波乱は再び起こるのか?NFL2019ディビジョナルプレーオフ
NFL2019シーズンはプレーオフが既に始まり、先週末4チームがワイルドカード初戦を勝ちあがった。AFCではヒューストン・テキサンズとテネシー・タイタンズの南地区2チームが、NFCではミネソタ・バイキングスとシアトル・シーホークスが勝ち上がりを決めている。そしてその4チームは、1週休養を取り、万全の状態で待ち構える第1、2シードのチームに今週末挑むことになる。
ワンマッチで行われ、負ければ即シーズン終了となるNFLのプレーオフ。今週末の試合に勝ったチームは、カンファレンス決勝へと進出する。そのディビジョナルプレーオフ4試合の展望を、まずは日本時間の日曜日に行われる2試合からお届けしよう。
ミネソタ・バイキングス対サンフランシスコ・49ers
ディビジョナルプレーオフ4試合の中で、最も白熱した試合になりそうなのがこのカードだ。バイキングスは10勝6敗でワイルドカードに回ったとはいえ、その実力は侮れない。6敗したとはいえ、今シーズン負けた相手はシカゴ・ベアーズ以外は全てプレーオフ進出チームだからだ。そのベアーズ戦にしても、最終週の敗戦は消化試合でスターターが試合に出ていない中での敗北である。
そう、バイキングスは最終週スターターを休ませた。それは肩に怪我を抱えたエースランニングバック(RB)、ダルヴィン・クックを休ませることができたということだ。結果彼はプレーオフ初戦で28回のボールキャリーと3回のパスキャッチを記録し、攻撃の約半分を担うことになる。それがNFCの第3シードで格上と見なされていたニューオリンズ・セインツを、敗北へと導くことになったのだ。
また、パス攻撃の中心選手の1人で、今シーズン怪我で多くの試合を欠場した2017、18年のプロボウルワイドレーシーバー(WR)、アダム・シーレンがついに爆発したのもバイキングスにとっては朗報だ。ここにきてバイキングス攻撃陣は、本来の姿を取り戻したと言っていい。
しかし迎え撃つのは、NFC第1シードの49ersだ。レギュラーシーズン13勝3敗。負けた3試合も全てわずか3点差での敗戦と、名実ともに今年のNFC最強チームである。攻撃は全体4位。ラン攻撃は、あのボルチモア・レイブンズに次ぐ2位の獲得ヤードを記録している。
ラン攻撃ばかりに注目が集まるが、49ersの攻撃の凄みはパッシングチームのタレントレベルの高さにもある。タイトエンド(TE)でありながらシーズン1,000ヤードを記録したオールプロ選出のジョージ・キトルは、WRと比べても遜色のない軽やかな動きと柔らかなハンドスキルを持つ。パスキャッチTEにありがちなブロックの問題も彼には存在しない。NFLレベルでもほとんど存在しない完璧なTEとして、将来NFL史に名を残すことになる選手だ。
第8週にトレードでデンバー・ブロンコスから加わったWR、エマニュエル・サンダースは、それまでキトル以外に信頼のおける選手のいなかった49ersレシーバー陣に、ベテランらしい安定感を与えた。彼の加入は他のレシーバーにも良い影響をもたらしており、ルーキーWR、ディーボ・サミュエルは、サンダースの加入した第8週以降飛躍的に数字を伸ばし、ルーキーとしては十分過ぎる802ヤードを獲得した。不安とともに始まった49ersのパス攻撃陣は、終わってみればNFLトップレベルにまで進化することになったのだ。
守備は全体2位で、パス守備はトップ。それも断トツのトップだ。強力なフロントライン4人によるパスラッシュは、ブリッツを入れなくてもQBにプレッシャーをかけることができる。そのため枚数をかけてしっかりとゾーンディフェンスを敷けるのが49ersディフェンスの強みだ。
1週多く休めたことで49ersはスターターの怪我人の多くが練習に復帰。両チームともにコンディションは万全に近い状態で試合に臨めそうだ。バイキングスは走れないQB、カーク・カズンズが49ers守備フロントのプレッシャーをかわすために、スクリーンやジェットスイープなどDEの動きを制限するプレーの使い方が重要になる。自力で勝る49ersはターンオーバーを与えないこと。そうすれば自ずと勝利は近づくはずだ。
テネシー・タイタンズ対ボルチモア・レイブンズ
今シーズン多くの話題を提供した2チームの対戦となるこの試合。タイタンズはエースQBマーカス・マリオタの不調で序盤戦苦しんだ。ヘッドコーチ、マイク・ブラベルはエースを下げることを決断し、新たに加入した元マイアミ・ドルフィンズのQB、ライアン・タネヒルを先発させると、そこからチームの快進撃が始まった。
彼が先発した第7週以降、チームは8勝3敗。彼自身もPFF.comのQBグレード評価で1位を獲得するほどの活躍を見せる。そしてエースRBデリック・ヘンリーはリーディングラッシャーのタイトルを獲得。プレーオフ初戦は、昨年のチャンピオンチームで、ホームのプレーオフでは2012年以来負けのなかったニューイングランド・ペイトリオッツを破っての勝ち上がりだ。
しかし対戦相手となるレイブンズが今シーズン提供した話題は、そんなタイタンズすら遥かに凌駕する。
記録的なシーズンとなった今年のレイブンズ。リーグ最高勝率14勝2敗は、チーム史上でも最高勝率となる。ラン攻撃3,296ヤードは、1978年のペイトリオッツが持っていたNFL記録を抜き歴代トップ。ランとパス攻撃の1試合あたりの平均が、どちらも200ヤードを超えた史上初めてのチームであり、そのオフェンスを率いたエースQB、ラマー・ジャクソンは、あのマイケル・ヴィックを超えるQB史上最多の1,103ヤードをランで獲得した。ジャクソンは今シーズンのMVP最有力候補で、ほぼ間違いなく選ばれることになるだろう。
圧倒的な攻撃力だけではない。守備も喪失ヤード4位。失点は3位と盤石。シーズン序盤こそ多くの失点を重ねたが、フリーエージェントで入団したセーフティ、アール・トーマスがフィットしてからは安定。第7週にオールプロコーナーバック(CB)、マーカス・ピーターズが加入してからは全く隙がなくなった。彼とマーロン・ハンフリーは、NFL屈指のCBタンデムだ。
今年のレイブンズはNFL史に残る強力なチームであり、このチームがここで負けることは正直想像し難い。エースRB、マーク・イングラムの怪我だけが懸念材料だが、控えのガス・エドワーズとて2年連続で700ヤード以上走っているランナーだ。イングラムが出場できなくてもその攻撃の破壊力に変わりはないだろう。
タイタンズとしては、先週の試合のようにボールをポゼッションできるかがカギとなる。レイブンズオフェンスにボールを渡さず、ターンオーバーのチャンスを待つしかない。そしてオープンフィールドに出たジャクソンに、強力なタックルをひたすら積み上げる以外彼らにできることはないだろう。