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初の本塁打王へ!巨人・岡本和真が松井秀喜をも上回る指標とは

2020 10/11 11:00林龍也
読売ジャイアンツの岡本和真ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

熾烈な本塁打王争いを繰り広げる巨人・岡本和真と阪神・大山悠輔

今シーズンのセ・リーグでは、巨人の岡本和真、阪神の大山悠輔の2人が本塁打王争いを繰り広げている。ともに右打ちの内野手で、若き四番としてチームを引っ張るスラッガーのタイトル争いに、ファンも多いに盛り上がっていることだろう。

開幕からコンスタントに本数を積み重ねている岡本に対し、大山は9月に9本放ち一気にペースアップ。10月も既に2本を放ち、24本で一時岡本に並んだ。もし大山がタイトルを獲得すれば、球団では1986年のバース以来34年ぶり、日本人に限れば1984年の掛布雅之以来36年ぶりとなる。一方、岡本は2010年のラミレス以来10年ぶり、日本人なら2002年の松井秀喜以来18年ぶりの本塁打王となる。

その松井が自身初の本塁打王に輝いたのは6年目の1998年で、24歳を迎えるシーズンだった。そして、岡本も現在6年目の24歳。もし実現すれば、巨人の新旧四番が同じ年齢で自身初タイトルを獲得することになるのだ。また後述するが、岡本は球団史上初の偉業にも挑んでいる。

松井秀喜をも上回る岡本和真の本塁打率

6年目の24歳ということだけでなく、名門高校で甲子園に出場し、高卒ドラフト1位で巨人入りした生え抜きの四番という共通点がある岡本と松井。では両者の初タイトルまでの歩みはどうだったのだろうか。ここでは主要打撃成績(打率、打点、本塁打)に加え、長打率、出塁率、本塁打率(HR率)、K%、BB%から両者の成績を考察していきたい。

松井秀喜と岡本和真の成績比較ⒸSPAIA


まず、両者の5年目までの通算成績を見ていこう。岡本が321試合で65本、200打点、打率.281なのに対し、松井は583試合で128本、375打点、打率.291と圧倒的に上回っている。

岡本は1年目に初本塁打を記録しながらも3年目までは一軍定着できなかったが、4年目に開花し33本塁打を放った。それに対し、松井は1年目から11本塁打を記録。30本塁打を記録したのは岡本と同じ4年目だが、松井は2年目から規定打席に到達していた。そのため、全ての項目において松井が上回っており、質・量ともにその凄さを物語るものとなっている。

しかし6年目の成績に目を移すと、岡本の成績に変化が見える。打率、出塁率、BB%に大きな変化は見られないが、長打率、本塁打率、K%において5年目までよりも大きく数字を伸ばしているのだ。シーズン途中ではあるが、長打率は7分も上昇、本塁打率は4.1、K%は5%近く改善し、6年目の松井の成績をも上回っている。

打率はほぼ変わっていないことから、安打の内容が変わり、長打が増えていることがわかる。長打が増えているのにK%は減っているということは、打撃の確実性が増し、とらえる確率が向上しているということだ。それが今季のタイトル争いへとつながっているのだろう。

また、岡本の今シーズンのヒートマップを見ると、安打は真ん中から外角の球をとらえていることが多く、空振りは低めのボール球が多い。ゾーン別データを見ても、外角低めに対しては打率.159(69打数11安打)と苦手にしている。この辺りの見極めや、ファウルで逃げる技術が向上すれば、いよいよ手が付けられない打者へと成長を遂げるかもしれない。

10月6日のDeNA戦では、左腕の坂本裕哉が1ボール2ストライクから投じた外角低めのボールゾーンに逃げるチェンジアップに対し、バットのヘッドを返さずにうまくライト方向へと流して先制打とした。こういった打撃を完全にモノにしたとき、松井を超える四番打者へと進化するだろう。

岡本が挑む球団生え抜き初の偉業

冒頭でふれた通り、岡本はある偉業に挑んでいる。それは、球団生え抜き初の「高卒右打者による本塁打王」だ。球界の盟主・巨人では、1937年春の中島治康にはじまり2010年のラミレスまで、8人・28回の本塁打王が誕生している。最多は王貞治の15回で、松井は2位の3回をマークした。

岡本が本塁打王を獲得すれば、9人・29回目の本塁打王が誕生するわけだが、意外にも過去の8人の中に上記の条件を満たす選手はいなかった。高卒なら川上哲治、王貞治、松井秀喜がいるが、いずれも左打者だ。右打者の中島治康、青田昇、長嶋茂雄は高卒生え抜きではない(青田は旧制瀧川中出身だが、タイトル獲得前に2年間阪急でプレイしている)。

優勝を目前に控えた巨人では、岡本といえども状況によってチームバッティングに徹する必要もあるだろう。他球団も、優勝チームに一矢報いるという気持ちで向かってくることは想像に難くない。一方、逆転優勝がかなり厳しい状況の阪神では、大山はある程度自由にバッティングができるだろう。

岡本が自身初のタイトルを獲得するのは決して簡単なことではないが、それが実現すれば、長いプロ野球の歴史にその名を刻むこととなる。いつの日か、メジャーリーグでも活躍した松井を超える日が来るのかもしれない。

※成績は2020年10月8日終了時点

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