ワールドカップの熱狂冷めやらぬ中、Bリーグ開幕
今シーズンのバスケットボール男子Bリーグが10月5日、開幕した。今夏のFIBAバスケットボールワールドカップでの日本代表の激闘に熱狂した人々の関心を取り込んでの国内リーグのシーズン突入とあって、B1開幕戦の佐賀バルーナーズ対琉球ゴールデンキングスが行われた佐賀・SAGAアリーナには、水曜日の夜にも関わらず7022人が集まった。
バスケW杯で一躍の時の人となったのが、横浜ビー・コルセアーズの河村勇輝。173cmと国際舞台で戦うには小柄ながらも、驚異的なスピードのドライブと、プレッシャーのかかる中でもシュートを決める22歳の若武者のプレーに普段バスケを見る機会がない人ですら魅了された。
河村はW杯前の昨シーズンのBリーグでも、一大ムーブメントとなるほどの大活躍を見せていた。それに呼応して横浜ビー・コルセアーズの試合では観客が増え、プレミアチケット化していった。
河村は将来的なNBAへの挑戦を口にしているものの、今シーズンも河村のプレーを日本で、Bリーグで見ることができるのは嬉しい限り。一方で、河村の大活躍はBリーグの同世代や下の世代の選手たちに大きな刺激を与えている。
あと一歩だったW杯代表メンバー入り 金近廉
千葉ジェッツの金近廉(20歳)。今春、W杯メンバー入りを目指し、東海大学を中退して千葉ジェッツに入団した。河村は東海大の1学年上の先輩にあたる。
金近は196cmと高さがあり、スリーポイント能力も備えた万能型スモールフォワード。関西大学北陽高校時代から注目され、各アンダーカテゴリー日本代表にも入ってきた。昨冬のインカレ優勝にも貢献した金近は、今年2月の代表合宿でトム・ホーバスHC(ヘッドコーチ)に認められ、W杯アジア地区2次予選に抜擢された。
さらに、そこでいきなり活躍して一気にW杯本大会メンバー争いに食い込んだ。しかし、15名の候補までは入ったが、最後の最後で外れて悔しい思いをした。
千葉ジェッツの一員としてのデビュー戦となった9月9日のプレシーズンマッチ後の会見で、金近は代表への思いを改めてかみしめていた。
「メンバーには入れなかったですけど、結果としてパリ五輪行きを決めて、日本としては今までにないくらいの結果を残したと思いますし、自分が小さい頃から見てきた日本代表とは大きく違ってきている。自分がその中にいたかったという思いは正直あるけど、まだまだ足りない部分が多いなと感じる部分も自分の中であった。その思いをBリーグに向けてしっかり調整して、パリ五輪では自分を選んでほしいというか、選べよ、というくらいの気持ちでやっていきたい」
河村勇輝より先にリーグファイナル経験 小川麻斗
千葉ジェッツには河村の福岡第一高校の同級生である小川麻斗(22歳)がいる。河村と共にウィンターカップ2連覇を果たすなど高校で多くのタイトルを獲ってきた。
176cmのポイントガード(PG)で、昨年12月に日本体育大学バスケ部を退部して千葉ジェッツとプロ契約。シーズン途中での加入ではあったが、守備の遂行力を買われて出場機会を増やし、レギュラーシーズン35試合、平均プレー時間11分17秒、プレーオフでも7試合、平均プレー時間12分56秒と必要な戦力として活躍を見せた。そして、河村より一足先にリーグのファイナルの出場も果たしてみせた。
W杯前には河村から「早く代表で一緒にやりたいね」とLINEをもらっていたという。小川ももちろん日本代表に対する意欲は持っているが、それでもまだ足りないと話す。
「⽇本代表になるには今のままではダメだと思ったし、代表のPGは勇輝(河村)だけではないので、選ばれるには昨シーズンよりももっとレギュラーシーズンで活躍していかないとダメ。⼀緒にプレーしたい気持ちはあるものの、Bリーグだと同じチームになるしかないですが、⼀緒にプレーしているところを⾒たいと思ってくれている⼈もいると思う。⽇本代表でプレーできれば、それがかなうかもしれないので頑張りたい」
筆者提供
リーグ戦だけであれば、昨シーズンの小川の活躍ぶりも十分評価できるものだと思うが、それでも小川は河村にはある種、尊敬の念を持っているようだ。
「(河村は)強い気持ちを持ってやってきたからこそあれだけの結果を残せてる。⾃分は昨季のファイナルで結果を出せなかったので(※千葉ジェッツはファイナルで琉球ゴールデンキングスに敗れた)、やはりチームを勝たせてきた勇輝はすごいなと思うし、そうやってずっと努⼒してきたからこそ、代表であれだけの活躍ができたと思う。⾃分もまずはもっとチームを勝たせられるように頑張っていきたい」
まずは千葉ジェッツで確固たる地位を固め、そしてその先に代表を見据える。
「2028年のロサンゼルス五輪、その出場を決めるW杯までには代表に⼊れるように頑張りたい」
高卒Bリーグ入りした大型PG 湧川颯斗
194cmの大型PGとして将来性が注目されている、B2の滋賀レイクス・湧川颯斗(19歳)も、河村らの刺激を受けていた。
昨年12月、福岡大学附属大濠高校3年だった湧川は、大学を経ずに当時B1の滋賀レイクス入りして大きな話題を呼んだ。まずは特別指定選手として契約し、今年6月に正式にプロ契約。現在のバスケ界では、高校の有力選手が直接Bリーグ入りするケースは少ないだけに、湧川の入団は注目を集めた。
レイクスはB2降格の憂き目にあったが、ダビー・ゴメスHCから認められ、リーグ昇降格のかかっていた重要なシーズン終盤戦の4月には、ローテーション入りするなどプレータイムを伸ばしていた。
また、今年6月から7月に行われたハンガリーでのU19W杯では、主力として日本代表のベスト8入りに貢献。全てのカテゴリーを含めて日本代表がベスト8入りしたのは史上初のことだった。
湧川の様な大型ポイントガードは日本代表に求められているだけに、B2とはいえ活躍次第では代表候補として呼ばれる可能性はあるだろう。
筆者提供
湧川はW杯中の8月27日に行われた滋賀レイクスの新体制発表会で、年齢の近い代表選手たちの活躍に負けていられないと意気込んでいた。
「W杯の日本戦を見ていて、河村選手だったり若い選手が活躍している印象が強かった。(W杯登録メンバーの)12人には残っていないけど、自分の2歳上の金近選手だったり、自分が高校の時に試合をした選手が数年後にA代表に入っている姿を見たら、自分もまだまだ頑張らないといけない」
躍進著しい日本代表だが、河村に負けず劣らず20歳前後の才能溢れる選手が多い。
残念ながら今シーズンのBリーグではプレーを見られないが、横浜ビー・コルセアーズのユースからオーストラリアのNBAグローバルアカデミー、ハワイ大学へとステップアップしている熊谷ジェイコブス晶(19歳)、今年3月に福岡大学附属大濠高校を中退してオーストラリアのNBAグローバルアカデミー入りした川島悠翔(18歳)といった注目の10代の選手が続々と登場。川島は杭州アジア大会の代表メンバーに選ばれ、主力としてプレーしている。
ワールドカップの日本代表の躍進、そして22歳の河村勇輝の活躍は、確実に同世代、下の世代の選手たちに刺激を与えた。そういった選手たちと、河村の所属する横浜ビー・コルセアーズとの対戦は、今シーズンのBリーグにおいて観戦を楽しむ要素にもなるはずだ。
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