キャプテンを怪我で欠くもチームワークで優勝した大阪桐蔭
史上初の大阪勢同士の対決で幕を閉じた2017年の選抜大会。2回戦では滋賀学園ー福岡大大濠、健大高崎ー福井工大福井と2試合連続で再試合になったりと、珍しい出来事もいろいろと見られた。今回はそんな選抜大会の中から、印象的な活躍をした選手たちを、野手に絞って紹介していこう。
まず優勝した大阪桐蔭は本当に様々な選手たちが活躍した。正捕手の岩本久重選手をケガで欠く中、キャプテンの福井章吾選手(正ポジションはファースト)がエースの徳山壮磨選手とバッテリーを組み、チームを牽引する姿は印象的だった。4番の山本ダンテ武蔵選手、2塁手の坂之下晴人選手も随所で良いプレーを見せていた。
チームが緊急事態の中でもしっかりと自分たちの力を発揮することができる、本当に頼りになる選手たちだ。
大阪桐蔭優勝の原動力となったのは2年生の野手たち
しかし、大阪桐蔭の優勝は、やはり2年生選手たちの活躍なしには語れない。その中でも特に話題になったのが根尾昂(あきら)選手だ。背番号7をつけながら、守ってはショート、センターで安定した守備。そして時にはマウンドに上がり、140km後半のストレートをバンバン投げ込んだ。内野・外野・投手の「三刀流」として、大きな話題になった。甲子園では主に3番や5番といったクリーンナップで出場、決勝ではスタメンから外れたが、代打で出てきたときは大歓声に包まれた。
だが同じく2年生ながらそれ以上に打線を引っ張っていった選手がいる。背番号13、山田健太選手だ。初戦の宇部鴻城戦ではツーラン1本を含む2安打3打点の活躍を見せると、続く静岡戦では5打数4安打2打点の大暴れ。
結局5試合すべてでマルチ安打、うち4試合でも打点を稼ぎ、最終的な成績は.571(21-12) 1本塁打、8打点という大活躍を見せた。さらに決勝で2ホーマーだった1番の藤原恭大(きょうた)選手や、2番のつなぎ役だった宮崎仁斗(じんと)選手、主に3番を努めて全試合でヒットを放った中川卓也選手、そしてサウスポー投手の横川凱(かい)選手も2年生。この世代は黄金世代とも呼ばれており、来年以降も非常に楽しみだ。
ここ1番での勝負強さを見せた履正社の野手陣
準優勝だった履正社だが、その注目選手といえば、やはりプロ注目のスラッガーといわれる安田尚憲選手だ。準決勝の報徳学園戦で見せたライトスタンドへのホームランは、高校通算50本目。1回戦の日大三戦では、第1打席から3打席目まで連続三振をしていたが、第5打席目で見事に逆方向への力強い2塁打を放ち、パワーアップした打棒を披露してくれた。準々決勝の盛岡大付戦ではタイムリーを含む3安打を放つと、準決勝の報徳学園戦では1本塁打を含む2安打3四球。全打席出塁でチームに貢献した。
履正社の野手陣は、安田選手以外も素晴らしい成績を残した。特に全員にいえるのが、ここぞの場面での集中力。1番の石田龍史選手は、初戦の日大三高戦で一時は逆転となるスリーランを放ったし、4番の若林将平選手も、2回戦の呉戦では唯一のタイムリーを放ち1-0の勝利に貢献。準決勝の報徳学園戦、決勝の大阪桐蔭戦でも、流れを変えるタイムリーを放った。
また、決勝の大阪桐蔭戦で同点タイムリーを放ち、大会通算でも打率5割を記録した浜内太陽選手、9番ながら勝負強さを見せた西山虎太郎選手の2年生コンビの活躍も印象的だった。5試合中2試合で逆転勝利を収めているというところが、彼らの集中力を物語っているのではないだろうか。
背番号5のリリーフエースが流れを呼び込むピッチング
