前回に引き続きイチロー選手が出場
第2回WBCは王前監督から原辰徳監督に監督はバトンタッチ。就任会見ではWBCを航海に例え「プレッシャーはかかるけど前回同様いい港に船を迷わせることなく到着したい」と語り並々ならぬ決意を現していた。
この就任会見時に加藤良三コミッショナーから「サムライジャパン」の愛称が発表され現在まで続いている。
★代表メンバー(敬称略・所属は当時)
【監督:1名】
原辰徳
【コーチ:6名】
伊東勤
山田久志
与田剛
篠塚和典
高代延博
緒方孝市
【投手:13名】
ダルビッシュ有(日本ハム)
馬原孝浩(ソフトバンク)
田中将大(楽天)
涌井秀章(西武)
松坂大輔(レッドソックス)
岩田稔(阪神)
岩隈久志(楽天)
藤川球児(阪神)
内海哲也(巨人)
小松聖(オリックス)
渡辺俊介(ロッテ)
山口鉄也(巨人)
杉内俊哉(ソフトバンク)
【捕手:3名】
城島健司(マリナーズ)
阿部慎之助(巨人)
石原慶幸(広島)
【内野手:6名】
栗原健太(広島)※
中島裕之(西武)
片岡易之(西武)
岩村明憲(レイズ)
小笠原道大(巨人)
村田修一(横浜)
川崎宗則(ソフトバンク)
【外野手:6名】
福留孝介(カブス)
青木宣親(ヤクルト)
内川聖一(横浜)
亀井義行(巨人)
稲葉篤紀(日本ハム)
イチロー(マリナーズ)
※第2ラウンドで離脱した村田に代わり追加招集
メンバーには前回同様イチロー選手らメジャーリーガーが出場する。また、後のメジャーリーガーであるダルビッシュ選手、岩隈選手、田中選手、藤川選手、川崎選手、青木選手も参加。豪華メンバーが集結した。
韓国に連敗するも準決勝進出
1次ラウンドは東京ドームで行われ初戦は中国との対戦だ。前回大会の優勝監督である王監督が始球式を務め第2回WBCの幕が開いた。初戦は中国打線に付け入る隙を与えずダルビッシュ選手、涌井選手、山口選手、田中選手、馬原選手、藤川選手のリレーで完封。4-0で初戦をモノにした。
2戦目となった韓国戦では14-2とコールド勝ちを収める圧勝。順位決定戦で韓国に破れたものの2勝1敗で2次ラウンドへの進出を決めている。
2次ラウンドからは舞台を米国に移し日本代表はキューバと対戦する。キューバは前回大会決勝で対戦した相手でもある。日本の先発はその決勝と同じ松坂選手だった。松坂選手は6回無失点の好投であとをリリーフ陣に託す。岩隈選手、馬原選手、藤川選手と繋いだリレーで日本は完封リレー。
あと1つ勝てば準決勝進出まで勝ち進んだ。
続く相手は1次ラウンド最終戦で敗れている韓国だ。先発のダルビッシュ選手が初回に3点を失う苦しい立ち上がり。その後、追いつくことができず1-4で敗退。敗者復活戦へ回る。
敗者復活戦でキューバと再び対戦した日本は5-0と快勝。準決勝進出を決めた。この試合では岩隈選手が6回無失点の好投。後を受けた杉内選手も3回無死点と投手陣の勝利だった。順位決定戦では2連敗を喫していた韓国に6-2で勝利。1位通過で準決勝に駒を進める。
村田選手の離脱、ダルビッシュ選手の抑え起用
準決勝に駒を進めた日本代表だが順風満帆とは行かなかった。2次ラウンドの順位決定戦となった韓国戦で村田選手が走塁中に肉離れを発症。緊急帰国となってしまうのだ。
村田選手はここまで打率.320、2本塁打、7打点と主軸として活躍。日本にとって大きな痛手となった。村田選手の代役として日本から急遽呼ばれたのは栗原選手だった。
広島のキャンプで汗を流していた栗原選手は嫌な顔ひとつせずにアメリカへ向かいチームへ合流を果たしたのだ。
また、試合では無失点に抑えていたものの調子が上がらなかった藤川選手に代わり、原監督は準決勝から抑えにダルビッシュ選手を起用することを決断した。ダルビッシュ選手は抑えでの起用は初めてということもあり藤川選手に肩の作り方を聞くなど調整を続ける。
決して楽な道のりではなかったのだ。
イチロー選手の決勝タイムリー
準決勝の相手は前回大会で世紀の大誤審があったアメリカだった。先発のマウンドにはエース松坂選手。初回、先頭打者に本塁打を浴びる立ち上がり。2回裏に同点に追いついたものの3回表に再び逆転されてしまう。
しかし、4回裏に集中打を浴びせ5点を奪い6-2と逆転。その後も点の取り合いになるがなんとか逃げ切り9-4で前回勝つことのできなかったアメリカに勝利する。
この試合からダルビッシュ選手が藤川選手に代わって抑えとして登板したのだ。初の抑え起用となったダルビッシュ選手だが無安打2奪三振と試合を締め大役を果たした。
決勝の相手は今大会で5回目の対戦となった韓国だった。日本は3回に1点を先制するが先発は岩隈選手が5回に本塁打を浴び1-1の同点に追いつかれていまいる。その後、緊迫した試合展開となり、日本は3-2の1点リードで9回裏最後の守備についた。
マウント上にはダルビッシュ選手が上がる。しかし、2つの四球と安打でまさかの失点。3-3の同点に追いつかれ試合は延長戦へ。
日本は10回表に2死一、三塁からイチロー選手がセンター前へ鮮やかなタイムリーヒットで勝ち越しに成功。続投となったダルビッシュ選手が10回裏をきっちり抑え大会二連覇を達成したのだ。
原監督が就任会見で話した「いい港」に到着した瞬間だ。
正捕手城島選手の存在感
日本が大会二連覇を果たした要因は様々だがその一つに城島選手の存在が挙げられる。ダイエー、ソフトバンクでプレーした後にイチロー選手と同じメジャーリーグのシアトル・マリナーズに移籍した城島選手。今大会、メジャーリーガーとして参戦している。
2次ラウンドで2回対戦したキューバ戦。松坂選手とバッテリーを組んだ試合ではキューバが構えを声で伝えていると判断するや次の回から構えを修正。一度構えたところと逆に投げさせるなどの工夫をこらす。
順位決定戦では岩隈選手にわざと首を振らせる作戦を取るなどキューバ打線を翻弄する。後のインタビューで城島選手は「フォークを投げることは決まっていた。首を振ることで相手の間にさせないことを意識していた。あのときはサインを出していない」と語っている。フォークで投げることは事前に打ち合わせており、どのタイミングで投げるかだけを考えていたのだ。
これらの頭脳的なプレーが日本投手陣の大きな支えとなったのだろう。
決戦での正捕手の重要さを城島選手は改めて教えてくれた。2017年WBCで日本は確固たる正捕手が不在のまま大会に挑む。小久保裕紀監督はどのような捕手起用を見せてくれるのか要注目だ。