昨年引退、琉球ブルーオーシャンズ投手コーチ就任
期せずして波乱の船出となってしまった。2019年シーズン限りで現役を引退。指導者としての第二の人生のスタートを切った、かつての甲子園のスターはかつてない経験を積んでいる。日南学園時代に甲子園で154キロをマークし、ダイエー、ソフトバンク、横浜、オリックス、ヤクルトで通算73勝。新設球団の琉球ブルーオーシャンズ・寺原隼人投手コーチ(36)が、新天地の沖縄で奮闘している。
琉球ブルーオーシャンズは2020年からプロ野球チームとして始動。将来にNPBが参入枠を拡大した際に、新規加入することを目標に結成された。1月25日から2月21日まで沖縄・東風平でキャンプを実施。今シーズンはNPBの2軍、3軍や独立リーグ、台湾プロ野球との試合を編成し、活動していくプランで動いていた。
選手には沖縄県出身で元ヤクルトの比屋根渉外野手をはじめ、NPBから前中日の亀澤恭平内野手(コーチ兼任)、元ソフトバンクの吉村裕基外野手らが加入。トライアウト合格者、テスト生を含め30選手で運営されている。
9人の投手を預かる寺原投手コーチはまず「このメンバーの中から、1年でも早くNPBでプレーできるレベルの選手を育てることが自分の仕事」と、初めての指導者としての仕事に取り組んでいる。
“開幕戦”で巨人3軍に勝利
チームの位置付けは、大学でも社会人でも独立リーグというわけでもない。ただ、20歳から20代半ばの選手を中心に抱えているとあって「NPBでプレーするためには年齢も大きなネック。社会人も経験している20代半ばの選手には時間がない。若い選手も、そんなに長い時間があるわけではない。自分が知っているNPBのレベルまで早く選手を引き上げられるように手助けしたい」と、取り組みの難しさも実感している。
そんな中、新型コロナウイルス騒動にも直面した。キャンプを経て練習試合、オープニングゲームという予定だったが、予定は大幅に変更。韓国プロ野球チームと予定していた練習試合は軒並みキャンセル。2月29日に巨人3軍と予定していたオープニングゲーム(沖縄セルラースタジアム那覇)は、無観客試合という厳しいスタートとなった。
それでも、チームの初戦を2-1で勝利したことは事実。又吉亮文、村中恭兵(元ヤクルト)、本野一哉の投手リレーで3軍とはいえ巨人を相手に逃げ切った。寺原投手コーチにとっても、指導者として初の白星となった。
新型コロナの影響で活動自粛中
その後も試合を積極的に組んでいたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で試合中止が続出。沖縄県内の社会人野球チームとの試合を実施するなど、懸命の活動を続けてきたが、現在は活動を自粛中だ。
元々、寺原投手コーチは多趣味。引退後はアパレル業界や、飲食業界など人脈を生かして実業家として活動していく夢も持っていた。だが、今は野球の世界で必要とされることを重要と考え、独立系新球団で指導者の道を歩き始めた。
「まずは選手をNPBに送り込む。もちろんチーム自体がNPBに参入できることも手伝いたい。自分自身も指導者としてNPBに必要とされる人材になっていたい」
高校野球で世間に話題を振りまいた甲子園のスターは現在、誰も歩んだことのない道を一歩、一歩、歩んでいる。