ジュリー制度とは?
ジュリー制度とは、一言でいえば審判を監督する審判だ。これまで柔道の試合は主審1人と副審2人によって進行されていた。1994年に導入されたジュリー制度では、ジュリー(審判委員)で構成される審判委員会が設けられ、試合進行を行う審判を監督する。
国際柔道連盟の規定によると、ジュリーには試合を止める、審判団と協議するなどの権限がある。しかし、このジュリーの権限がどの程度認められるのか不明な点もあり、2013年からは後述する新ルールが試験導入されている。
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大胆な一本背負いから細かい足技まで見ごたえのある柔道。審判はそんな激しい技の応酬を正確に判定する必要がある。そこで導入されたのがジュリー制度だ。今回は初めてこの言葉を聞く方に向けて、ジュリー制度を解説していく。
ジュリー制度とは、一言でいえば審判を監督する審判だ。これまで柔道の試合は主審1人と副審2人によって進行されていた。1994年に導入されたジュリー制度では、ジュリー(審判委員)で構成される審判委員会が設けられ、試合進行を行う審判を監督する。
国際柔道連盟の規定によると、ジュリーには試合を止める、審判団と協議するなどの権限がある。しかし、このジュリーの権限がどの程度認められるのか不明な点もあり、2013年からは後述する新ルールが試験導入されている。
ジュリー制度が導入されたのは、これまでオリンピックなどの国際大会において、本来ならば自身のポイントであるにもかかわらず相手のポイントになってしまうなど、審判の判定を巡る騒動が多く見られたためだ。ジュリー制度導入後には、このような誤審が少なくなったが、「審判が一度判定を示して試合場を離れてから判定を変えてはならない」といった国際柔道連盟の審判規定と矛盾するなど、ジュリー制度そのものの問題点も見られるようになった。
柔道の判定に関して日本でも大きく話題となったのが、2000年のシドニーオリンピック、柔道男子100キロ超級決勝の篠原信一の試合だ。この試合では主審による相手選手の有効という判断と副審による篠原さんの一本という判断に分かれたのだが、協議が行われずに試合を継続。最終的に有効1つの差で篠原さんが敗れることになり、先述の審判規定や、試合場外にいるジュリーがはっきりと状況を確認できなかったこと、あくまで審判に技の判定権があるなどの理由で、日本チームの抗議も認められなかった。
この誤審問題をきっかけとして、ビデオ判定が導入されることに。3台のビデオカメラで3方向から撮影する「CAREシステム」の映像をジュリーが確認することで、より厳格に審判の判定をチェックできるようになった。
ここまでご紹介したジュリー制度とビデオ判定システムの導入で、公平なチェック体制が整ったかのように見えるが、新たな問題が浮上する。それは、ジュリーが恣意的な指示をした場合でも、審判はそれに従わざるを得ないということだ。審判から見れば、第三者の立場で、さらにビデオもチェックしているジュリーの指示は正確に思われる。
しかし、ビデオ判定の導入後、ジュリーが審判の判定に介入するケースが増加し、明らかにジュリーの恣意的な判定だと分かるようなケースも現れるなど、判定に関しての問題が解消されていないことが明らかになる。
2013年より、それまでの畳上での旗判定を廃止して副審2人もジュリーと共にビデオチェックを行う新ルールが試験導入。そして、この新ルールはリオオリンピックが開催された2016年に正式導入された。しかし、ジュリーが審判の判定に介入できるとされる例外的なケースへの具体的な言及がされないままの状態となっている。
とはいえ、これまで日本選手もたびたび涙を流した「審判が試合会場を離れてからは判定を覆すことはできない」というルールは、明らかにミスだと分かるケースのみ判定の訂正が認められるようになったことは、すべての柔道選手にとって明るい知らせとなった。
普通に柔道の試合を観戦していると畳の上で戦う選手に注目が集まるが、畳の外では複雑なジュリー制度があるということに気が付く。これまでの歴史を振り返ると、公平な判定システムが整ってきていることが分かる。2審もビデオ判定ができるなど、一審判の視野と客観性にのみ頼ることなく判定されれば、国際ルールでわかりにくくなっている試合も少しは納得して見ることができるのではないだろうか。