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箱根が全国化? 正月の風物詩に大改革はなるのか

2017 11/20 11:40きょういち
駅伝
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出典 ChiccoDodiFC / Shutterstock.com


 日本の大学スポーツ最高の人気を誇り、正月の風物詩である箱根駅伝が、2024年の第100回大会で全国化される可能性があるのだという。

 11月7日の日刊スポーツが1面で報じたものだ。陸上競技関係者や駅伝ファンのみならず、このニュースに興味を持った人も多いはずだ。

 箱根駅伝は関東学生陸上競技連盟主催の大会。大学(学生)3大駅伝の一つで最大の人気を誇りながら、いわゆる関東大会でしかなかった。それが全国化されるとなれば大きな変革である。

過去には関大などがオープン参加

 日本の駅伝人気を支える大会でありながら、関東の大学にしか出場権がないことで、関東以外の大学からは常に不満の声が聞こえていた。

 最も出たい大会でありながら、関東学連に所属する大学ではないと出られない。だから、実力のある学生はほぼ間違いなく関東の大学に進学する。それ以外の地域は、いくらいい環境、いい指導者がいても、入学してくる長距離選手は実力的には関東に比べて二枚も三枚も劣る学生ばかりである。

 箱根駅伝の人気が高まるのと同じように、関東とそれ以外の大学の実力差は開いてきた。

 関東以外の大学も出場して日本一を決める全日本大学駅伝では今年、関東の大学が1~15位までを占めた。シードと予選を勝ち抜いた関東の大学は15校出場していたから、関東の大学に勝ったそれ以外の地域の大学はなかったということだ。昨年もそうだった。

 そういった状況を打破するために、関東以外の大学の指導者からは常々、箱根に関東以外の大学が出られるようにと訴える声が聞かれた。

 ちなみに、箱根駅伝に関東以外の大学が出たことはある。戦前には関大、戦後でも立命大、福岡大が出場したことはあるが、順位のつかないオープン参加だった。今回の日刊スポーツの報道ではオープン参加ではなく、順位のつく方向で検討されているという。

「全国大会」ではなく「全国化」

 今回の報道で誤解されている人も多いと思うが、あくまでも報じられたのは箱根駅伝の「全国化」である。「全国大会」ではない。

 全国大会という意味では、大学駅伝にはすでに二つある。一つは「選手権」であり、日本一を決める全日本大学駅伝(正式には全日本大学駅伝対校選手権大会)。もう一つは選抜方式をとっている出雲駅伝(正式には出雲全日本大学選抜駅伝競走)。この二つが全国大会の形式をとっている。

 日刊スポーツの報道では詳細が分からないが、全国化するということは、全国の大学に出場する可能性を持たせることということではないだろうか。出雲や全日本のように、地区に出場枠が与える形にならないのではないか、と関係者たちは語っている。

 そうなると、結局は関東以外に出場できる大学はほとんどないのではないか、とみている人は多い。関東以外の大学が、関東へ流れていたポテンシャルのある大学を入学させ、その上で20キロを走る能力を持たせるというのは並大抵のことではない。そのノウハウもない。かつ、箱根は10区間あり、そのような能力を持った選手が15人ぐらいいないと予選会を突破できない。

 100回大会は2024年。まだまだ先だから、という見方もあるかもしれないが、その100回大会があるからといって、関西や九州に残ります、という学生が本当にいるだろうか。やっぱり、強いメンバーがそろっている関東の大学へ進学する方が箱根への近道だと考えるだろう。だから、全国化したからといって、全国の大学が出られるのかというと、話が違うのである。

 そして、その全国化は100回大会だけなのか、それ以降も続けるのか、日刊スポーツの記事では分からない。書き方が悪いだけなのかもしれないが。

沈黙する関係メディア

 このニュース、本当なら各社が追いかけるべきなのだが、どの新聞社、テレビ局も後追いをしない。

 共催をする読売新聞、後援の報知新聞、放映する日本テレビの動向を見守っていたが、全くのスルーである。だから、日刊スポーツの記事が本当なのかどうなのか、分からない。後追いする社がないからといって、これが誤報だとは思わないが、判断材料がなさすぎる。

 ニュースソースはどこなのか。先述のように、全国に門戸を開いてほしいという声は以前からあった。関東以外の関係者がそれを実現させるために、まだ決まってもない全国化の流れを加速させようと日刊スポーツに書かせた可能性はある。

 また、一方で箱根駅伝側にも全国化させたい思惑はあったはず。最大の人気を誇りながら、今のままでは関東大会の域から脱することができない。実際、関東の大学からは全国化に反対の声が大きいと聞く。そういった声に対抗すべく、外側から全国化の機運を高めようとした可能性もある。

 いずれにせよ、続報が待たれる話題である。