「スポーツ × AI × データ解析でスポーツの観方を変える」

最後まで分からない試合多数!2017年選抜大会総括

2017 6/28 09:44Mimu
ⒸShutterstock.com
このエントリーをはてなブックマークに追加

史上初となった大阪勢同士の決勝戦

2017年春の高校野球選抜大会は、史上初の大阪勢同士の決勝となった。この大会では本当に最後までわからない試合が多く、決勝戦も手に汗握る展開となった。今回は2017年春の選抜大会のなかから、特に印象的だった試合を紹介していこう。まずは、決勝戦の大阪桐蔭ー履正社高校戦から見ていく。

史上初の大阪勢同士の決勝戦。その幕開けは衝撃的だった。なんと1回の表、大阪桐蔭の藤原恭大選手が先頭打者本塁打を放ち、あっという間に1点を先制するのだ。ここまであまり当たっていなかった藤原選手だが、大舞台で最高の仕事をやってのけた。

さらに、その裏の履正社の攻撃をエース徳山選手が三者三振に切って取り、完璧な滑り出しを見せる。続く2回にも7番坂之下晴人選手がレフトスタンドにホームランを放ち2-0。さらに6回にはまたも藤原選手がホームランを放ち3-0。徐々に履正社を突き放した。

一方の履正社打線は5回までノーヒット。徳山選手に完璧に抑えられており、端から見れば大阪桐蔭が一方的に攻めているような雰囲気だった。しかし、イニングごとの内容を見ると、実は履正社の方もずっと攻め続けていたことがわかる。

大阪桐蔭のここまでの得点はすべてホームランであり、それ以外のイニングでは履正社のエース竹田祐選手が四球も出さず、持ち前の粘り強さで大阪桐蔭打線を抑えていた。攻撃でもヒットこそ出なかったものの、数多くの四球を奪い続け、徳山選手に少しずつダメージを与え続けていくのだ。

見事な同点劇 しかしそれ以上に見事だった代打ホームラン

そしていよいよ8回だ。この回は1番の石田龍史選手が内野安打で出塁し、2死1塁で3番の安田尚憲選手に回す。この日はここまで当たりのなかった安田選手だが、フルカウントから振り抜いた打球は、鋭く三遊間を抜けてレフト前へ。2死1・3塁として、4番の若林将平選手につなぐのだ。

若林選手はこの日2四球を選んでいたが、6回の打席でも2死1・3塁のチャンスに三振を喫していた。なんとかして雪辱を晴らしたいこの打席。1ボール1ストライクからの3球目。打球は再び三遊間へ。サードの山田選手が飛びつくも、その横を抜けていき、見事にレフト前タイムリー。1点を返し3-1とする。

さらに続く5番浜内選手(2年)の打球はレフトの頭上を襲うタイムリーツーベース。2塁の安田選手、1塁の若林選手が一気に生還し、3-3の同点に追いつくのだ。ここまでじわりじわりと相手にダメージを与え続けてきた履正社打線が、ついに相手投手をとらえた。

しかし、直後の9回表、大阪桐蔭の攻撃。先頭の坂ノ下選手がヒットで出塁し、送りバントで2塁に進める。すると徳山選手に代わり代打で出てきた西島選手が、なんとレフトスタンドに勝ち越しツーランホームラン。追いつかれた直後の見事な速攻。履正社の同点劇も見事だったが、それ以上に見事だった代打ホームランだった。結局これが決勝点となり、最後は根尾昂選手が締めて、見事2014年以来3年ぶりの優勝を果たした。

初戦から好カード多数

2017年選抜大会は初戦から見事な試合ばかりだった。特に初日の第1試合、至学館(愛知)ー呉(広島)の試合も、いきなり延長12回の熱戦になったのもそうなのだが、やはり最大の注目は履正社ー日大三に集まっていた。日大三のエース櫻井周斗選手のキレのあるスライダーを武器としており、今大会でも注目のサウスポーだった。試合は初回に日大三が2点を先制。

一方の履正社打線はクリーンナップが第1打席から完璧に封じ込められており、やはりこの試合も序盤は完全に日大三の流れだった。しかし、6回には1番の石田選手の逆転スリーラン。本当に履正社の選手たちの「ここ1番の集中力」は見事だ。日大三も8回に同点に追いつくが、9回には投手が力つきてしまい、履正社が2回戦へと駒を進める。

わずかなほころびから一気に逆転される怖さ

1回戦でいえば、早稲田実業ー明徳義塾戦も見所がたくさん詰まった試合だった。観衆の注目はもちろん早稲田実業の3番を打つ清宮幸太郎選手。第1打席でセンター前ヒットを放ち、球場を盛り上げる。

しかし、明徳義塾も負けてはいない。投手を中心とした堅い守りを随所で見せ、早稲田実業を2点に押さえ込んでいくのだ。打線も初回に3点、8回にも1点をとっており、4-2とリードしたまま9回を迎える。

だが9回の表、急に流れが変わってしまう。好投してきた明徳のエース北本佑斗選手が乱れてしまうのだ。先頭にいきなりツーベースを許すと、次の打者にも連打を浴びて1・3塁に。それでもなんとかサードゴロで1点と引き替えに1死を取り、次のバッターをキャッチャーフライに打ち取って2死までこじつける。そして、次のバッターをピッチャーゴロ。

これでゲームセットと思われた瞬間、なんと打球が手につかず、アウトを取ることができない。これで二死1・2塁。さらに続く3番の清宮選手、4番の野村大樹選手にも四球を与えてしまい、痛恨の同点押し出しに。そして続く10回にもタイムリーを浴びてしまい4ー5。9回までリードしていたのに、わずかなほころびから、一気に勝利が逃げてしまった試合だった。

