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勝利につながるビッグプレー!U-18ワールドカップ名場面を振り返る

2017 10/13 10:05Mimu
野球、観戦
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緊迫した投手戦となった2015年大会アメリカ戦

2015年大会のアメリカ戦を紹介したい。アメリカといえば、2017年大会でも苦しめられた相手であるが、この年の大会でも1次ラウンドと優勝決定戦の2度当たっている。だが1次ラウンドの試合では、日本が優位に試合を運んだ。その立役者となったのが、オコエ瑠偉選手(関東一高→楽天)と佐藤世那選手(仙台育英→オリックス)である。

試合は序盤から投手戦となった。日本は佐藤世那選手が好調で、ストレートとフォークを武器に、アメリカ打線を0に抑えていく。だが日本打線も相手先発のブラクストン・ギャレット選手を打ち崩すことができず、序盤は0-0のまま試合が動かない時間が続いた。

均衡が破れた4回

だが4回、アメリカ打線が佐藤世那選手をとらえはじめる。ヒットに盗塁まで絡められ、揺さぶりをかけられると、さらに四球で1死満塁の大ピンチに陥ってしまう。苦しくなった日本側であったが、ここで2番のブレーク・ラサ―フォード選手は注文通りのセカンドゴロに打ち取る。
内野前進からのやや難しい体勢であったが、セカンド津田翔樹選手(浦和学院)が上手く捕球し、ショート平沢大河選手(仙台育英→ロッテ)へ送球。そのままファースト伊藤寛士選手(中京大中京)にわたり、ゲッツーを完成させた。
見事にセカンドゴロを打たせた佐藤世那選手、そしてそれに応えた内野陣。このプレーから一気に流れが日本へと傾く。

その裏の日本の攻撃であった。先頭の伊藤寛士選手がライト前にうまく運ぶと、送りバントで1死2塁とする。そこに先ほど好プレーの津田選手がライトへタイムリーを放ち、あっという間に待望の先制点が日本へ入った。
だがその直後、津田選手が牽制球でアウトになってしまう。国際試合はボークの基準が日本と違うため、非常に難しいところであったが、これでランナーがいなくなってしまった。

神がかり的な走塁で大きな3点目を奪い取る

少しずつ嫌な雰囲気が漂い始める中、9番・船曳海選手(天理高校)選手は四球で出塁。さらに俊足を生かして盗塁まで決めてしまった。先ほど津田選手が牽制で刺されたばかりなのに、ここでスタートを切るとは、本当に勇敢な選手だ。さらに1番・オコエ選手の打球は高いバウンドとなり、これが1塁への内野安打に。さらに守備が乱れている間に船曳選手が2塁から一気に生還し、2点目を奪った。
このプレーには日本ベンチも大盛り上がり、さっきまで不穏な空気だったのが嘘のようである。だがこの回はこれで終わらない。続く篠原涼選手(敦賀気比)がストレートの四球で1・2塁にチャンスを広げると、3番・平沢大河選手の打席で奇跡的なプレーが起こる。

相手投手の牽制によって、2塁ランナーのオコエ選手が挟まれるのだが、ここで2塁に入った選手への送球がそれてしまい、ボールはライトへ転がる。さらにカバーしたライトの選手がファンブルしたのを見るや否や、オコエ選手が快足を飛ばして一気にホームへ突入したのだ。
相手は急いでバックホームし、タイミング的にはアウトかと思われたが、オコエ選手はスライディングの体勢から相手のタッチを避け、さらに腕を目いっぱい伸ばしてホームベースをタッチした。この神がかり的な走塁で、大きな大きな3点目を奪った。

その後は佐藤世那選手がアメリカ打線を完璧に封じ、5安打完封勝利。彼のピッチングと、チーム全体の高い走塁意識。この2つが呼び込んだ勝利であった。

安樂智大が見せた圧倒的なピッチング(2013年大会)

2013年大会から、安樂智大(済美→楽天)のピッチングを紹介したい。第1ラウンド2戦目となるベネズエラ戦に先発すると、初回から三者連続三振を記録するなど、完璧な立ち上がりを見せた。その後も打線の援護に恵まれると、安樂選手のピッチングはますます凄みを見せていく。
ストレートはコースにズバッと決まり、スライダーは鋭く落ちる。ダイナミックなフォームから繰り出される力のあるボールは、ベネズエラ打撃陣のバットにかすりもしなかったのだ。中盤以降も全く疲れを見せず、7回には再び三者連続三振。結局9回を投げて2安打16奪三振と、完ぺきな内容で完封勝利を収めた。

