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「進化」か「伝統」か ケニー・オメガ対棚橋弘至「イデオロギー闘争」

2019 1/2 07:00SPAIA編集部
リング,Shutterstock.com
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今年のテーマは「イデオロギー闘争」

東京ドームで行われる新日本プロレス最大のイベント「WRESTLE KINGDOM」が今年も1月4日に開催される。その興行を締めくくるのは王者ケニー・オメガ対棚橋弘至によるIWGPヘビー級選手権試合だ。

昨年、この舞台に立った内藤哲也が15歳の時に立てた目標は「新日本プロレスのレスラーになること。20代のうちにIWGPヘビー級のベルトを巻くこと。東京ドームのメインで試合をすること」と言っていたように東京ドームのメインはプロレスラーの目標とされる大舞台である。

今年、この舞台で繰り広げられるテーマは、「イデオロギー闘争」。イデオロギーについて辞書を引くと「人間の行動を左右する根本的な物の考え方の体系」と書かれている。つまりこの対戦は二人のプロレスに対する考え方のぶつかり合いとなる。実はこの二人、8月に行われた『G1 CLIMAX 28』で棚橋が優勝し、東京ドームのメインイベントへの挑戦権を獲得して以来、互いにプロレス観を否定し合っているのだ。

昨年は内藤がこの舞台で15歳の時の夢をかなえ、次なる目標に向うきっかけとなった。今年はお互いのプロレス感を主張し合う熾烈な争いとなりそうだ。

「進化」か?「伝統」か?

二人のプロレススタイルは全く違う。

王者ケニー・オメガは「カナダの路上王」といわれている。カナダでは幼少期に路上や校庭でプロレスをし、日本でも商店街やショッピングモールなどでもプロレスを行う「DDTプロレス」という団体に所属。リング以外でもプロレスを行っていた。リング外で行うだけに武器は使うし、時には危険な技を繰り広げることだってある。見ていて痛々しく、相手を完膚無きまで叩きのめすのが彼のプロレスだ。

そのプロレスに「品がない」といったのが棚橋弘至。1998年に大学を卒業し、すぐに新日プロレスに入門。プロレスが総合格闘技やK-1に押され、人気が低迷した苦しい時代にもプロレス界をけん引してきた。ケニーがいろいろな団体を渡ってきたのに対し、棚橋は新日一筋。新日のレジェンド、武藤の付き人を経験し、使う技には新日の旗揚げ時のメンバーである藤波辰爾の「ドラゴン殺法」を取り入れている。いわば新日のよき伝統やクラシックスタイルを持ったプロレスラーである。

このプロレスに対してケニーは「進化がない、棚橋は取り残されたレスラーだ」と発言。これに対して棚橋は「全部がいい方向に進化していない。いい変化もあれば、そうでない変化もある。変わることも大事だが、プロレスの本質はこれだけ長く続いているのだから今も昔も変わらない」と主張し、熱い論争を繰り広げている。

新日の最も権威のあるIWGPヘビー級のベルトを巻くということは、発言にも重みが出る。これを巻くことによって、自分のイデオロギー=新日本プロレスのイデオロギーといっても過言ではない。平成最後の東京ドームで新日本プロレスは「進化」へと向かうのか、それとも「伝統を守る」方向に向かうのか。1月4日にその答えが出ることとなる。