史上初!引き分け再試合が2度

2回戦では、史上初の珍事が起こった。7日目の滋賀学園ー福岡大大濠、健代高崎ー福井工大福井の2試合が、延長15回で決着がつかず、引き分け再試合となったのだ。引き分け再試合なんて1大会で1試合あれば珍しい方なのだが、それが1大会で2試合も起こるのは史上初の出来事。しかもそれが同日に2試合続けて起きたのだから、記録にも記憶にも残る1日となった。再試合は中1日を開けて、9日目に行われた。

第1試合目の滋賀学園ー福岡大大濠、滋賀学園は1戦目で先発した宮城滝太選手に替わり、光本将吾選手が先発マウンドにたつ。一方の福岡大大濠は1試合目で15イニングを196球完投したエースの三浦銀二選手が再び先発登板となった。

試合は初回から点の取り合いとなる。滋賀学園が3番知念良智選手のタイムリーで1点を先制すると、福岡大大濠もその裏にすかさず5番稲本侑星選手の2点タイムリーツーベースを放ち、2-1と逆転。2回に滋賀学園が1点を返し同点とするも、再びその裏、福岡大大濠も1点を返して再び3-2と勝ち越し。5回にも滋賀学園が再び同点に追いつくのだが、やはりその裏に福岡大大濠の3番古賀悠斗選手がレフトスタンドに突き刺さるツーランホームランを放ち5-3に。

とられた直後に取り返し、滋賀学園の反撃の目をことごとく積んでいくのだ。そして結局三浦選手がこの試合も130球の熱投を見せ、福岡大大濠の勝利に終わった。

同じ組み合わせでも日が変われば展開も全く違う

そしてもう1つの再試合、健大高崎ー福井工大福井の試合も紹介しよう。1試合目では、福井工大福井が四球でつくったチャンスをしっかりとものにするという勝負強さを見せる一方、機動破壊でおなじみの健大高崎が5盗塁を決め、さらに9回裏にホームスチールで同点に追いつくという、両校の持ち味が十分に発揮された試合だった。

しかし、2試合目はうってかわって非常に豪快な試合となる。初回から健大高崎が5本のヒットを集中させて4点を奪うと、4回には山下航汰選手の満塁ホームランなどで6点を追加。10-0とリードを広げていくのだ。山下選手は1回戦の札幌第一戦でも満塁ホームランを放っており、史上2人目の1大会2満塁本塁打の記録となった。結局福井工大福井は9回に2点を返すものの、10-2で健大高崎が勝利となった。

流れを呼び込む好リリーフ しかし9回に魔物が

準決勝の報徳学園ー履正社も最後までわからない試合だった。近畿勢同士の戦いとなったこの試合だが、初回に履正社の安田選手がライトスタンドにホームランを放ち、さらに2回にも1点を追加。待ちに待った主砲の1発が飛び出し、ペースは完全に履正社かと思われた。

しかし、3回途中からマウンドに上がった池上颯選手が好リリーフを見せると、流れは徐々に報徳学園に傾いていく。報徳は2回、3回に1点ずつを返し、2-2の同点に追いつくと、6回裏に長尾亮弥選手がタイムリーヒット。ついに3-2として、報徳学園が逆転するのだ。その後も池上選手が粘りのピッチングを見せ、1点リードのまま9回の表へ――。

しかし、そう簡単に終わらない。まず履正社の代打・白滝恵汰選手がライト頭上を襲うツーベースを放って出塁すると、その後は犠打と四球で1死1・3塁の大チャンスを作る。ここで2番の溝辺選手はセーフティスクイズ。これが見事に決まって3-3の同点。さらに池上選手のフィルダースチョイスも誘い、なおも1死1・2塁とチャンスが続く。ここで池上選手はサードへと戻り、マウンドには津高弘樹選手が上がる。

最後の最後で痛恨のエラー

しかし、津高選手も踏ん張りきれない。3番の安田選手は四球で歩かせて満塁とすると、ここで4番の若林選手がライトへ勝ち越しのタイムリー。これで3-4となり、土壇場での逆転を許してしまうのだ。だが、まだ1点差。この点差であれば9回の裏の攻撃に望みはつなげるはず。

1死満塁、ここでゲッツーがとれればまだわからない。そして、続く浜内選手は注文通りのショートゴロ。前進守備のショートがつかみ、ホームへ送球。そしてキャッチャーからファーストへ。これでホームゲッツーの完成のはずだった。

なんとここでキャッチャーの篠原翔太選手がファーストへ悪送球をしてしまい、さらにランナー2人が帰ってきてしまったのだ。これで3-6。その裏に報徳学園が1点を返して4-6としただけに、もったいないプレーとなってしまった。それと同時に、やはり履正社の「ここ1番での集中力」が際立った試合だった。

夏の大会でリベンジなるか?

2017年の春の選抜大会は、最後までわからない野球の魅力がたっぷりと詰まった試合ばかりだった。優勝は大阪桐蔭だったが、高校生とは思えないほどの集中力・勝負強さを見せた履正社も見事だった。2017年の夏の甲子園は大阪の代表が1校しかないので、2校ともが甲子園に来られないのが残念なところだ。

一方で、力を出し切れずに負けてしまった選手たちもたくさんいることだろう。そんな彼らにも、ぜひ夏の大会でリベンジしてほしいものだ。