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絶対的な捕手が不在 侍ジャパンの正捕手はどうなる?

2019 2/12 15:00浜田哲男
稲葉篤紀監督,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

何を重視して捕手を選出するかがポイント

今秋にプレミア12、来年には東京五輪、再来年にはワールド・ベースボール・クラシック(WBC)と、侍ジャパンにとって大きな国際大会が続く。3月にはメキシコとの強化試合を控え、稲葉篤紀監督が各ポジションにどのようなメンバーを選出するのか注目が集まる。今回は捕手をクローズアップしてみる。

順当にいけば、昨秋の日米野球に出場したソフトバンクの甲斐拓也、西武の森友哉、広島の會澤翼らが有力候補になるだろう。しかし、誰が選ばれるかということよりも、稲葉監督が何を重視して捕手を選ぶか?ということがポイントになる。

それは、日本プロ野球史上屈指の捕手とも称される古田敦也や、メジャーでも活躍した城島健司らのように、打つも守るも良し、さらに優れたリーダーシップをも兼ね備えた捕手が不在だからだ。

打てる捕手が打線に厚みとバリエーションをもたらす

過去の国際大会を振り返ると、捕手の打撃が好調だった大会では好成績を残している。第1回WBCでは、当時ロッテの里崎智也が22打数9安打、打率.409と大当たり。全8試合に出場して優勝に大きく貢献した。

第2回WBCでは、当時マリナーズの城島が30打数10安打、打率.333と活躍。第1ラウンドの韓国戦では、左翼席に弾丸ライナーで突き刺す本塁打も放った。4番に座る試合もあったように、城島は攻守でチームを支えながら、侍ジャパンの連覇に貢献した。そして第4回WBCでは、打撃では期待値の低かった巨人の小林誠司が予想外の活躍。勝負所で適時打や本塁打を放ち、チームを勢いづけた。

捕手が打てば必然的に打線に厚みができる上、オーダーのバリエーションも増え、チームも勢いづく。そう考えると、打てる捕手を正捕手に据えるという選択肢があってもいいはずだ。

2018年12球団捕手打撃成績(打率順)

ⒸSPAIA


打撃だけを見れば、會澤と森が頭一つ抜けている。會澤は規定打席に達していないものの、打率3割超、出塁率4割超の好成績をおさめた。

森は16本塁打を放ち、80打点を挙げる活躍を見せたが、配球の面ではまだまだ厳しい指摘も多い。西武は強力打線でリーグ優勝を掴んだが、チーム防御率はリーグ最下位の4.24。その責任は森も十分に感じているだろう。

守りながら攻める甲斐キャノン

昨年の日本シリーズと日米野球で、その名を日本全国だけでなく世界へ轟かせたのが、甲斐の強肩、通称「甲斐キャノン」だ。特に日本シリーズでは、広島の盗塁を6連続で阻止。センセーショナルな活躍を見せ、同シリーズのMVPを獲得した。その強肩が相手に与えるプレッシャーは計り知れない。打撃ではまだまだ物足りなさは否めないが、それを補って余りある存在感と貢献度だった。

盗塁阻止率ランキング

ⒸSPAIA


日本がプエルトリコに惜敗した第3回WBCの準決勝。プエルトリコで捕手を務めたのは、長きにわたってメジャーNO.1捕手に君臨するカージナルスのモリーナだった。

モリーナは当時、侍ジャパンの打撃練習を見て「打つまでの準備に時間をかけている印象をもった」という。そこで、投手陣にテンポよく投げさせ、捕球後に素早く投手に返球した。その結果、配球をじっくりと読みながらゆったりと次の球を待つことが多い日本の各打者は、考える時間を与えてもらえずリズムを崩されることに。時折走者を出しても、自慢の機動力はモリーナの強肩に封じられた。

走者にプレッシャーを与え、塁上に釘付けにすることのできる甲斐キャノンは「守りながらも攻める」が可能なため、打撃以上の価値をもたらす。

甲斐に求められるのは守備率の向上

甲斐の盗塁阻止率は、両リーグダントツの.447。その一方で、守備率(守備機会〈刺殺・補殺・失策数の総計〉に対して失策しなかった率)は.991と精彩を欠いた。甲斐自身も、ブロッキングの向上や送球ミスの改善を課題に挙げている。

守備率ランキング

ⒸSPAIA


守備率が高いほど、守備機会に対して失策する確率が低いことを示しており、甲斐は守備率で他チームのレギュラー捕手よりも劣っている。打撃の向上とともに守備率の向上も喫緊の課題と言えるだろう。

課題をクリアした先に正捕手の座がある

打撃を重視するのであれば、會澤か森。相手に脅威を与えるという観点からなら甲斐が有力候補となるだろうが、それぞれに課題もある。

昨シーズンは132試合に出場し、ゴールデングラブ賞を獲得した阪神の梅野隆太郎も成長を見せており、強肩も魅力。また、2017年のアジアチャンピオンシップでもマスクをかぶり国際大会も経験したロッテの田村龍弘は、キャッチング技術に定評がある。このような、多くの選手に正捕手のチャンスがあるのだ。

今シーズン、各チームの捕手がそれぞれの課題をクリアし、いかなる成長を見せてくれるか期待したい。