続いてはベスト4の成績を収めた報徳学園から、池上颯選手を紹介しよう。背番号は5で、普段はサードを守り、堅守でチームを支える。打っては6番を任されており、今大会で残した打率は.471。勝負強いバッティングを見せていた。しかし、彼の本領は試合後半のマウンド上で発揮される。エースの西垣雅矢選手が中盤まで相手打線を抑えると、後半からは池上選手にスイッチ。これが報徳学園の必勝法だった。
特に準決勝の履正社戦では、1点ビハインドだった3回途中、満塁のピンチの場面で登板すると、5番の浜内選手を見事な見逃し三振に打ち取る。これで流れが変わったのか、その直後には同点に、そして6回には勝ち越しに成功。その後も9回まで履正社打線を封じ込むピッチングを見せた。
そして、2年生ながらもう1人の注目が、その池上選手と三遊間を組んだ小園海斗選手だ。1年生の春からレギュラーを任されている非常に能力の高い選手で、この大会では打率.500をマーク。履正社戦では4安打もマークした。守備でも非常に柔らかいグラブさばきを見せ、センスの高さがうかがえる。
ちなみに小園選手と、同じく2年生で同校の4番を努めた神頭勇介選手、そして大阪桐蔭の藤原選手は、中学時代は同じ枚方ボーイズに所属していた。この世代は本当に楽しみな選手が多い。
機動破壊は健在!さらに1発攻勢も見せた健大高崎
続いては健大高崎の選手たちを紹介していこう。大会はベスト8となった健大高崎だが、やはりその機動破壊は健在だ。準々決勝までの4試合(引き分け再試合を含む)で13盗塁を記録。特に福井工大福井戦では、1点ビハインドの9回ツーアウトから、なんとホームスチールで1点を追いつくという、かなり高度な野球を展開していた。
ツーアウトでランナーは2・3塁という状況。ここで2塁ランナーの安里樹羅(あさとじゅら)選手がリードを大きくとり、わざと投手の牽制を誘うと、その隙を狙って3塁ランナーの小野寺大輝選手が、一気にホームへと帰ってきたのだ。そしてこの隙に安里選手も3塁へ。ずっと練習していたプレーだそうだが、この土壇場の場面で決めてしまうところに、健大高崎野球の恐ろしさが垣間見える。
この盗塁を含めて小野寺選手はチーム最多の4盗塁を記録。同じく安里選手も4盗塁を記録した。キャプテンであり、安里選手と二遊間を組む湯浅大選手が大会前のケガで試合に出られなかったのだが、それでも選手一丸となってベスト8まで勝ち進んだ。
さらに、今年の健代高崎は豪快なバッティングも見られた。4番を打つ2年生の山下航汰選手だ。1回戦の札幌第一戦では7回に満塁ホームランを放つと、福井工大福井との再試合でも、4回に満塁ホームランを放ち、なんと1大会で2本の満塁弾を放ったのだ。
これは15年の選抜で敦賀気比の松本哲幣選手が記録して以来、史上2人目となる。11打点は今大会の打点王。機動破壊に加えて、勝負強い4番バッター。ここにキャプテンまで戻ってくるとなれば、夏の大会でも優勝候補になりうるチームだ。
2年生野手の活躍が印象的だった選抜大会
2017年選抜大会は2年生の活躍が非常に印象的な大会だった。今回紹介した大阪桐蔭の根尾選手、山田選手、履正社の浜内選手、西山選手、報徳学園の小園選手、健大高崎の山下選手、みんな2年生だ。他には、早稲田実業で清宮幸太郎選手の後ろを打っていた野村大樹選手や、9番ながら4打点を稼いだ野田優人選手も2年生。
名門校でレギュラーを獲得するだけでも大変なのに、それを2年生の時から任されるなんて、相当なポテンシャルを持っているのだろう。