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複雑なルールも分かれば面白い⑦ アメリカンフットボールは反則も細かい

2018 10/21 11:00SPAIA編集部
アメリカンフットボールのプレー
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反則の重さによって罰退距離が違う

今春、アメリカンフットボールが図らずも世の中の注目を浴びるきっかけとなったのは、関西学院大学と日本大学の定期戦における、悪質な反則行為だった。ポジションが細分化され、ルールも複雑なアメフトでは、反則も細かいのが特徴である。最終回は主な反則について紹介する。

アメフトの反則は、その程度によって罰退が異なる。簡単に言えば、軽い反則から重い反則にかけて、後退させられる距離がどんどん長くなる。最も軽い反則の罰退距離は5ヤードになる。

5ヤード罰退の反則で最も有名なのは「ディレイ・オブ・ゲーム(Delay of game)」だろう。文字通り、試合を遅らせる反則である。審判のプレー開始宣告から40秒(もしくは25秒)たっても攻撃を開始しないと、この反則になる。

同じくらいに有名なのは「フォルス・スタート(False Start)」だ。攻撃側の反則で、攻撃を開始する前に、攻撃を始めたと勘違いさせるような動きをした場合の反則である。

フォルス・スタートの守備バージョンと呼べるのが、「オフサイド(Offside)」だ。攻撃のスナップの前に、守備の選手がスクリメージラインを超えてしまうこと。これも5ヤードの罰退だ。ただし、相手側に入っても、相手のスナップ前に自陣戻れば反則とはならない。

「イリーガル・モーション(Illegal Motion)」はスナップする前の攻撃側のモーションが不正なときの反則で、5ヤードの罰退になる。攻撃側は、1人だけスナップ直前でも動いていることが許されているのだが、
1.攻撃側の選手全員が、1秒以上の静止したのちに動くこと
2.バックの選手であること
3.相手ゴールライン方向(前方)へ動かないこと
この3つを守っていないと、反則になる。

パス失敗も反則に

次に重い反則は10ヤードの罰退が課せられる。

10ヤード罰退の中、最も知られているのは「ホールディング(Holding)」だ。とにかく、この反則は多い。これは攻撃側も守備側もとられるのだが、全く同じというものではない。攻撃では、パス攻撃のときにクォーターバック(QB)を守るプロテクションや、ラン攻撃のときのブロックの際に守備側の選手の体をつかんだり、体に巻き付いたりするとホールディングになる。守備では、ボールを持っていない選手をタックルしたり、つかんだりするとこの反則になる。守備でのホールディングはNFLでの罰退は5ヤード。さらに、攻撃陣に自動的にファーストダウンを与えてしまうことになる。

パス失敗が反則になる時もある。「インテンショナル・グラウンディング(Intentional Grounding)」だ。QBが相手に捕まって大きなロスをしてしまいそうなときに、故意にパスを投げ捨てる時がある。このパスの先にワイドレシーバーやランニングバックなど、パスを受け取る資格がある選手がいれば問題はないが、いないのに投げるとこの反則になる。10ヤード罰退もしくは投げ捨てた地点まで罰退となる。

ケガの危険を伴う反則には重い罰則

最も重い反則は15ヤードの罰退になる。そのほとんどが「パーソナル・ファウル(Personal Foul)」に定義されるものになる。このパーソナル・ファウルはケガを招く危険な行為に対して課せられる。

パーソナル・ファウルの中にはいくつかの反則がある。「フェイス・マスク(Facemask)」は顔面を守るヘルメット前方の網のようになった部分をつかむ反則だ。攻撃、守備両方に適用される。フェイス・マスクをつかんで振り回すと首の骨をケガする恐れがあり、重い罰則となっている。

「ラフィング・ザ・パサー(Roughing the Passer)」はパスを投げ終えたQBに対し、守備側がタックルをした場合の反則である。パスを投げたQBは無防備なので、QBを保護するための反則である。同じようにキッカーを守るための反則があり、「ラフィング・ザ・キッカー(Roughing the Kicker)」と呼ばれる。

そのほか「アンネセサリー・ラフネス(Unnecessary Roughness)」と呼ばれるものがある。これは不必要な暴力行為を指すものであり、今春に日大の選手が行った最初の悪質タックル(プレーが終わってからのQBへの背後からのタックル)はこの反則に当たる。

ここまでアメフトの主な反則を列挙したが、数ある反則の中のごく一部を紹介したにすぎない。ルールや反則を覚えるには試合を見るのが一番だ。これからアメフトのシーズンは真っ盛り。12月16日には学生日本一を決める「甲子園ボウル」、その翌日には社会人日本一を決める「ジャパン・エックス・ボウル」があり、来年1月3日には学生と社会人のチャンピオンが戦い日本一を決める「ライスボウル」がある。一度足を運んでみることをおすすめする。(終)