見るものを欺く「フェイク」
アメリカンフットボールの魅力の一つが、その攻撃の複雑さだ。基本はランとパスで行われるが、相手守備陣にランと思わせてパスを投げることもあれば、その逆もある。相手をだますプレーを「フェイク」と呼ぶ。アメフトとはある意味、だまし合いのスポーツである。
試合中によく見るのが、「プレーアクションパス」というプレーだ。
これは、ランプレーのふりをして、パスを投げるというもの。ラインのセンターからボールをスナップされたクォーターバック(QB)が、ランニングバック(RB)にハンドオフする(ボールを渡す)ように見せかけて、パスを投げる。ハンドオフのふりをするのが「フェイク」である。
相手守備陣はランプレーと思って突進してくるから、後ろのスペースが空く。そこにワイドレシーバー(WR)が走り込み、パスを受ける。QBのフェイクがうまいと、見ているものはランプレーと思って、RBの動きを追ってしまう。テレビの中継でも、カメラマンが時々だまされてしまう時がある。
逆にパスと見せかけて、ランプレーをするときもある。その一つに「ドロー」というプレーがある。
スナップを受けたQBがパスを投げるようにドロップバックする(前を向いたまま後ろに下がる)ふりをして、近くにいるRBにハンドオフをして、RBがランプレーで前進する。
QBがパスをするように後ろに下がるので、相手守備陣はパスを警戒して後ろに下がる。そのため、守備陣の前方にスペースができる。そのスペースを狙って、RBがゲインするというものである。