「スポーツ × AI × データ解析でスポーツの観方を変える」

大学三大駅伝って?〈1〉~日本一を決めるのはどの大会?~

2016 10/31 15:52きょういち
早稲田大学,ⒸShutterstock.com
このエントリーをはてなブックマークに追加

Photo by Ludi1572/Shutterstock.com

 スポーツの秋とは言いますが、この季節から冬にかけて熱を帯びてくる競技があります。駅伝、マラソンといった陸上競技のロードレースです。11月6日は「大学日本一」を決める全日本大学駅伝が名古屋の熱田神宮―三重の伊勢神宮のコースで行われます。タイミングがいいので、大学駅伝の話をしましょう。1回目の今回は「キホンのキ」なので、ご存じの方も多いかもしれません。
とかく日本人は「三大○○」と「三大」が好きだと言われますが、大学駅伝も三大で語られます。毎年10月にある出雲駅伝、11月にある全日本大学駅伝、正月にある箱根駅伝です。

駅伝シーズンのスタート 出雲駅伝

 大学駅伝シーズンの幕開けを告げる出雲駅伝の正式名称は「出雲全日本大学選抜駅伝競走」。三大駅伝では最も新しく、1989年に始まった大会です。毎年体育の日にあります。

 前年の3位までがシード校で、残りの13校は各地区学連の推薦という形を取ります。「選抜」と大会にうたう理由はここにあります。もちろん、推薦といっても机上で選ぶのではなく、別大会の上位校から選ぶ形を取っています。そのほか、各地区学連の選抜チーム、米国のアイビーリーグ選抜チームが走ります。

「大学日本一」を決める 全日本大学駅伝

 続いて11月上旬に行われるのが全日本大学駅伝。1970年に始まったこの駅伝大会は、正式には「秩父宮賜杯全日本大学駅伝対校選手権大会」と言います。前年の上位6校にシード権が与えられ、各地区の予選会を勝ち抜いた19校、さらに、全日本大学選抜、東海学連選抜を加えた27チームによって争われます。

 「秩父宮賜杯」を冠し、「選手権大会」とつくことから分かるように、「大学日本一」を決める大会です。なぜ、大学日本一という言葉にカギカッコをつけたかは、この後に述べる箱根駅伝の存在によります。

正月の風物詩 箱根駅伝

 三大駅伝で最も歴史を持ち、今度の正月で93回目を迎える箱根駅伝は「東京箱根間往復大学駅伝競走」。大学駅伝人気を引っ張る箱根駅伝こそが、大学日本一を決める大会だと思っている人は多いでしょう。事実、全日本で負けた選手も「箱根に向けて」とか、「箱根で雪辱」とよく言います。かつては、全日本で優勝しても胴上げをしないチームもありました。ピーキングもそれぞれの大会にあわせるものの、最高の調子にあわせるのは箱根です。出雲や全日本は経験を積ませるために1、2年生を積極的に起用したり、箱根のメンバー選びの場になったりもしています。30%に迫る視聴率、2日間の長丁場、そして、三大駅伝の締めくくり。そういったことが箱根の勝者=日本一の図式にしているのです。

 選手の意気込みや、大会の盛り上がりを鑑みて、筆者も箱根の勝者が日本一だと思いますが、なかなかそう言えない理由もあります。箱根の主催は関東学生陸上競技連盟で、箱根には関東の大学しか出場できません。つまりは、箱根は関東大会なのです。逆に言えば、関東以外の大学にとって、「三大駅伝」という存在はありません。出場できるのは最大でも出雲と全日本の二つのみ。2014年は台風の影響で出雲が実施されませんでしたが、こんな時は関東以外の大学にとっては「一大駅伝」となってしまいます。

なぜ箱根で勝つと日本一なのか

 さて、少し話を戻します。前言を翻すようになりますが、箱根が関東大会とはいえ、それでも日本一を決めると思える大きな理由の一つは、関東とそれ以外の地域の実力差にあります。

 箱根人気の影響で、高校のトップ選手は、ほぼ例外なく関東の有力校に進みます(今年の高校長距離ナンバーワンと言われる遠藤日向=福島・学法石川=は実業団の住友電工に進みますが、本当にレアなケースです)。関東に進む理由を聞けば、当たり前のごとく「箱根に出たい」と言います。高校球児における甲子園と一緒の原理です。関西の子どもたちも、関西の大学に進もうとはしません。

 普通、陸上競技において、大学に推薦で入るためには各種目の全国トップクラスでないとだめですが、長距離の場合は全国ランキング50位どころか、100位ぐらいでも推薦で合格するのではないかと言われています。それも、ほとんどが関東の大学です。大学は数時間も放送される駅伝を大学の「広告」になると考えています。特に長丁場の箱根はいいアピールの機会。長距離選手を欲する大学側、箱根を夢見る選手側、その思惑が一致し、実力のある選手のほぼ全員が関東に進みます。

 だから、関東の大学とその他の地域との実力差は明らかです。勝負になりません。全日本ではかつて、京都産業大学や福岡大学が優勝したことがありますが、1987年以降はすべて関東の大学が優勝。シード制が導入された2000年以降、関東の大学以外がシードを獲得したことはありません。そんな実力差を知れば、関東の1位=日本一と考えてしまうのも仕方のないことです。


 この三つで優勝することが大学駅伝3冠になります。過去、3冠を達成したのは1990年度の大東文化大学、2000年度の順天堂大学、2010年度の早稲田大学の3校だけです。実力があれば、どのレースも優勝しそうですが、なかなかそうはいきません。それはそれぞれのコースの違いが一つの理由になりますが、そのあたりは次回に。

Next: 「大学三大駅伝って?②~大会の特徴は~」