キューバを相手に6者連続三振!チームに流れを引き寄せる好投

この大会での安樂選手のベストピッチは、第2ラウンドのキューバ戦だろう。初回から1死1・3塁のピンチを招いてしまうものの、4番打者から三振を奪い、なんとか無失点で切り抜ける。打線も2回に相手のミスから先制点を奪い、良い形で中盤へと向かっていく。

援護をもらった安樂選手は4回からギアを上げていく。2死から5番・6番打者を連続三振に切って取ると、6回には7・8・9番を3者連続三振。さらに7回にも1番から三振を奪い、なんと6者連続三振を記録したのだ。この当時まだ安樂選手は2年生だったのだが、この大会で誰よりも圧倒的なピッチングを見せた選手だった。

その後打線に火が付き、4回には渡辺諒選手(東海大甲府→日本ハム)のツーラン、さらに8回にも一挙6点をいれてコールド勝ちした。そのため、この試合では8イニングしか投げていないが、6安打10奪三振無失点とやはり完璧な内容であった。大会通算では3試合に登板し(カナダ戦でも1イニングだけ投げている)、18回27奪三振無失点。準優勝の立役者となっている。

劇的なサヨナラ勝ちを収めたオーストラリア戦(2017年大会)

2017年のワールドカップでは、やはりオーストラリア戦の勝利が見事であった。この試合の主役といえば、やはり安田尚憲選手(履正社)だろう。

試合は序盤から1点を争うゲームとなった。初回から藤原恭大選手(大阪桐蔭)・安田選手らがチャンスを作ると、櫻井周斗選手(日大三高)にタイムリーが飛び出し、1点を先制。さらに相手にミスもあって、この回もう1点を追加する。

だが4回、ここまで好投を続けていた磯村峻平選手(中京大中京)が捕まってしまう。4番・5番を順当に抑えるものの、6番打者にヒットを許してしまい、ここから4連打で2失点。最後は相手の走塁死に助けられて3つ目のアウトを取ることができたが、相手打線から攻略される形となってしまった。
その直後に安田選手のタイムリーで再び1点を勝ち越すも、6回に犠牲フライでまたもや同点になる。そして3-3のまま9回で決着がつかず、試合は延長戦へと向かう。

投手陣の踏ん張りで延長イニングを0で乗り切る

この大会、延長戦はタイブレーク方式(無死1・2塁からイニングがスタート)で行われる。まずは10回の表、オーストラリアの攻撃は定石通り送りバントで1死2・3塁の形を作ってきた。だが7回から登板している清水達也選手(花咲徳栄)がなんとか凌ぐ。次の打者を歩かせて満塁とした後、ピッチャーゴロでホームゲッツーを奪いスリーアウト。
この緊迫した場面で、フィールディングまでを含めて完璧なプレーである。だがその裏の日本の攻撃で得点を奪えず、また次のイニングへと試合が進む。

11回の表、日本は清水選手に代わり田浦文丸選手(秀岳館)がマウンドに上がる。相手は前のイニングと同じく送りバントで1死2・3塁の形を作ってくるが、ここで田浦選手も好投。1人歩かせて塁を埋めた後、7番はスライダーで、8番をストレートで2者連続の見逃し三振。完璧なボールを投げ込み、オーストラリア打線に得点を許さない。

思い空気を吹き飛ばすサヨナラタイムリー!

11回の裏、今度こそ1死2・3塁の形を作りたい日本。この回先頭の藤原選手のバントが見事なコースに決まり、これが内野安打になると、無死満塁とチャンスが広がる。打席にはこの日3安打の小園海斗選手(報徳学園)。
初球から積極的にスイングし、打球はライトへの浅いフライになった。タッチアップにはやや厳しいと思われたが、相手ライトが1塁ランナーを刺そうとした送球がそれてしまい、3塁ランナーがホームへ戻ると思われた。

しかし、フライゆえにランナーはハーフウェーから戻れず、ホームに帰ることができなかった。少し、日本の空気が重苦しくなる。だがまだ1死満塁だ。ここで打席には3番・安田選手。この日2安打を放っており、期待ができる。

2ボール1ストライクからの4球目であった。ストレートをコンパクトに振りぬくと、打球はキレイにセンター前に。今度こそ3塁ランナーが帰りサヨナラ勝ちを収め、決勝ラウンドの大事な初戦を、劇的な勝利で飾ることができた。

U-18ワールドカップ(およびAAA世界野球選手権大会)の名場面をいくつか紹介した。やはり普段甲子園で見る高校野球とはまた違った緊迫感があって、非常に面白い。こういった痺れる場面を何度も経験したことは、きっとプロに入ってからも大きな財産となることだろう。今度はまた新たな舞台で、彼らの勇姿が見られることに期待したい。