注目は早稲田大学の3人
2010年のドラフトにおける主役は斎藤佑樹選手、大石達也選手、福井優也選手の早稲田大学組だった。斎藤選手が早稲田実業時代に夏の甲子園で田中将大選手率いる駒大苫小牧を再試合の末に撃破してから4年が経っていた。当時、この世代は「ハンカチ世代」と呼ばれ大豊作と注目を浴びていた。
また、2006年の高校生ドラフトにおいてプロ入りを果たしていた田中将大選手(東北楽天ゴールデンイーグルス)、坂本勇人選手(読売ジャイアンツ)、前田健太選手(広島東洋カープ)らがプロ野球の世界で活躍していたこともあり、実力的な期待も高いものがあった。
大方の予想通り1位指名では大石達也選手、斎藤佑樹選手に人気が集まり巨人、中日ドラゴンズを除く10球団が2名に集中。大石選手に6球団(横浜、楽天、広島、オリックス、阪神、西武)、斎藤選手に4球団(ヤクルト、日本ハム、ロッテ、ソフトバンク)が入札し、大石選手は埼玉西武ライオンズ、斎藤選手は北海道日本ハムファイターズが交渉権を獲得した。その後、福井選手は広島が入札し交渉権を獲得。
同一大学から3名の投手がドラフト1位で指名を受けたことになり史上初の出来事となった。
ソフトバンクのスカウティング
斎藤選手、大石選手が注目されたドラフトだが2017年の今、現在を振り返ってみると福岡ソフトバンクホークスの指名がうまくいったといえそうだ。
この年、大石選手の抽選を外したもののソフトバンクは2015年シーズントリプルスリーを達成した柳田悠岐選手を2位で獲得している。この柳田選手の2位指名には逸話がありソフトバンクは柳田選手、秋山翔吾選手の2者択一を迫られ王貞治会長の「どっちの方が飛ばすんだ?」という問いにスカウトが「柳田です」と答え獲得に至ったのだ。
柳田選手、秋山選手という大ブレイクした選手達を上位指名とはいえドラフト1位ではなくリストアップし選択を迫られていることがスカウト力の高さを物語っているといえるだろう。
また、ソフトバンクの指名における凄さは柳田選手、秋山選手の取捨選択だけではない。支配下選手の指名が終わった後に行われる育成ドラフトにも現れている。2010年の育成ドラフトでソフトバンクは6名を指名しているが4位に千賀滉大選手、5位に牧原大成選手、6位に甲斐拓也選手と2017年現在で3名が支配下登録されているのだ。
千賀選手は日本代表にも選出されており、甲斐選手は1位指名された同じ高卒の山下斐紹(やましたあやつぐ)選手を乗り越え2017年シーズンは開幕一軍切符を手にした。育成ドラフトでもソフトバンクのスカウティング力は発揮されていたのだ。
3度目の抽選であたりを手にしたヤクルトの1位は山田哲人選手
現在のプロ野球において大谷翔平選手(日本ハム)、筒香嘉智選手(DeNA)らとともに時代を背負う存在として注目されているのが東京ヤクルトスワローズの山田哲人選手だ。山田選手は2015年、2016年にプロ野球史上初となる2年連続となるトリプルスリーを達成し第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)でも日本代表に入りチームを牽引した。
その山田選手は2010年のドラフト1位でヤクルトに入団しているがハズレ、ハズレ1位だったのだ。この年、ヤクルトは1位指名で斎藤選手に入札。4球団競合の末に抽選を外し次に入札したのが塩見貴洋選手だった。塩見選手でも楽天と競合し抽選で外れてしまう。その次の3人目で指名したのが山田選手だった。
この山田選手もオリックス・バファローズと競合し三度抽選となるが三度目の正直で当たりくじを引くことができ、入団に至るのだ。山田選手はヤクルトの入団会見でも会場で倒立歩行するなど注目を集めていた。
この抽選結果のアヤがあったことで山田選手は現在の活躍があったともいえるだろう。
山田選手を抽選で外したオリックスは後藤駿太選手(登録名:駿太)を指名している。駿太選手は伸び悩んでいるが2017年シーズンは開幕スタメンで起用されるなど飛躍の年にしたいところだ。
当時、オリックスの監督を務めていた岡田彰布監督は「史上初の同一ドラフトにおける3度のハズレ」という不名誉な記録を達成。後に「クジ引くのイヤなんや」とも語っている。
澤村選手、大野選手が単独指名!
斎藤選手、大石選手に人気が集まり10球団が入札したこのドラフトで単独指名されたのが巨人の澤村拓一選手、中日の大野雄大選手だ。澤村選手は巨人以外であれば入団を拒否するといった姿勢が見られており巨人以外の球団は指名することをしなかった。
大野選手は有力選手の一人であったことは間違いないが、故障もあり最後の秋を登板できずに終わっており中日以外の球団は手を引く。また、故障箇所がヒジではなく肩だったことも影響しているだろう。しかし、中日は故障を見越して数年間治療に専念させてでも戦力になると見込んでの指名だ。
2017年シーズン開幕までの結果を見ると澤村選手は先発からクローザーに転向し2016年年に最多セーブを獲得。大野選手は左のエースとして中日を支え2013年から3年連続で2桁勝利を達成するなどチームに貢献しておりともに成功しているといえそうだ。
西武の指名では日本代表が2人!
第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で侍ジャパン日本代表入りした牧田和久選手、秋山翔吾選手(ともに埼玉西武ライオンズ)も2010年のドラフトで指名されている。
この年の西武は1位で大石選手を6球団競合の上で獲得。2位に社会人野球の強豪である日本通運出身の牧田選手を即戦力として指名する。また3位指名では横浜創学館時代から注目されていたもののプロ入りせず、北東北大学野球連盟の八戸大学(現八戸学院大学)に進学し肉体を一回り大きくさせた秋山翔吾選手を獲得。2016年までの結果だけを見ると2位、3位の指名が大当たりとなっており1位の大石選手には奮起が期待される。
2017年が7年目のシーズンとなる2010年のドラフト入団組。高卒で入団した選手も中堅にさしかかる年齢であり、甘えが許されなくなってくる。今後も山田選手、柳田選手のようなスーパースター候補生が現れることに期待がかかる。