

及川投手は四球こそ1つ出してしまうものの、プロ注目の好打者である3番・木本凌雅選手をレフトフライに打ち取り、無失点でこの回を切り抜ける。するとその裏の攻撃、先頭の4番・増田選手がヒット。万波中正選手が四球つなぎ、さらにダブルスチール。これが見事に決まって2・3塁のチャンスを作ると、6番の福永奨選手がライトへ犠牲フライ。
ここまで全くつながらなかった横浜打線が、1年生投手の好投をきっかけに繋がりだしたのだ。福永選手は8回にもスリーランを放っている。残念ながら追いつくことはできなかったが、1年生投手の好投が流れを呼び込むシーンが印象的な試合であった。

両チームで1年生の活躍が印象的だった興南-智弁和歌山戦

さらにその次の興南ー智弁和歌山戦でも1年生の活躍が目立つ。興南高校は先発投手の宮城大弥選手が1年生という、こちらも大胆な起用で甲子園初戦に臨んだ。その宮城投手は智弁和歌山打線を3回まで無失点に抑える。打線も3回裏に一挙6点を取り、こちらの試合も1年生の好投で良い流れが引き寄せられたかに思われた。

だが智弁和歌山打線もずっと黙っているわけにはいかない。4回の裏、エラーと四球で満塁のチャンスを作ると、1年生ショートの8番・西川晋太郎選手がタイムリーヒット。するとこのヒットをきっかけに一気に打線が繋がり始める。9番・平田龍輝選手もタイムリーで2点目。投手交代後に3番・林晃汰選手がツーランを放ち4点目。これで2点差にまで詰め寄ると、さらに四球から7番・冨田泰生選手にもツーランが飛び出し、一気に同点に追いついた。

試合はその後、智弁和歌山が4番・蔵野真隆選手のタイムリーで勝ち越し、さらに林選手、富田選手が犠牲フライやタイムリーが駄目押しとなり、9-6で智弁和歌山が勝利する。1年生選手タイムリーが口火となった、6点差の大逆転であった。
1年生選手は経験では上級生に勝てなくても、どこかラッキーボーイ的な存在になることが多い。この2試合も、やはり彼らがノビノビとプレーを見せ、上級生がそれに刺激を受けた結果なのだろう。

以上がこの甲子園の総評となる。やはり印象的だったのは、ホームランの多さと継投策、そして1年生の活躍であった。今後、甲子園の戦い方はさらに難しくなっていくだろう。打撃力の高いチームが主流になっていくと、投手も1人では厳しくなっていく。
だが中京大中京-広陵の例があるように、継投のタイミングを1つ間違えるだけで、試合の流れががらりと変わってしまうこともある。その見極めは、非常に難しいのだ。だが、難しいからこそ、監督の腕の見せ所でもある。今後の甲子園では、こういったポイントにも今まで以上に注目していきたい。

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