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【高校野球】春のセンバツに登場する「21世紀枠」を徹底解説

2017 3/29 18:30sachi
野球
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Photo by mTaira/shutterstock.com

2017年の選抜高校野球が3月19日に甲子園球場で開幕した。 この大会には「21世紀枠」として3校の出場が決定しているが、そもそも21世紀枠とはどんな基準で決められるのだろうか。 その歴史とともに解説する。

21世紀のスタート年から採用された出場枠

21世紀枠とは、選抜高校野球大会に設けられている出場枠だ。各都道府県から代表校が出場する全国選手権(夏の甲子園)とは異なり、春の選抜は各地方の代表校と明治神宮大会枠、そして21世紀枠で出場校が占められる。
2001年の第73回春の選抜から取り入れられたことから「21世紀枠」という名称になっている。部員数の不足、グラウンドの確保を含めた施設・環境面の不遇といった困難を強いられている学校や、ボランティアなどの地域活動に貢献し、他の模範となるような学校が対象となる出場枠だ。
ただし、これらの条件を満たしているだけでは出場は適わない。全国の舞台に立つ以上は野球部としてそれなりの実績が伴うことも必須となる。規定としては、秋の都道府県大会で128校以上が参加する場合はベスト32以上、それ以外はベスト16以上の成績を残していることとなっている。

複雑で困難を伴う21世紀枠の選出方法

恵まれない環境下、または地域貢献が模範的であり、かつ努力を重ね都道府県大会で一定の成績を残したチームに与えられる21世紀枠。これを最終的に選出するのは全国高校野球連盟(通称:高野連)だ。
現行の選出方法は、まず各都道府県の高校野球連盟が地元から1校を選出して高野連に推薦する。集まった47校から各地方の代表校として9校に絞り、最終的に出場校が選出されるという仕組みだ。時には地域特性や世相なども絡み、複雑で困難な選出作業が行われる。
春の選抜で初めて21世紀枠が採用された第73回大会は、福島県の安積高と沖縄県の宜野座高が選ばれた。以降も21世紀枠は2校が選出されてきたが、2008年の第80回大会から3校に増えて現在に至る。なお、第85回大会は記念大会のため21世紀枠は4校とされた。

21世紀枠で出場したチームは、甲子園で好成績を残せるのか?

さまざまな角度から熟考され選考される21世紀枠の出場校だが、甲子園での成績は実際のところどうなのだろうか。
第73回大会で、安積は金沢との初戦で1-5と敗れた。しかし、宜野座は岐阜第一、桐光学園、浪速に勝利してベスト4まで進出している。翌年の鵡川は初戦に勝利、2回戦で名門の広島商と接戦の末、0-1と惜敗。松江北は初戦敗退だったが、ベスト4まで進出した福井商に3-5と好勝負を演じた。
その他で好成績を挙げたチームは第80回の華陵(ベスト16)と81回の利府(ベスト4)があり、それ以外は1回戦か2回戦で敗退している。しかしベスト4以上に進出した学校と熱戦を繰り広げたケースも決して少なくはない。

部員10人で甲子園に向かう不来方、ユニークな練習が話題の多治見

2017年春の選抜に出場する21世紀枠の3校。それぞれ個性のあるチームが揃った。
岩手県の不来方高は、部員わずか10名という不利な状況ながら、秋の県大会で準優勝した精鋭たちのチームだ。人数不足により実戦形式の練習は不可能、そのため、打撃練習に大半を費やし「打ち勝つ野球」を貫いている。
岐阜県の多治見高は、グラウンドが共用のため環境面で不利を抱えながら、バドミントンのシャトルやテニスボールを使った練習に取り組んだ。その成果は秋の岐阜県大会優勝という実績につながっている。また、地元の小学生を対象とした野球教室を開催するなど、地域にも貢献している。

中村は「勝ちにいける」21世紀枠の出場校

昨秋の高知県大会で優勝した中村高は、1977年の選抜で4強に進出、部員が12名しかいないことから「二十四の瞳」と話題になった。その大会から40年振り2度目となる甲子園だが、今大会も実力あるチームとなっている。
地域は過疎化が進んでおり、練習試合に往復5時間以上かかるなど環境面に不利がある。しかしそれを跳ね除け、高知県大会決勝ではセンバツで優勝候補にも挙がる明徳義塾に2-0の完封勝利を飾った。
1点差、2点差という接戦に強く、ロースコアの試合にも慣れている点が甲子園で有利に働く可能性がある。エース投手の北原野空選手が上り調子で大会を迎えられれば、勝ちにいく試合を展開できるポテンシャルを秘めている。

まとめ

春の選抜に特有の出場枠である21世紀枠。 選出されてきたチームは、不利な条件を跳ね除けてきたメンタルの強さと団結力があり、高校野球らしい粘りの試合運びを展開できるのが強みだ。 これからも21世紀枠が続く限り、推薦から選出まで注意深く見届けたい。