大学ナンバーワンの力を見せる
8区は最長19・7キロ。東海大のアンカーは4年生の川端千都。5000メートルで13分49秒33、1万メートルで28分44秒71の自己ベストを持ち、世界ジュニア、ユニバーシアードにも出場経験がある。長い距離では東海大でも屈指の力を持っている。
しかし、神奈川大のアンカーで4年生の鈴木は役者が違う。
5000メートルの自己ベストは13分57秒88とスピードは川端に劣るものの、1万メートルは28分30秒16。今夏のユニバーシアードのハーフマラソンは銅メダルで、現役大学生では最強の長距離走者である。
神奈川大の大後栄治監督に確固たる自信があった。
「健吾はレベルが違う。東海大の川端君には申し訳ないが、アンカー勝負になった時に優勝を確信した」
その自信は実力差からくるだけのものではなかった。鈴木は夏の走り込みが不足していたため、出雲駅伝を回避し、東京・伊豆大島でひとりキャンプを張っていた。そこでしっかりと足をつくり、この全日本にのぞんでいた。
予想通りだった。「こんなに僅差でくるとは思わなかった」という鈴木が、2キロ過ぎに川端に追いついた。上下動が少なく、スムーズに足が回転する効率的な走り。6キロ過ぎから徐々に差を広げ、勝負を決めた。
神奈川大の優勝は20年ぶり3度目だった。鈴木のタイムは57分24秒で区間2位。区間賞は山梨学院大のドミニク・ニャイロで57分6秒。東海大の川端は58分59秒で区間3位と決して悪くなかった。ただ、相手が悪かった。連覇を狙った青山学院大は最後まで優勝争いに絡めず、3位に終わった。
栄光のテープを切った鈴木はメンバーをたたえた。
「僕が差を広げたというよりは、1~7区で前に食らいついてくれたおかげです」