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阪神・梅野が達成した地味に凄い日本新記録「120補殺」の価値

2019 10/3 06:00カワサキマサシ
最多補殺の日本記録を更新した梅野ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

土井垣武のシーズン記録を65年ぶり更新

阪神の梅野隆太郎が9月24日の巨人戦で、捕手新記録のシーズン120補殺を達成した。1954年に土井垣武(東映)が記録した119補殺を、65年ぶりに更新。土井垣はプロ野球黎明期の1940年に大阪タイガースに入団し、藤村富美男らとダイナマイト打線の一角を形成した強打の捕手で、梅野にとっては大先輩にあたる。

野球では守備側の選手が「送球を捕る」「走者にタッチする」「フライを捕る」などで打者、走者をアウトにすると刺殺が記録される。補殺は、その送球を投げた選手に記録されるもの。「補う」の文字に表されているように、アシストとも呼ばれる。ちなみに「捕殺」は誤記である。

捕手に補殺が記録される主なケースには、以下があげられる。
①盗塁を試みた走者をアウトにする
②ゴロを処理してアウトにする
③第3ストライクを捕球できず、一塁に送球してアウトにする

この3つの要素から捕手としての梅野の今と、あるべき未来を見ていこう。

盗塁阻止率はセ・リーグ2位

今季の梅野の盗塁阻止率は、セ・リーグ2位の.370。トップの小林誠司(巨人)の.419と比べるとやや差があるが、一般的に3~4割あれば良いとされるので充分に合格点だ。

ほかに両リーグで.350を上回るのは若月健矢(.371/オリックス)のみで、計3人しかいない。逆に3割を下回る捕手は、セ・パ合わせて4人いる。

梅野の二塁送球はその強肩ぶりから、「梅ちゃんバズーカ」の愛称が付けられた。肩の強さはもちろん、二塁送球タイムは1.8秒台の速さで、なおかつ送球はベースカバーに入った野手のグラブに吸い込まれるように入っていくコントロールの良さがある。これらが総じて高いレベルにあることが、盗塁阻止率.350越えの数字につながっている。

ちなみに盗塁阻止率5割以上は過去に11人が記録し、その中で古田敦也(元ヤクルト)が1993年にマークした.644が日本記録。パ・リーグ記録は1979年、梨田昌孝の.536。これらは別格の数字だが、今後の梅野は2017年に記録した自己最高の.379よりさらに上の段階の、.400越えを目指していくべきだろう。

守備意識は高いが、5失策はリーグワースト

梅野はフィールディングにも一定の評価があり、今季の守備率はセ・リーグ4位の.9953。守備率は守備機会に対して、エラーをする確率の低さを示すもの。守備機会が少ない捕手は守備率が高く表れ、.990以上が望ましいとされるが、梅野はその数字をクリアしている。

とはいっても、規定試合数(捕手はチームの試合数×1/2)を満たした両リーグ合わせて11人のうち、.990を下回るのは清水優心(.987/日本ハム)のみ。数字上は大差がないように見えるが、梅野のフィールディングで評価したいのはバント処理への意識だ。

今季も守備に不安があるドリスの前にバントの打球が転がると、ドリスを制して自らがいち早くボールをつかんで送球し、アウトをとる場面があった。仲間を助ける意識とともに、捕手も野手のひとりであるという守備への心構えが見て取れる。

今後の課題はひとつでもエラーを少なくすること。今季の守備率は及第点を上回っているが、5失策はリーグ最多。両リーグ合わせても4番目の多さだ。

守備率1.000を記録した選手は過去に、伊東勤(元西武)をはじめ17人が存在する。なんといっても、捕手は守りの要。梅野には2018年の高谷裕亮(ソフトバンク)以来の守備率1.000を期待する。

鉄壁のブロッキングで投手陣から絶大な信頼

梅野の守備面で最も評価すべきは、投球を後ろに逸らさないブロッキング技術。2014年には規定試合数をクリアした捕手で唯一、捕逸ゼロを達成した。セ・リーグでシーズンを通じて捕逸ゼロだったのは、1979年の水沼四郎(広島)以来、35年ぶりだった。

梅野が記録した今季の補殺のなかには、「2ストライクからの落ちる変化球を打者が空振り」→「ワンバウンドした投球を梅野が止めて一塁に送球」のパターンのものが多くある。盗塁刺、打球処理だけでは補殺数はなかなか伸びないので、ブロッキング技術はシーズン補殺数の新記録達成に至った大きな要因のひとつだ。

ワンバウンドを確実に止めてくれる信頼感があるからこそ、投手は思い切った攻めができる。さらに、梅野は身体で止めるだけではなく、自分の右側に逸れた球を逆シングルでキャッチする捕球技術の高さも持ち合わせる。

リーグNo.1のチーム防御率3.46を記録する上で、果たしている貢献度は小さくない。現在でも高レベルにあるブロッキングにさらなる磨きをかけ、常に捕逸ゼロを目指してほしい。

虎の背番号44は球史に名を残す捕手になれるか

古田が日本最高の盗塁阻止率を記録した1993年の補殺数は65、同じく梨田の1979年は68。最近は「甲斐キャノン」がそうであるように、いつの時代も捕手は強肩に注目が集まりがちだ。

しかし、補殺数を総合的な捕手力の評価と考えるなら、昨季も104補殺を記録し、今季はついに日本記録を作った梅野は歴代の名捕手と比肩しうる存在に近づいたといえるのではないか。

2013年のドラフト4位で阪神に入団した、プロ入り6年目の28歳。レギュラーに定着したのは2017年で、虎の正妻としては今季が3年目と実績はまだ少ない。

元々、評価の高かった打撃面でも今季は打率.266、9本塁打、59打点、14盗塁とキャリアハイを更新した。今後も安定した成績を残し続ければ、梅野隆太郎は球史に名を残す捕手になれるはずだ。

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