守る実力校
全日本の関東予選の結果については、公式ホームページ(http://daigaku-ekiden.com/index.html)を参照いただきたい。簡単に言うと、予選の上位9校が本戦に進む。上から言うと、神奈川大、東海大、国学院大、大東文化大、法政大、帝京大、明治大、順天堂大、城西大が全日本へと駒を進めた。これとは別に、昨年の本大会の結果で青山学院大、早稲田大、山梨学院大、駒沢大、中央学院大、東洋大がシードされて、すでに本戦への出場を決めている。
関東予選では、力に応じた各校の戦い方が興味を引いた。
関颯人ら、高校時代からのスター選手が2年生に集中し、「黄金世代」を形成する東海大、日本陸連の男子マラソン強化合宿に参加した鈴木健吾ら実力者がそろう神奈川大は、関東予選では力が抜けた存在であった。
この2校の戦略は分かりやすい。
関東予選は各校2人ずつが4組に分かれて、8人の合計タイムで争う。1人が棄権したら、その場で本大会に進めなくなるシステムだ。だから、実力のある東海大も神奈川大も攻めではなく、どちらかというと守りに入った。
どの組でも先頭集団の前の方につけるが、決して飛び出さない。実力通り走れば上位に入れるのが分かっているからだ。むしろ変な勝負をしかけて失速する方が怖い。
2組目で走った東海大の中島怜利の言葉が、その戦略をよく表している。
「1位通過にこだわる必要は無い。冷静に走れれば、(本大会への出場権を)落とすことはないし。自分の走りをすれば大丈夫だと思っていた」
攻める伝統校
そういった力のある大学とは違い、ボーダー上にある大学の方が見た目には面白い。
今回の予選で言えば、伝統校の順天堂大と中央大がそうだった。
1組目で13位と出遅れた順天堂大は、2組目の花沢賢人が勝負に出た。スタート直後から1人で飛び出した。
「1組目で出遅れた。監督の指示ではないが、いけるところまでいこうと思った。最後の10周はつらかった」
終盤は後続に追い上げられたものの、2組目のトップで走り終えた。
この走りが仲間を鼓舞した。
3組目を終えて、順天堂大は11位だった。リオデジャネイロ五輪3000メートル障害代表の塩尻和也、主将の栃木渡が4組目に控えているとはいえ、楽な展開ではない。そんな中、塩尻はこう思った。
「2組目でトップを取ってくれた。その走りを無駄にはできなかった」
栃木もこう感じた。
「花沢の走りは涙が出そうなほど感動した」
順天堂大のWエースの2人は、体調が万全でなかった。塩尻は10日前に練習中に左足首をねんざし、4日間松葉杖で生活。1週間は練習ができなかった。栃木は教育実習中で朝練ができなかった。そんな中で2人は花沢の走りに鼓舞され、チームを8位に押し上げた。本大会に進めない10位日体大との差は37秒。花沢の攻めの走りが好結果を招いた。
名門復活をかける中央大も同じように攻めた。
2組目を終えて15位に沈んでいるとみるや、3組目で主将を務める2年生の舟津彰馬が残り2000メートルを前に飛び出し、そのまま逃げ切った。
「残り3周で出るつもりだったが、チームのことを考えて出た」
3組目で1位の走りをし、チームの順位を10位に上げた。だが、最終4組目で伸び悩み、結局12位に終わった。順天堂と違い、賭けは成功しなかった。
ついに幕を開けた2017年の全日本大学駅伝の地区予選は9月まで続き、11月5日に本大会を迎える。