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村上宗隆が打開する2つの「危機」、今季は主砲としてさらなる飛躍を【2020年代のヤクルトを左右する男】

2020 5/23 11:00青木スラッガー
東京ヤクルトスワローズの村上宗隆ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

「令和の怪童」村上宗隆

2020年代のプロ野球はどんな10年間になるだろう。チームの将来10年間を見据えると、重要になるのはこれから成長していく若手選手たちである。成長の度合いで、2020年代各チームの命運が大きく変わるほどの素質を持つ選手に注目してみたい。

ヤクルトで注目するのは、高卒2年目に大ブレークを果たし新人王を獲得した「令和の怪童」村上宗隆だろう。昨季の村上は全試合に出場し、打率.231、リーグ3位の36本塁打と96打点をマーク。本塁打数は高卒2年目以内での歴代最多タイ記録と、長距離砲として規格外の可能性を示した。

球界に強烈なインパクトを残すプロ2年目となったが、村上の存在はチームにどのような変化をもたらすことになりそうか。

世代交代と長打力不足の危機に直面していたヤクルト

ヤクルトのここ数年のチーム状況を考えると、野手は年齢構成の観点から、編成上の大きな弱点を抱えていた。

青木宣親は現在38歳、雄平と坂口智隆も今季中に36歳となり、中村悠平も30歳を迎える。一方、20代で主力と呼べる選手が少ない。今季で28歳になる山田哲人も、順調に行けば今季中にFA権を取得できるため、流出の可能性は否定できない。数年先のチーム像を考えると、若手野手の層の薄さが懸念事項となっていた。

また2010年代の打撃データを振り返ってみたところ、チーム本塁打数はシーズン平均118.9本となり、これは巨人、DeNA、広島に劣りセ・リーグ4位。本塁打が出やすい神宮球場をホームとしている割には、長打力で圧倒できていなかったという意外な事実も浮かび上がってくる。そんななか、昨オフに退団となったバレンティンに続き山田のFA権取得も近づいてきており、長打力不足に陥いる不安が高まっていたところだった。

2010年代シーズン平均本塁打数ⒸSPAIA

このさなかに登場した10代の大砲・村上は、野手の世代交代や長打力不足という2つの危機を打開できる存在。チームの今後の命運がかかっていると言っても過言ではないだろう。

今季は見たい「4番打者」としてチームを勝利に導く姿

ブレーク翌年となる今季は、さらなる飛躍が期待される。高津臣吾新監督は、村上を4番打者として起用することを明言。「主砲」として、チームの勝敗を背負う立場になってくる。

だが、ひとつ気になるのが昨季の出場打順別のデータだ。2桁本塁打を記録した5番、6番や106打席で7本塁打を放った7番に対して、109打席あった4番ではわずか2本塁打と、4番打者としては結果を残せていない。

2019年村上宗隆の出場打順別打撃成績ⒸSPAIA

4番として期待される裏で、抜群の長打力の裏に潜む「もろさ」も課題となってくる。昨季の打率.231はセ・リーグの規定到達打者でワースト、シーズン184三振は日本人としては歴代ワースト記録と、不名誉な記録も残した。のびのび打てる下位打線なら三振を恐れず振り回す「ブンブン丸」でもいいが、これが打線の柱であり勝負強さが重要な4番となると、そうもいかない。

昨季のカウント別打率は0ストライクが.438、1ストライクが.302、2ストライクが.149。浅いカウントでは高確率で仕留めることができた一方、ストライクを2つ取られてからは極端に数字を落としている。これが低打率と三振の多さの原因だろう。

4番打者としてもアーチを量産できるかどうかと、追い込まれてからの対応。今季はもちろん、今後も主砲として長く活躍できるかどうかは、この2つが鍵となるのではないだろうか。

2020年プロ野球・東京ヤクルトスワローズ記事まとめ