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平成29年 桐生が日本人初の9秒台 【平成スポーツハイライト】

2019 1/13 11:00SPAIA編集部
桐生祥秀,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

何度もはね返されてきた「10秒の壁」

出そうで出なかった9秒台に初めて足を踏み入れたのが桐生祥秀だ。

陸上の花形、男子100m。平成10年に伊東浩司が10秒00の日本新記録を樹立して以来、19年間も「10秒の壁」を破れなかった。

日本記録更新の歴史をさかのぼると、飯島秀雄が昭和43年のメキシコ五輪で10秒34をマークしてから昭和62年に不破弘樹が10秒33を記録するまで19年を要した。その後は小刻みに更新され、朝原宣治が平成5年、8年、9年の3度、日本記録を更新。その朝原の10秒08を更新したのが伊東だった。

しかし、その後は日本有数のスプリンターが9秒台に挑むが、何度も壁にはね返される。平成28年のリオデジャネイロオリンピック男子100mでは、山縣亮太とケンブリッジ飛鳥が準決勝進出、400mリレーでは山縣、飯塚翔太, 桐生、ケンブリッジの4人で銀メダルを獲得するなど着実にレベルアップ。翌年6月には当時無名だった多田修平が、追い風4.5mの参考記録ながら9秒94をマークし、日本人選手が10秒の壁を破る期待は日増しに高まっていた。

絶好の条件の中、破った「10秒の壁」

桐生は滋賀県彦根市出身で、京都・洛南高校3年時の織田記念陸上で10秒01をマークし、注目を集めた。東洋大に進学後、平成27年3月の米国テキサス州で開かれた大会では、3.3メートルの追い風参考ながら9秒87で優勝。翌28年のリオ五輪を経て、29年8月の世界選手権では100mの代表を逃す屈辱も味わった。

そして迎えた9月9日の日本学生対校選手権。陸上競技の短距離種目は追い風が2mを超えると「参考記録」になるが、この日の福井運動公園陸上競技場は追い風1.8mという絶好のコンディションだった。

観衆が見守る中、好スタートを切った桐生はそのままグングン加速し、一気にゴールを駆け抜けた。表示は9秒99だったが、正式タイムは9秒98。19年ぶりの日本記録更新、そして、日本人として初めて「10秒の壁」を破った瞬間だった。

「ジェット桐生」とも呼ばれる希代のスプリンターはこれからさらに記録を更新するだろうか。あるいはライバルが桐生の記録を破るか。東京オリンピックに向け、最速を目指す男たちの熱い戦いはまだまだ続く。