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事実上の「五輪代表決定戦」東京マラソンは3強の争いか、新星誕生か

2020 2/26 11:00鰐淵恭市
(左から)井上大仁、設楽悠太、大迫傑Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

最後の1枠争い3月1日号砲

ナイキの厚底シューズ問題に始まり、新型コロナウイルスによる一般参加中止、参加料返金問題など、レース外の話題に事欠かない2020年の東京マラソン(3月1日)だが、よくよく考えてみれば、今回は事実上の五輪代表決定戦だ。本命の「3強」に加え、ここに来てダークホースも現れた。五輪代表最後の1枠をつかむのは誰だ。

東京マラソンで代表選考の対象となるのは、男子のみ。3枠のうち二つは、昨年9月のマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)で中村匠吾(富士通)、服部勇馬(トヨタ自動車)に決定済み。今回は、MGC3位だった大迫傑(ナイキ)が持つ2時間5分50秒の日本記録を上回った中で最速の選手が選ばれることになる。2時間5分50秒を切る選手がいない場合は、MGC3位の大迫に決まる仕組みだ。

残る選考会は東京マラソンと3月8日にあるびわ湖毎日マラソンの二つ。ただ、びわ湖は風が強く記録が出にくいコースの上に、今回は有力選手がすべて東京に回った。東京で最後の1枠が決まる可能性が高い。

アジア王者・井上大仁は厚底効果に期待

注目は、大迫、前日本記録保持者の設楽悠太(ホンダ)、アジア大会金メダリストの井上大仁(MHPS)の3人だ。設楽の自己ベストは日本歴代2位の2時間6分11秒、井上は同5位の2時間6分54秒。大迫を含めた3人の記録が、現役選手のベストタイム上位3傑になる。まさに「3強」なのだ。

タイム的には、井上が少し水をあけられている形だが、ここに来て井上の注目が増してきている。その原因は彼の足元にある。

井上が2時間6分54秒をマークした時のシューズはアシックス製の薄底だったが、今回はナイキの厚底で走ることが決まっている。井上はアシックスと契約していたが、代表入りのためにナイキを履くことを決断した。

「井上が厚底を履けば2分ぐらいは速くなるのでは」とみる陸上関係者もいる。その見立てが本当なら、日本人初の2時間4分台をマークしての五輪代表入りもあり得る。井上自身も「一番速いところについていくことしか考えていない」と代表入りに意欲をみせている。

2時間4分台を狙う設楽悠太

井上が可能性をみせる2時間4分台を、五輪代表入りのための「最低ライン」と公言するのが設楽だ。

1月に行われた会見ではこう言って報道陣を驚かせた。

「2時間4分台で走らないと東京五輪を走る資格はないと思っています。2時間5分台なら日本記録でも五輪代表は辞退すると思う」

実際に2時間5分台で代表になった場合、辞退できるのかどうかは微妙だが、設楽の世界と戦うことへの意気込みがわかる発言だった。

設楽の視線の先には常に世界がある。日本代表争いという、小さな枠にこだわらない。それを示したのが、MGCの走りだった。スタートから1人で飛び出し、異次元のレースをみせた。暑さもあり、終盤は失速して、37キロで後続にとらえられたが、レースを盛り上げたのは設楽の「大逃げ」だった。今回の東京でも、その展開はあり得る。設楽はこう語っている。

「みんな守りに入ってしまってやらないだけなんです。それでは見ている人はつまらないと思う。前半から勝負をしていかないと、(世界で)絶対に勝てない」「2時間4分台なら(世界と)少しは勝負できるのかな」

レースを動かすのは、設楽の可能性が高い。

動いた日本記録保持者・大迫傑

3強の中ででも、MGCで3位に入った大迫は、ほかの2人とは少し事情が違う。自身の日本記録を上回る選手がいなければ、自動的に大迫が代表に決まるからだ。出ないという選択肢もある。だが、大迫はあえて動いた。

MGC直後は大迫の記録を上回るのは難しいのではないかと見られていたが、昨年12月の福岡国際マラソンで、藤本拓(トヨタ自動車)が30キロまでは日本記録を超えるペースで走った。「本気で日本記録を狙えば、ある程度の距離まではいける」というのが陸連の強化関係者の感想だった。東京マラソンでは日本記録を意識したペースが設定されるだろう。そこに設楽や井上が挑んだら、日本新をマークする可能性もある。「待ち」で後悔するよりも、「出場」を選んだ大迫の決断は正しいと思われる。

大迫は東京に向けて、ケニアの高地合宿を行った。彼よりも速いケニア選手たちにもまれて、トレーニングをした模様だ。ポテンシャルは3強の中で1番だろう。昨年の東京は途中棄権に終わったが、雪辱を期す舞台は整っている。

新星候補はハーフの日本記録保持者・小椋裕介

大会前あと1カ月を切ったところで、新たな注目選手が現れた。青山学院時代に箱根駅伝で2度優勝を経験した小椋裕介(ヤクルト)だ。

大学時代は箱根の7区を4年連続で走るなど、学生駅伝界では知られた存在だったが、実業団入り後は「鳴かず飛ばず」の状態だった。だが、昨秋からナイキの厚底にシューズを変えてから記録がアップ。今年2月の丸亀ハーフマラソンで、1時間0分0秒の日本記録をマークし、一気に五輪代表候補として注目されるようになった。ちなみに、ハーフの前日本記録保持者は設楽。その記録を17秒上回った。

マラソンの自己ベストは昨年3月のびわ湖でマークした2時間12分10秒。ただ、ハーフの記録からすれば、2時間6分を切ってもおかしくない。もちろん、ハーフとフルのマラソンは別物だが、3強を脅かす走りができれば面白い。

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