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川田将雅騎手が現在リーディングトップ 成績向上のきっかけはイギリス遠征

2019 9/3 17:00三木俊幸
川田将雅騎手ⒸSPAIA(撮影:三木俊幸)
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ⒸSPAIA(撮影:三木俊幸)

サマージョッキーシリーズ、WASJで優勝

この夏は小倉記念、札幌記念、キーンランドCと重賞3勝を挙げるなど、39ポイントを獲得し、見事にサマージョッキーシリーズの王者となった川田将雅騎手。

夏競馬が終わった9月1日終了時点で107勝を挙げ、2位のクリストフ・ルメール騎手に9勝差でリーディングトップを快走している。

イギリスで行われた世界のトップジョッキーによるチーム対抗戦「シャーガーカップ」には、世界選抜チームの主将として出場し優勝に貢献。加えて、8月24日(土)と25日(日)に札幌競馬場で行われたワールドオールスタージョッキーズ(WASJ)でも初優勝を飾り、その勢いはとどまるところを知らない。

川田騎手の今年の成績ⒸSPAIA

※表は9月1日終了時点ⒸSPAIA

MVJとは、JRA・地方・海外の指定レースを合わせた成績を勝率、勝利度数、獲得賞金、年間騎乗回数の項目ごとに順位を付け、その得点の総合点により騎手に贈られる賞である。

川田騎手はこの部門ごとの成績で勝利度数トップ。また勝率も、2ヶ月の短期免許で来日し、旋風を巻き起こしたダミアン・レーン騎手の驚異的な数字.301には及ばないものの、JRA所属騎手としてはトップ。MVJの勝率部門は騎乗数250回以上と定められており、レーン騎手は今年、再来日する予定がなく、騎乗数250回には届かないため実質1位と言っていいだろう。さらに獲得賞金も22.3億と最も多い。

ただし騎乗回数はランク外。しかし、少ない騎乗数で成績を残せているのだから、2019年MVJ(最優秀騎手賞)の最有力候補と言っても過言ではない。

イギリス遠征で2つの技術を習得

技術向上の意識が高い川田騎手は2018年夏にイギリスで2ヵ月長期遠征を行っており、この経験により成績にも違いが出ている。

脚質別成績(18年1月5日〜7月8日)イギリス遠征前ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

上記は遠征前のデータである。取った期間が異なるため、遠征前後で勝ち星の違いはあるが、遠征前から先行馬で49勝を挙げており、勝率28.2%、連対率51.1%、複勝率60.9%と好成績。

さらに、回数こそ少ないものの6勝を挙げた逃げ脚質では、勝率28.6%、連対率42.9%、複勝率57.1%と、こちらも好成績。その一方で、差し馬では2着、3着と取りこぼしも多く、勝率は7.0%にとどまっていた。

脚質別成績(18年9月8日〜19年9月1日)イギリス遠征後ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

上記は遠征後の成績だが、変わらず先行馬の騎乗数が最も多く、勝利数も81。勝率、連対率、複勝率ともに遠征前とほぼ変わらないが、「逃げ」と「差し」には成績の変化が見られた。

逃げ馬では54回騎乗して20勝、勝率は37.0%、連対率61.1%。複勝率は驚異の77.8%と、すばらしい成績。これは、「逃げ・先行させながらも足をためる」というヨーロッパの騎手が得意とする騎乗スタイルの習得が、結果に表れたと考えられる。

さらに、遠征前に比べて大きな変化が「差し」の勝率だ。わずか7.0%しかなかったが、倍の14.1%にまで増えている。これこそ、ヨーロッパで学んできたもう一つの技術であり、成績が大きく向上した要因だろう。

事実、札幌記念で勝利したブラストワンピースに騎乗した際は、内枠を生かしてじっと足をためる競馬をし、直線では馬群を縫って突き抜けるレースをみせた。川田騎手は、まさに外国人騎手が得意とする騎乗パターンで勝利を手にしたのだ。

2ヵ月という短い海外遠征期間であっても、何かを吸収できると証明してくれた。トップジョッキーが長期で海外遠征をするのは簡単なことではないが、毎年フランスに渡ることで地位を確立し、現地の騎手からも尊敬される存在となった武豊のように、川田騎手にも次代の日本競馬を背負う存在となり、日本を代表する騎手としてヨーロッパで活躍してもらいたいと願う。

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