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ボルト、最後の世界陸上へ(5) ~偉大なスプリンターを振り返る~

2017 8/4 11:07きょういち
ボルト
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出典 Petr Toman / Shutterstock.com


ボルト、最後の世界陸上へ(4) ~偉大なスプリンターを振り返る~

 2012年ロンドン五輪前に、ウサイン・ボルト(ジャマイカ)が口癖のように言っていたのが、「伝説になりたい」。それは、100メートルと200メートルで五輪連覇を果たすということだった。

 その前年、大邱の世界選手権の100メートルで、まさかのフライングによる失格。ボルトほどの選手でも、ロンドン五輪での2種目2連覇は難しいのかと思われた。

 だが、役者が違った。開会式で母国の旗手も務めたボルトは、100メートルで真の王者の力を見せつけた。タイソン・ゲイ(米国)、ジャスティン・ガトリン(米国)、ヨハン・ブレーク(ジャマイカ)と、ライバルと呼べる選手たちが勢揃いした決勝で、ぶっちぎった。4年前の北京五輪よりも0秒06速い9秒63の五輪新記録で金メダルを獲得した。

 100メートルよりも、印象に残ったのは200メートルだったかもしれない。金メダルを獲得すると、トラックに口づけをした。

 「俺は伝説だ」

 目標を達成し、ボルトはそう喜んでいた。そして、100メートルに続き、200メートルでも2位になったブレークに対して述べたコメントが忘れられない。

 「悪い時代にやってきたな。あと2、3年は俺の時代だ」

 2、3年どころか、あれから5年経った今でも、ボルトの時代は変わっていない。そして今、その時代の幕は自ら下ろそうとしている。

100%の自信

 2017年世界選手権ロンドン大会の開幕を直前に控えた8月1日、ボルトは、ロンドンで記者会見を開いた。

朝日新聞 によると、ボルトは以下のような自信にあふれたコメントを発している。

 「100%の自信がある。レース後の見出しは『無敵』、『誰も止められない』だ。みんなメモしておけよ」

 ロンドン五輪で生ける伝説となったボルトは、歴史を作り続けてきた。北京五輪で鮮烈な印象を残して以降、五輪、世界選手権といったいわゆる「世界大会」では、2011年世界選手権大邱大会でのフライングの失格以外で負けていない。

 ロンドン五輪以降も、2013年世界選手権モスクワ大会、2年後の北京大会、2016年リオデジャネイロ五輪の100メートルと200メートル、そして400メートルリレーと、走ったレースは全て金メダルをとってきた。

 人類最速のスピードに加え、無類の勝負強さを誇る。それが、強気のコメントを言わせるのだろう。

 ボルトは今年、8月21日で31歳になる。若いころに比べて、ケガも多くなり、かつてのようなスピードはないかもしれない。今回の世界選手権では、200メートルの出場を断念し、個人種目は100メートルに絞っている。

 100メートルで優勝すれば、この種目で大会最多となる4度目の優勝となる。今季の自己ベストは9秒95と、世界ランキングは5位とふるわないが、ボルトは意に介さない。

 「間違いなく俺が今も一番速い」

引退撤回は否定

 今回の世界選手権での引退を明言していたボルト。大会が近づくにつれ、引退を撤回するのではないかという臆測も流れていたが、「それはない」のだという。陸上ファンには寂しい限りだが、負ける姿を見せることなく退くというのも、彼の美学なのだろう。

 引退後については、サッカー選手や、俳優への転身もささやかれている。ボルトは「間違いなく検討する。友人らとサッカーをやると思う。もしかすると俳優になってアクション映画に出ているかもしれない」と語っているが、それがどこまで本心かは分からない。

 ボルトは有終の美を飾れるのだろうか。伝説のまま、その現役を終えられるのだろうか。

 ここに来て追い風が吹いている。ライバルの1人で、今季追い風参考ながら9秒69で走っていたアンドレ・ドグラス(カナダ)が足のけがで欠場することになった。

 「もう1回、自分が(世界一だと)証明しないといけない」と意気込むボルト。彼の個人種目ラストランになるであろう、100メートルの決勝は日本時間6日午前5時45分にスタートする。


(終わり)