守備で魅了したアメリカのセンター
第4回WBCは、日本は準決勝敗退、ベスト4という結果に終わった。しかし、対戦相手にも印象的な活躍をする選手たちがたくさんいて、非常に見応えのある試合が続いた。あの選手はいったい誰なんだ?と思うシーンもたくさんあったかと思う。今回は日本以外のチームで、印象的な活躍を見せた選手たちのMLBでの実績などを紹介していこう。
まずは日本と準決勝で当たったアメリカの選手を紹介する。アメリカの選手で紹介したいのはアダム・ジョーンズ選手だ。日本戦でも2番センターとして出場していたジョーンズ選手だが、彼が目立っていたのはバッティングよりも守備だろう。第2ラウンドのドミニカ戦で、ホームラン製のボールをジャンピングキャッチしたプレーは、日本との試合の際にも何度も流された。
そんなジョーンズ選手は、MLBではボルモチア・オリオールズに所属している。やはり守備の名手として知られており、2009年にセンターのレギュラーを獲得以降、ゴールドグラブ賞を4度獲得した(2009、2012〜2014年)。それでいて打撃にも優れており、ほぼ毎年のように30本近くのホームランも記録している。2016年までの通算本塁打数は225本、キャリアハイは2013年で.285(653−186) 33本塁打 108打点という成績だ。実は2013年のWBC代表にも選ばれており、MLBを代表する外野手の1人といえるだろう。
大会MVP投手は今シーズン飛躍できるか!?
もう1人アメリカで紹介したい選手がいる。マーカス・ストローマン選手だ。日本戦では登板しなかったが、アメリカ優勝の立役者となった選手だ。決勝のプエルトリコ戦では、6回まで相手打線をノーヒットに抑える快投を見せ、見事チームを勝利に導いた。
実はストローマン選手は2次ラウンドのプエルトリコ戦でも先発していたのだが、その際は4回2/3を投げて4失点で敗戦投手となっていた。しかし、決勝では見事なリベンジをはたすのだ。この活躍もあってか、ストローマン選手は大会ベストナイン、およびMVPを獲得している。
ストローマン選手はMLBではトロント・ブルージェイズに所属している。2014年にメジャー昇格し、5月に初登板。そのままローテーションに定着して11勝6敗1セーブという成績を残した。翌年はケガでシーズンのほとんどを棒に振ってしまうが、2016年はフルシーズンで活躍し、32試合の先発で204イニングを投げた。残念ながら2桁勝利とは行かず、9勝10敗 防御率4.37という数字だったが、この大会をきっかけに、シーズンの成績も大きく飛躍させることができるだろうか。
世界最高のショートの実力とは
日本と2次ラウンドで対戦し、日本と同じくベスト4という成績を残したオランダの選手を紹介しよう。オランダでは4番に座ったウラディミール・バレンティン選手の活躍が見事だったが、今回注目したいのはまた別の選手だ。その選手とはアンドレルトン・シモンズ選手。全試合に1番ショートとしてスタメン出場し、日本戦でもタイムリー1本を放った。そして打席がまわるたびに「世界最高のショート」として紹介されるので、気になった方も多いのではないだろうか。
シモンズ選手は2015年までアトランタ・ブレーブス、2016年からはロサンゼルス・エンゼルスに所属している。シモンズ選手が優れているのは、やはり守備だ。打撃もかなりのレベルなのだが、守備に関してはMLBでもトップクラスの実力を持っている。
特に2013年に記録した守備防御点(DRS)ではメジャーでもシーズン記録となる+41点を記録。この指標は平均的な守備力を持つ選手に比べてどれだけ守備で失点を防いでいるかを表す数字なのだが、シモンズ選手は守備だけでも41点も防いだということになるのだ。いったいどれだけピッチャーを助けていたのだろうか。当時はレギュラーに定着したばかりで、それほど知名度もなかったはずなのだが、この活躍が光りゴールドグラブ賞を獲得している。
ちなみに守備範囲もそうなのだが、肩も抜群に強く、ファーストへの送球が158km/hを計測したこともあるとか。2016年もDRS+18という優秀な守備指標に加えて、.281(448ー126) 4本塁打 44打点 10盗塁を記録。世界最高の守備に、打撃も兼ね備えたショートなのだ。
強打のセカンドは日本人キラー!?
同じくプエルトリコの選手で、日本を大きく苦しめたのが、ジョナサン・スコープ選手だ。日本が1−0とリードしていた2回表には、石川歩選手から同点ホームラン、さらに9回裏には則本昂大(のりもとたかひろ)選手から同点タイムリー。最後は中田翔選手のタイムリーで勝利することができたが、何度も何度も嫌なところで回ってきた。そんなスコープ選手は、MLBではボルモチア・オリオールズに所属している。
長打力が魅力のセカンドで、2016年シーズンの成績は.267(615−164) 25本塁打 82打点。2塁打も38本放っており、持ち前の長打力が発揮されていた。レギュラーに定着した2014年は.209という低打率にあえいでいたのだが、ここ数年で一気に打撃成績を伸ばしてきた。ちなみにこの2014年には、低打率ながらもヤンキースの田中将大選手から2本のホームランを放っており、実は日本人キラーなのかもしれない。
剛速球守護神はMLBではルーキーだった!?
そして最後はプエルトリコの選手を紹介しよう。今回は日本と当たることはなかったプエルトリコだが、準決勝のオランダ戦の死闘は見事だった。その中でも、流れを呼び寄せるピッチングを見せたのが、守護神のエドウィン・ディアス選手だろう。
10回の表から登板して3番ジュリクソン・プロファー選手、4番ウラディミール・バレンティン選手、5番ジョナサン・スコープ選手を三者連続三振。バレンティンとの対戦では、顔付近にボールに一触即発な雰囲気にもなったが、本人にとってはどこ吹く風だったようで、最後は外角のストレートで見逃し三振に切ってとった。
そんな肝の太さを持っているディアス選手だが、実は94年生まれの若手投手だ。MLBに初登板したのも2016年シーズンのことだった。2012年のドラフトでシアトル・マリナーズに入団し、3年目にして初のMLB昇格。そして8月からは守護神に抜擢され、18セーブを記録した。
特に目を見張るものがあるのは、その奪三振率だろう。51回2/3で、なんと88個もの三振を奪ったのだ。この大会でも5回1/3で9つもの三振を奪っている。最速163km/hのストレートに変化量の大きいスライダー、そして内角にもずばずばと投げ込む気の強さ。今後も非常に楽しみな選手なので、ぜひ注目していきたいところだ。