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日米で加速する防球ネット拡大の動き

2018 4/3 12:43mono
横浜スタジアム 防球ネット
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Ⓒmono

横浜スタジアム・札幌ドームでネット拡大

まず始めに日本のプロ野球に目を向けてみると、現在はほとんどの球場で一塁・三塁の両軍ベンチ付近までネットは設置されている。安全性の確保をするために、外野まで範囲を拡大している球場もあるほどだ。

そして、新たに今シーズンから横浜スタジアム、札幌ドームで防球ネットが増設されることとなった。これは近年、ファウルボールや折れたバットが、スタンドに飛び込み事故があったことを受けてのものだ。これで両球場ともに安全度は上がり、危険度は減少するだろう。

とくに札幌ドームは2010年に起きた試合観戦中のファウルボールによる失明事故が起きた現場でもある。その失明した観客が球団、札幌ドーム、札幌市に対して訴訟を起こしており『ファウルボール訴訟』と呼ばれていた。(この一件はすでに2016年に札幌高裁から日本ハムへ約3357万円の支払い命令が出ている)こういった背景もあり球団・球場ともに改善に取り組んできた。

楽天の本拠地であるクリネックススタジアム宮城(現楽天生命パーク)においても、同様の事故が起きていた。この一件も事故にあった観客が訴訟を起こしているが、こちらは敗訴している。

このネット設置により危険度は減少するものの、スポーツ観戦の醍醐味でもある臨場感が同時に失われてしまう。そのために、少なからずファンから不満はあがっている。ネットの編み目、支える柱などでグラウンドが見えにくい座席があるのは事実だが、子供やお年寄りの方でも安全に楽しめる球場にするためには、致し方ないことだろう。今後は事故がない安全性の高い球場で、いかに臨場感を失わずに観戦してもらえるかを打ち出していくことが、鍵となるかもしれない。

メジャーも全30球団がネットを増設

一方のメジャーリーグはどのような状況なのだろうか。今までは、バックネット裏のみネットが設置されているのが一般的だった。しかし、2015年オフからメジャーリーグ機構が両軍のベンチ付近までネット拡大の勧告を開始。ガイドラインでは強制でなかったものの、約2年間で拡大することを全30球団が合意した。今シーズン開幕からは全球場においてネットの範囲が拡大している。

日本と同様にメジャーリーグでもファールボールによる事故は起きている。昨シーズンは2歳の子供にファウルボールが直撃。命に別状はなかったものの、顔面骨折の大けがを負った。この事故はファン、選手ともに大きな衝撃を与え各球団・球場がネット増設の動きを加速させることとなったのだ。

アメリカでも日本と同様に視認性が悪くなるという不満はあがっている。しかし、MLB.comによると今シーズンからネットを増設するマーリンズ・パークは、結び目がないファイバーを採用しバックネット裏よりも30%細くなっており、視認性が高くフィールドにも溶け込むデザインだという。

現時点で、日本では採用されていないものの、今後はこういった視認性の高いネットが主流となるのかもしれない。

日米ともに加速している安全性の向上。球場のボールパーク化を目指す上で家族連れを呼び込むためには、より一層力を入れていかねばならない部分でもある。しかし、球場ならではの臨場感を打ち消してしまっては意味が無い。安全性を確保した上で臨場感を味わえる、そんな球場になることを願いたい。