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全日本学生柔道優勝大会は素材の宝庫 2019年は東海大が男女制覇

2019 6/28 11:00藤井一
イメージ画像Ⓒsportpoint/Shutterstock.com
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多くの選手がこの大会を経験し、成長した

6月22、23日の両日、日本武道館で大学の団体日本一を決める全日本学生柔道優勝大会が開催され、男女とも東海大が優勝し男子は4連覇を飾った。男子は7人制で、体重無差別。女子は5人制で先鋒次鋒戦が57㎏級、中堅副将戦が70㎏級、最後の大将戦だけが体重無差別で争われる。個人戦とは違った意味での団体戦の「負けられない」プレッシャーが、強い精神力を育てる大会だ。

この大会は将来の日本を担う素材の宝庫でもある。この大会で活躍し世界に羽ばたいた選手は枚挙にいとまがない。

近年では一昨年、東海大の主将として母校を優勝に導いたウルフアロンがその典型だ。同年の世界選手権100㎏級で優勝し、昨年連覇はならなかったが今年の体重無差別で争われる全日本選手権も初制覇、彼は今年8月東京(日本武道館)で行われる世界選手権、来年の東京オリンピック100㎏級の金メダル最有力候補である。

今年は村尾三四郎、飯田健太郎、立川新に注目

今大会で将来を期待したくなる選手は男子に多かった。

まずは東海大1年90㎏級の村尾三四郎である。高校時代から抜群の身体能力と技のキレで評価は高かったが、組みぎわの仕掛けの速さ、特に大外刈りは、嵌れば一瞬で相手を投げ飛ばす。団体戦には欠かせない一人として1年生ながら母校の優勝に大きく貢献した。90㎏級は正直なところ、世界の壁が厚い。彼の今後の成長には大いに期待したい。

同階級では他に筑波大4年の田嶋剛希も「柔よく剛を制す」を地でいく柔道で会場の日本武道館を沸かせた。筑波大は決勝で東海大に1-3(3 引き分け)で敗れたのだが、その1勝は田嶋が、身長で10㎝以上、体重で50㎏以上上回る清水拓実を大内刈りでなぎ倒して技ありを奪い、そのまま抑え込んで1本勝ちしたもの。

田嶋は準決勝でも国士館大3年の100㎏級のホープ飯田健太郎に豪快な大外刈りで1本勝ちしていて、筑波大のポイントゲッターとして大活躍した。こんな選手が世界の舞台で活躍したらこれほど痛快なことはない。

柔道は年々、というより日々進化している。組み手が強くなければ世界で戦えないことは改めて強調するまでもないが、相手に好きなところを持たせず、自分が持ちたいところを持つためには高い技術が必要不可欠だ。その組み手で絶対的な強さを発揮しているのが東海大4年73㎏級の立川新である。

組み手の強さと受けの強さで対戦相手にまず負けることはないという信頼感から73㎏級の選手ながら名門東海大で昨年も今年も決勝で起用され、見事期待に応え、母校の優勝に貢献した。この階級には2016年リオデジャネイロ五輪金の日本の大黒柱といってもいい大野将平がいるので、来年の東京五輪というより将来の日本のエースとして期待したい。

きょうだい選手にも注目

立川は柔道ファンにはよく知られた4人きょうだいの2番目だ。1つ違いの姉・莉奈は昨年の全日本学生体重別52㎏級を制し、今春福岡県警に入った。また3つ違いの妹・桃は今年東海大に入学、優勝メンバーの一人として70㎏級で大活躍した。つまり立川新・桃は東海大の男女アベック優勝に兄妹で貢献したのだ。さらに桃の2つ下の妹・真奈も全国レベルで活躍、現在新田高校の2年生である。

かつて柔道界で有名だったのは佳央、行成、兼三の中村3兄弟。3人とも階級が違いそろって世界選手権の金メダリストであり兼三は96年のアトランタ五輪も制した。そして今、最も有名な柔道界のきょうだいといえば今大会には出場しなかった一二三、詩の阿部兄妹(ともに日体大)。来年そろって東京オリンピックで金メダルを獲る可能性は少なくない。

また、現役時代、平成の三四郎と言われた92年バルセロナ五輪71㎏級金メダリスト古賀稔彦氏にも3人の有望な子供がいる。日体大4年長男・颯人、同じく3年の次男・玄暉、さらに環太平洋大1年の長女・ひよりだ。颯人、ひよりは今大会に出場し、母校をそれぞれ3位に入賞させる活躍、非凡な素質を存分に見せてくれた。

超級に課題も日本柔道の将来に希望膨らむ

最も気になる男子100㎏超級が、全日本選手権で準決勝まで進出した東海大主将の太田彪雅以外、若干小粒な印象ではあったが、日本柔道期待の星はしっかり育っていることが実感できた大会だった。将来はきっと輝くであろう彼らをぜひ、記憶にとどめておいてほしい。

  最後に今大会最注目であった選手についても触れておこう。環太平洋大1年、まだ18歳ながら全日本選手権2連覇中で今年の世界選手権78㎏超級代表でもある素根輝である。彼女は1、2回戦には出場したのだが、準々決勝以降出場しなかった。世界選手権に向けて調整途中というところだったのかもしれないが、パフォーマンスも今一つだった。素根にとっては今年8月の世界選手権でその真価が問われよう。大いに注目してもらいたい。