モリーナ、リアルミュートら捕手勢が活躍
2014年以来、4年ぶりの開催となった日米野球。侍ジャパンは柳田悠岐(ソフトバンク)のサヨナラ本塁打や秋山翔吾(西武)の安打製造機ぶりを見せる活躍で、5勝1敗とMLBオールスターチームに大きく勝ち越した。
一方のMLBオールスターチームもワシントン・ナショナルズのフアン・ソトが2度も東京ドームの天井に直撃する打球を放つなど、随所に驚くべきプレーを見せていた。
その中でも目立ったのは「打てる捕手」の存在だ。今回のMLBオールスターチームではセントルイス・カージナルスのヤディエル・モリーナ、マイアミ・マーリンズのJ.T.リアルミュート、テキサス・レンジャーズFAのロビンソン・チリーノスの3人が来日している。
そのなかで3戦目までにリアルミュートは2本、モリーナも1本とそれぞれ本塁打を放っており、その凄さを見せてくれた。また両選手ともに捕手としてだけでなく、指名打者としても出場。限られたメンバーとはいえ、打撃力を買われていることがよくわかる。
もちろんそれだけではない。モリーナは守備でも魅せた。第3戦の4回裏、2死一、二塁の場面で一塁走者のリードが大きいと見るや、矢のような送球で刺したのである。
MLBでは打てる捕手が規定打席に到達
日米ともに捕手の規定打席到達者はどれくらいの割合で存在しているのだろうか。
今シーズン、MLB全30球団の中で規定打席に到達した捕手は6人だった。規定到達を果たした捕手の打撃成績を見ると、MLBは全員が2桁本塁打を記録。OPSもリアルミュートの.825を筆頭に5人が.700を超えている。
唯一、OPS.700を下回ったT.バーンハート(レッズ)も.699とほぼ.700と言っていい。今シーズンにおけるMLBの平均OPSは.728となっており、平均よりやや劣るが十分な打撃成績を残しているのである。ちなみにOPS.700をプロ野球であてはめると、大島洋平(中日/.697)や高橋周平(中日/.704)、銀次(楽天/.704)らに近い。
MLBでは負担の大きい捕手と言えど決して守備だけではなく、十分な打撃成績を残すことで規定打席に到達するほどの試合に出場しているのである。
一方のプロ野球における今シーズンの規定打席到達者を見ると、梅野隆太郎(阪神)、田村龍弘(ロッテ)、森友哉(西武)、近藤健介(日本ハム)と12球団中4人。しかし、近藤は捕手登録ではあるものの、今シーズン捕手としての出場はなかった。
森は指名打者としての起用も多く、捕手としての出場は59.5%。実質的に正捕手として、シーズンを全うしたと言えるのは梅野と田村の2人のみだ。
田村の打撃成績を見ると少し物足りない。正捕手としてシーズンを全うした「打てる捕手」と呼んでいいのは、梅野ただ1人と言っていいだろう。
森、會澤ら打てる捕手が台頭してきているNPB
打てる捕手が減少した理由のひとつとして、打撃が優秀な捕手は守備での負担を軽減すべく、コンバートすることが挙げられる。古くは山崎武司(元中日ほか)や和田一浩(元中日ほか)、小笠原道大(元中日ほか)らがそうだ。その他には銀次(楽天)、福田永将(中日)もコンバート後にレギュラーを獲得している。
しかし、規定打席(443打席)に到達していないものの、捕手として打撃で結果を残している選手はいる。會澤翼(広島)だ。今シーズンの會澤はキャリアハイとなる377打席に立つも、規定打席には66打席届かず。その中で打率.305、13本塁打、42打点、OPS.893の成績を残している。ここ数年、石原慶幸との併用が続いているが、来シーズンこそ確固たる正捕手の座をつかみたいところだ。
これらの数字を見ると、森や會澤が「打てる捕手」であることは間違いないが、捕手としての出場数が少なく、確固たる正捕手と呼ぶにはもう少し出場数を伸ばしてほしい。
規定打席到達者が少ないことからもわかるとおり、近年は守備型、打撃型、そして投手との相性など様々な理由はあるが、捕手併用制を取り入れるチームが多かった。だが、森や會澤が台頭することで「打てる捕手」の存在が見直され、打撃のいい捕手をコンバートせずに正捕手として固定するチームが増えることになるかもしれない。
※数字は2018年シーズン終了時点