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スパイゲート事件再び?昨年のスーパーボウル王者、ペイトリオッツにまたしても盗撮疑惑

2019 12/11 17:12末吉琢磨
ペイトリオッツのビル・ベリチックHCⒸゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

ペイトリオッツによる盗撮疑惑が発覚

プレーオフがかかった重要な試合が続く終盤戦のNFL。そんな白熱するNFLに水を差しかねないニュースが、現地9日(月)に報じられた。

現在AFC東地区首位を走るニューイングランド・ペイトリオッツのスタッフが、先週行われたシンシナティ・ベンガルズとクリーブランド・ブラウンズの試合中に、ベンガルズのベンチを撮影していたというのがその内容だ。ベンガルズは今週末にペイトリオッツと対戦するチームである。

NFL.comが報じた内容によると、ペイトリオッツの撮影スタッフが、ブラウンズの記者席からベンガルズのサイドラインを撮影。それを見咎めたベンガルズのスタッフとNFLセキュリティにより映像は没収され、現在リーグが調査を行っているとのことである。もちろん撮影はリーグの規定で禁止されている。ペイトリオッツのヘッドコーチ、ビル・ベリチックは、この件について自分は関りがなく、何も知らないとコメントを残している。

ペイトリオッツがオフィシャルホームページ上で発表したステートメントによると、今回撮影したのは球団としてこの1年間撮影を続けているドキュメンタリー「Do Your Job」の撮影スタッフであり、球団のスカウティング部門の取材のためにこの試合に派遣されたとのこと。彼らはリーグの詳細なルールに疎く、そのために不適切な撮影をしてしまった、と球団側は述べている。また撮影スタッフはチーム関係者ではなく映像制作のための独立したクルーで、チームの現場スタッフとのかかわりは全くないとも付け加えられている。

しかしNBC Sports.comは現地10日(火)の記事で、没収された映像にはベンガルズのサイドラインが8分間にもわたり撮影されていて、そこにはコーチがフィールドの選手に送るサインが映し出されていた、と報じている。試合とは直接関係ない周辺スタッフの取材のために、その取材内容とは全く関係ない他のチームのサイドラインを8分間撮影するということが果たして有り得ることなのか。調査についてのリーグからの発表はまだない。

アメリカスポーツ界全体を騒がす不正疑惑

アメリカスポーツ界は今、野球のプロリーグMLBでも盗撮によるサイン盗み疑惑が取り沙汰されている。ヒューストン・アストロズが、優勝した2017年にチームぐるみで不正を行っていた、というのがそれだ。日本人メジャーリーガー、ダルビッシュ有がYouTubeやTwitterで取り上げたことで、日本のスポーツファンの間でも広く認知されることになったこの疑惑についても、MLBによる調査が現在進行形で行われている。

アメリカスポーツ界において、このように不正が大きくクローズアップされている中で起きた今回の事件。もし本当に不正のための撮影が行われていたとなれば、マスコミも大きなネガティブキャンペーンを繰り広げることになるはずで、それはチームのプレーオフでの戦いにも影響することになるだろう。

付け加えれば、フットボールファンにとっては「またか」という思いもある。ペイトリオッツには、2002年に行われたスーパーボウルでの盗撮疑惑があった。これについては証拠不十分で無罪とされたが、その後2007シーズン開幕戦で再び盗撮事件を起こし、今度は有罪となっている。この件でリーグからベリチック個人に50万ドル、日本円で約6000万円の罰金が、そしてチームにも25万ドル、日本円で約3000万円の罰金が科せられ、翌2008シーズンのドラフト1巡指名権が剥奪された。「スパイゲート事件」と言われたこの事件以外にも、2014シーズンには試合球の空気圧を調整する不正、いわゆる「デフレゲート事件」もペイトリオッツは起こしている。

このように「前科」があるチームだけに、今回また、ということになれば、ペイトリオッツ贔屓と言われるリーグも厳しい対応をせざるを得ない。そして、それはもしかした5連覇を果たした頃のニューヨーク・ヤンキースや、マイケル・ジョーダンを擁したシカゴ・ブルズと並び、アメリカプロスポーツ史上最も支配的な王朝を築いていると言われる現在のペイトリオッツの今後に影を落とすことにもなりかねないのだ。

ただこれだけは言える。もしペイトリオッツによるベンガルズへの盗撮が真実なら、今シーズン既に10勝を上げ地区トップを走る昨年のチャンピオンチームが、今シーズン僅か1勝、勝率リーグ最低のチーム相手にスパイを行ったということになる。そこにはペイトリオッツが残した実績から来る油断など、微塵も感じることはできないということだ。