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複雑なルールも分かれば面白い⑤ アメリカンフットボールには「自由の女神」もある

2018 8/5 15:00SPAIA編集部
アメリカンフットボール,アメフト,ⒸShutterstock.com
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複雑すぎるフェイク

前回、アメリカンフットボールはだまし合いのスポーツでもあると説明した。その中で、めったにお目にかかれない「スペシャルプレー」なる攻撃があることもお伝えした。今回は前回で伝えきれなかったいくつかのスペシャルプレーを紹介する。

前回説明したプレーアクションパスの発展形となる「フリーフリッカー」というプレーも有名だ。

プレーアクションパスは、ランニングバック(RB)にボールを渡すふりをしてのパスプレーだったが、フリーフリッカーはRBにボールを渡す。しかし、RBはランプレーをすると見せて、後ろにいるクォーターバック(QB)にボールを投げる。そして、QBがパスを投げるというプレーである。

アメフトでは前へのパスは1度しか投げられないが、ハンドオフや後ろに投げることは何度でもできる。そのため、フリーフリッカーのようなプレーが生まれる。このフリーフリッカーはフェイクの時間が長いため、パスを受けるワイドレシーバー(WR)が遠くまで走ることができる。成功すればロングゲインが期待できるプレーなのである。

さらに、フリーフリッカーの発展形で、リバースとの「融合技」もある。その名も「リバースフリーフリッカー」という。1回以上のリバースプレーを展開すると見せかけておいて、ボールを持った選手が後ろに引いているQBにボールを渡し、QBがロングパスを投げるというものだ。リバースに対応してきた守備陣が前進するのを尻目に、その後ろにパスを通すというものだが、フェイクの時間がフリーフリッカー以上に長く、さらなるロングゲインが期待できる。

あのアメリカの象徴の名がついたプレーも

米国らしいネーミングのスペシャルプレーもある。「スタチューオブリバティー」。自由の女神、という意味である。

QBは通常のパスプレーのように投げるふりをする。だが、QBはこのとき利き手の方にボールは持っておらず、体をうまく使いながら逆の手に隠し持っている。そして、走り寄ってきたRBがQBからこっそりとボールを奪い、走っていくというものである。利き手を高く掲げ、逆の手でボールを抱えているQBの形が、たいまつを掲げ、左手に銘板を持っている自由の女神に似ているから、「スタチューオブリバティー」の名が付いた。守備陣がパスプレーと勘違いして後退したところをついて、ランプレーで前進するというものである。

キックでもスペシャルプレーが

「パント」とは、4回目の攻撃で攻撃権を更新するのが難しそうな場合、パンターが陣地を挽回するためにキックするプレーである。

このパントをすると見せかけて、ファーストダウン獲得を目指すのが「フェイクパント」である。ボールを受けたパンターがパスを投げるときもあれば、ランプレーをするときもある。試合が終盤にさしかかり、勝つためにはどうしても攻撃権を継続したいという時によく用いられる。

4回目の攻撃で3点を狙いにいく「フィールドゴール」でも、フェイクプレーがある。パントの時と同様、試合終盤で3点では負けてしまうという時などでよく用いられる。フィールドゴールの場合、センターからスナップされたボールをホルダーと呼ばれる選手がキャッチし、地面に置いて、キッカーがキックする。フェイクフィールドゴールの場合、ホルダーやキッカーがパスを投げたり、走ったりする。

ホルダーはボール扱うことに慣れていることが必要であるため、WRや控えのQBが行うことが多いポジションである。控えQBがホルダーをしている場合、パスを投げることにも慣れているので、キッカーではなくホルダーの選手がパスを投げることが比較的多くなる。

このほか、多くのスペシャルプレーが存在する。アメフトでは、いかに相手を欺けるかが問われる中、最も豪快に相手をだますのがこのスペシャルプレーである。プレーが出てきたときの驚きと、プレーが決まったときの興奮はほかのプレーとは別物である。めったに見られないプレーだけに、お目にかかれたらラッキーでもある。(続く)