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モーグル堀島行真、痛恨の失敗も北京五輪で銅メダルに輝いた理由

2022 2/11 06:00田村崇仁
男子モーグルで銅メダルに輝いた堀島行真,Ⓒゲッティイメージズ

Ⓒゲッティイメージズ

採点は3要素、6割比重ターンのミス取り返したタイム

北京冬季五輪のフリースタイルスキー男子モーグルで81.48点をマークして銅メダルに輝き、今大会の日本勢メダル第1号となった堀島行真(トヨタ自動車)はなぜ世界トップクラスの生命線であるターンで失敗しても表彰台に立てたのか。

詳細なリザルトを分析すると、今季のワールドカップ(W杯)で3勝と進化してきた24歳のエースは「雪のコブ」を攻めるモーグルがターン、エア(空中技)、タイムの3要素で勝負する種目であることを改めて証明した。

ノルウェー語で「雪のコブ」を意味するモーグルはその名の通り、数多くのコブが配置された急斜面をスピードに乗って滑り降りる種目。100点満点の採点競技で、コブに沿って滑るターンの比重が60%と最も高く、勝負の鍵となる。2カ所のジャンプ台で繰り出す空中技「エア」も見せ場で比重は20%。残り20%をタイムが占める。

堀島は上位6人による決勝3回目で第1エアの着地後のターンで明らかに乱れ、スキー板が暴れかけたが、ここからスピードのタイムで挽回して銅メダルを獲得した。

採点比重はターンが60%、エアとタイムは各20%

採点で最大比重のターンでのミスは痛かったが、エアとタイムでカバーした滑りだった。

ターン点だけで見ると、堀島は6選手中最多の2.7点の減点を受け、4位のベンジャミン・カベ(フランス)と並んで最低の47.4点。それでもフルツイスト(伸身後方1回宙返り1回ひねり)と、コーク1080(軸をずらした3回転)の構成で臨んだエアは全体3番目の17.54点をマークした。

さらにスピードではターンのミスを補い、16.54点で金メダルに輝いた21歳の伏兵バルテル・バルベリ(スウェーデン)に次いで2番目に高かった。ミスにも動じず、攻め切った結果だった。

タイムではワールドカップ(W杯)歴代最多71勝を誇る絶対王者ミカエル・キングズベリー(カナダ)を1.53点も上回った。

ジャッジの主観的な要素がないタイム点

モーグルでターンが重視されるのは間違いない。しかし、決勝6人のターン点差は銀メダルだったキングズベリーがトップの49.6点で最低タイの堀島と2.2点差のみ。一方でタイムは1位のバルベリと最下位6位で2.61点差あった。

ジャッジが採点するターンやエアと違い、タイムはもちろん主観の入り込む余地がない。堀島は一発狙いで攻撃的に滑ったバルベリにこそ及ばなかったものの、絶対的な「速さ」で確実なタイム点を稼いだことが初のメダルにつながった。

他競技で磨いた空中技

前回の平昌冬季五輪では転倒して11位と惨敗。北京大会も予選1回目はミスが出て一発通過できなかったが、予選2回目からはい上がった。

この4年間はターンの技術を徹底的に強化し、飛び込みやトランポリン、体操、パルクール、スノーボードといった他競技にも積極的に挑戦して空中感覚を磨いたことで得意のエアに安定感が増したという。

そして最後の決勝3回目ではそれまでの25秒台から一気に23秒台のタイムをマーク。当然、スピードを出せば出すほど、急斜面を滑り降りる中でターンやエアの乱れにつながるリスクが高まるものの、最後まで攻め続けたスピードでミスをカバーした形だ。

W杯で開幕戦から9戦連続で表彰台という圧倒的な安定感。堀島の成長を支えるのは尊敬するキングズベリーの存在も大きい。「夢の金メダル」へさらなる挑戦は続く。

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